Review-#029 『2020年冬アニメを観たので感想を書く』(上)
お久しぶりです
ということで、いつもの奴です。いつものと言っておきながら9か月ぶりなんですけどね。まぁ…「よもやま」もなんやかんやで3年目ですし。何としても形にしておきたいねというのはありました。
しかしこの現状、色んなものに影響が出てしまって大変です。春期も1ヶ月過ぎて観るものが固まってきたかな、と思いきや放送延期が決定して見事におあずけを喰らった形になったものも次々と出てきて。今続きが観ることができている作品も、これからという時に一時停止が掛かるか分からないですからね。完パケしたと分かっている作品もあることがせめてもの救いです。
心配なところではありますが、ここでは先月まで放送されていた冬アニメの中から幾つかレビュー(という名の雑談)形式で紹介します。上下篇でそれぞれ4作品ずつ、計8作品取り上げますが、そのうちの1作品は2019年夏アニメの作品。やろうやろう思いながらも、結局夏と秋はそこまで観ていなかったんだよな…。草稿は残っていたので、折角の機会に一緒に載せちゃいますね。
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<このページのお品書き>
① ID:INVADED イド・インヴェイデッド
② 虚構推理
③ 群れなせ! シートン学園
④ ドロヘドロ
NEXT》
(『ダンベル何キロ持てる?』(おまけ枠)
『恋する小惑星』
『22/7(ナナブンノニジュウニ)』
『推しが武道館いってくれたら死ぬ』)
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ID:INVADED イド・インヴェイデッド
(2020年1月-3月)
アニメーション制作:NAZ
監督:あおきえい
シリーズ構成・脚本:舞城王太郎
<TVアニメプロモーション映像>
<☟コミカライズ版もありますよー>
ID:INVADED イド:インヴェイデッド #BRAKE -BROKEN
(ヤングエース連載・2019年11月~)
原作:舞城王太郎, The Detectives United
作画:小玉有起
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こんな死に覚えゲーみたいな推理アドベンチャーは嫌だ
あおきえい監督なのに、タイトルにゼロって付いてない! というのは置いといて、ミステリ作家の舞城王太郎氏とコンビを組んだオリジナルミステリー作品です。
舞城王太郎か…『龍の歯医者』は個人的にはしっくりこなかった(特に後篇の方が)けれど、これはどうだろう。と観てみたら、あら面白かった。
全篇に渡って、SFチックなサスペンスが繰り広げられます。お話のルールとしては、殺人犯の殺意衝動から形成される異世界"イド"の中に名探偵が潜り込むことで、犯人特定の手がかりを掴むというもの。
最初は起こっていることに面を喰らって何が何だか、と困惑するかもしれませんが、観続けていればそれとなく飲み込める…と思います。後半からは事件の黒幕により迫っていく物語が展開されます。
謎から生み出される話と絵は、どちらもスリルがあって刺激的。無茶苦茶な異世界での名探偵達の冒険は、観ていても退屈しないしすっかりと見入る。『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない(いもいも)』を手掛けたあのNAZって大丈夫なのか、ってのは余計な心配でしたね。アレが酷過ぎただけなのもあるけど。
…と、ここまで書いておいてなんですが。この作品のこと、分かったようで分かってないかもしれない。半分ぐらいは「分かった気になってる」だけなんかもしれない。明かされていない謎も多いしね(私としては明かされないまま終わること自体はあまり気にしないのだけれど)。
でも、観ていて楽しかったから些末な問題なのかも。
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虚構推理
(2020年1月-3月)
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
監督:後藤圭二
シリーズ構成:高木登
<TVアニメプロモーション映像>
<☟原作はシリーズになっているけど、アニメ本編のメインはこちら>
虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス刊行・2011年5月11日)
作:城平京
<☟ただいまコミカライズ版も連載中です>
虚構推理 (少年マガジンR連載・2015年4月20日~)
作画:片瀬茶柴
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お待たせしました すごい奴(第12回本格ミステリ大賞)
「探偵の推理は完全と言えるのか」という、いわゆる後期クイーン的問題を意識したミステリー『虚構推理』のアニメ化なのですが、ふむ。ミステリーっつーか会話劇とした方がジャンルとしては適当では? なんか思ってたのと違った。
お話の造り方に納得はできます。「推理が完全でなくとも、納得できるものであれば良いのではないか」と。先述の問題の答えとして『虚構推理』はそういう手法を採ったのだと。目の付け所自体は興味深いですが…でもそれを面白いと感じられるか? という所が最大の賛否の分かれ目であると思うのです。
普通、ミステリーは解決するところにカタルシスを感じるもの…だと思っているけれど、『虚構推理』の場合不完全燃焼で終わってしまう。そもそも解決までが長い。無理くりな推理のあれこれも長い。スローペースでちょっとダレる。全体の半分以上『鋼人七瀬』の事件であーだこーだやってるので、むべなるかなって感じ。んで、解決パートで「成程考えたな」と感心はするけど…盛り上がるかとなると話は別。
なので「あ、今回はここで終わりか」「あ、話が進んでた」という味気ない感想に。流し見だとホントに訳が分からなくなるという意味では、頭を使うアニメとしていいのかもしれないけど。短編か中編を組み合わせた方が観やすかったのでは。
結論としては、本作の会話劇とおひいさまに魅力を感じられると楽しめるかも。私自身、それ目当てで観ていた気がする…が、それってミステリーなんだろうか。悩んだけど、判定はMEDIOCRE。
制作側もいかにして見どころを作るか苦心している感がむんむんで、やっぱりアニメ化には全然向いていないんじゃ、とも思ってしまった作品です。スタイルにハマれば面白く観られるだろうが、そうでなければ厳しいかと。何だってそういうものですが。
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群れなせ! シートン学園
(2020年1月-3月)
アニメーション制作:Studio五組
監督:博史池畠
シリーズ構成:村越繁
<TVアニメプロモーション映像>
<☟大人の事情もあって紙媒体で揃えるのは難しいみたい?>
群れなせ!シートン学園-Animal Academy-
(サイコミ連載・2016年5月8日~)
作:山下文吾
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※ペロペロはしますがウコチャヌプコロはしません
何というか、B級として発射してB級として着弾したような、最初から最後まで貫き通したおバカアニメでしたね。私は好きですよ、こういうの。
この世界は一体どうなっているんだ、ヒトが余りにも少ないとか深刻じゃね? とか、そういう細かいことは気にしなくていいんです。頭空っぽにして楽しみましょう。
最近増えている動物アニメですが、ちゃんと豆知識要素がストーリーやキャラクターに盛り込まれているので、少しずつ動物の生態や能力を学ぶことができます。キャラクターの中にあの動物がいるけど…どんなネタかはよく知られているよな。言わずもがな、観る時間帯はよく考えましょうね!
お話そのものも、サクサクとテンポよく進んでイイ感じ。アニメ向けに再構成しているようだけど、うまくまとまっていると思います。主人公、間様ジン(まざま ―)の造形に賛否分かれそうではありますが、彼には彼なりの良さがあるのです。
「ジンデレ」だぞ、そんじょそこらのツンデレとは違うのだよ。
あと何か、声優動物園みたいになってたね。演技が(色んな意味で)凄いお方が大集合、その真価が問われる次回予告は「日本語でおk」状態。そして毎週毎週何かしらの役で登場するツダケンさん。アニメでもドラマでも、ホント最近引っ張りだこですな。
作画に関しては沢山のキャラを動かしていることもあって全体的にチープな印象を受けるけど、逆にこれといって崩れは感じなかったかな。視聴者サービスの部分はしっかりと描き込んでいて拘りを感じます。
判定はGOOD。人間社会の喧騒に疲れを覚えたら、自由奔放で楽しく、そして優しい動物たちの学園生活を覗くのもアリかもしれませんね。
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ドロヘドロ
(2020年1月-3月)
アニメーション制作:MAPPA
監督・絵コンテ:林祐一郎
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
<TVアニメプロモーション映像>
<☟おいでませ混沌の源へ>
ドロヘドロ (スピリッツ増刊IKKI/月刊IKKI/ヒバナ/ゲッサン掲載・
2000年11月30日~2018年9月12日)
作:林田球
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味の素か餃子の王将あたりで大葉ギョーザの冷食出しませんか?
原作未読の状態で視聴を始めましたが…んまー、ショートレビューじゃ紹介しきれない凄くカオスな世界観。成程、映像化困難と謳われていたのはこういうことだったのか。1話の中であれやこれやと詰め込まれていて毎回毎回大騒ぎ状態。
キャラの軽妙な掛け合いもあって、おかげで最初から最後まで全然飽きません。ホント、こんなにもセンスオブワンダーを感じられる作品なんてそうそうあったもんじゃないですよ。登場人物は見た目も中身も濃いもん揃いですが、特に煙ファミリーがキャラが立っていて面白いね。
そしていちいち食事シーンでお腹が空く。大葉ギョーザ美味そう。
流石に3Dと2Dの見分けは付くけど、それでも丁寧に作られているので映像面で言えば冬期観ていた作品の中ではトップクラスの出来。アクションも良い感じでMAPPAの本気が伺えるというもの。
そして全篇通してグチョグチョな気色悪さでお食事時に観ようもんなら恐らく箸が止まる。空腹を誘う食事シーンが完全な罠化してますがな。個人の感想としては、本作は振り切っているから一周回ってグロくない…という意味で全然問題なかったのですが、観る時間帯はよく考えた方がいいんだろうなぁ。一般的には。食べたギョーザをリバっても知らんぞ、私は。でもここまでやってこその本作である、と思います。
1クール分なので、最終回っぽいエピソードで締めくくりはしましたが、全体としてはブツ切りで終わりましたね。とりあえず1クールやって、2期3期で続きをやる、という方針の様なので原作は完結していますがアニメとしてはまだ…………混沌の中。
ですが12話楽しませてもらったのでそれでも満足度は高いです。作風上人を選ぶ要素モリモリではあるけれど、お話もアニメも見応えがあってすっごく楽しめました。2期以降があるなら、是非とも続きを観たい作品。とにかく一見の価値アリ、それが………『ドロヘドロ』!
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下篇に続きます。2分割構成も久しぶりですね。ホントはもうちょっと長くなるかなぁ、と想定していたのに結局7(+1)作品に落ち着きました。視聴する気力が上がったり下がったりの繰り返し、一旦途切れちゃうとそのまんま、なんてこともここしばらくはあったりして…。まぁ、この数だけでもある意味奇跡かなのかも。私の中では。
©IDDU/ID:INVADED Society
©城平京・片瀬茶柴・講談社/虚構推理製作委員会
© 山下文吾・Cygames/アニメ「群れなせ!シートン学園」製作委員会
©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会