Review-#033 『2020年春アニメを観たので感想を書く』(中)
続きです。そうそう、今回からnoteのレイアウト変更に合わせてマガジンのヘッダ画像が変わりました。細長くなっちゃったから今後右側の更新欄の書き方を考える必要があるなぁ。こういう使い方をしている人ってどのぐらいいるんだろうか。それはともかく、中編でも3作品紹介していきます。
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<このページのお品書き>
④ かくしごと
⑤ 球詠
⑥ 波よ聞いてくれ
《PREV
(『かぐや様は告らせたい? ~天才たちの恋愛頭脳戦~』
『イエスタデイをうたって』
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』)
NEXT》
(『グレイプニル』
『啄木鳥探偵處』
『プリンセスコネクト! Re:Dive』)
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かくしごと
(2020年4月-6月)
<TVアニメプロモーション映像>
原作:久米田康治
アニメーション制作:亜細亜堂
監督:村野佑太
シリーズ構成:あおしまたかし
<☟アニメと同タイミングで完結! 父と娘の物語はこちらから>
かくしごと (月刊少年マガジン掲載・2015年12月4日~2020年7月6日)
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匿していた想い出はモノクローム
『かってに改蔵』、『さよなら絶望先生』で知られる久米田康治氏の最新作。娘に隠していた父の正体、それは漫画家。あぁ成程、隠し事は描く仕事だったんですね。やかましわ、お疲れ様でした。
…いやちょっと待ちましょう、第1話冒頭の1分42秒でこの作品を終わらせるのは勿体ないですから。
下ネタギャグ漫画がヒットしたことに引け目を感じてるのか、娘の後藤姫(ごとう ひめ)には自身が漫画家であることをひた隠しにしている後藤可久士(ごとう かくし)。なんかオーバーな気もするんだけどなぁ、むしろ自分の親がヒット作を出しているだなんて誇らしいんじゃないかなぁとは思うんですけれどね。可愛い姫ちゃんを持つ親心としてはそういう気持ちにもなるんでしょうか。
漫画家を題材にしていることもあって、おそらく作者の久米田康治氏の体験談に基づくあるあるネタがたっぷり。元々ストーリーや作画、演出やらを考えて一つの作品に仕上げる漫画家って大変だよなって思っていましたが、職業柄それ以外でも苦労しているんですね。
すれ違いネタと合わさって繰り広げられる父と娘の日常。親バカだけど、それだけ娘との時間を大切に思う可久士と、年相応のあどけなさと時折見せる聡さを持つ姫。微笑ましいです。
だが十丸院五月(とまるいん さつき)、お前は輪転機に巻き込まれて逝ってよし。何か春期の花江夏樹氏はヘイトが溜まる役が多かったような。
そんな本作、しかし各エピソードで挟まれる不穏な空気。不器用でも幸せだった時は過ぎて7年後の現在、セーラー服を纏った姫の傍に可久士は居ないようです。回を重ねる毎にシリアスさが増していく『かくしごと』で隠されていた出来事とは。ネタバレになりますが、最終回は気持ちよく終わりますよ。内容はベタベタだけど、それもまた良し。
本作はいつものシャフトではなく亜細亜堂が製作していますが、(読んだ限りでは)原作のイメージを損なうことなくアニメーションに落とし込んでいます(ちなみに漫画1巻のアニメPVはシャフトが担当)。OしゃP(お洒落なOP)も良いですが、EDで『君は天然色』を使ってきたのがニクい。しかも大滝詠一氏の原曲。10GAUGEによる映像もとても好み。文化的すぎます!!
すっきりとした作品でした。久米田康治先生の次回作にご期待ください。
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球詠
(2020年4月-6月)
<TVアニメプロモーション映像>
原作:マウンテンプクイチ
アニメーション制作:studio A-CAT
監督:福島利規
シリーズ構成:待田堂子
<☟原作コミックはこちらから>
球詠 (まんがタイムきららフォワード連載・2016年4月23日~)
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「きゅーえい」じゃないよ「たまよみ」だよ
『きららフォワード』ということもあって、ほんわかだけじゃないストーリー重視の野球部の活動を描いています。ポンポーンと話が進んでいく所為かちょっと飲み込みづらい、踏み込みが足りないと思える箇所もそれなりにありましたが、そういった印象が強かった前半に対し、後半はキャラクターへの理解も深まって面白くなっていった印象です。野球は全く詳しくないけれど、それもあってか観ている側の緊張感もひとしお。
ただ、話が進むにつれてタイトルにもなってる武田詠深(たけだ よみ)と山崎球姫(やまざき たまき)のダブルヒロイン以上に川口芳乃(かわぐち よしの)が主人公ポジになってね? と思ったりはした。まぁそれも一つの魅力として捉えていただければ。
気になるのが映像面。「"萌え"すら捨てて野球を追求」は伊達じゃないけど、可愛さは残していいと思うんだがなぁ…。というのも、キャラがガタイの良い首から下と2000年代のギャルゲーみたいな妙に古臭さのある頭部の嵌合体(キメラ)になっていて、観ていて不安になるんですね。頭部はどうしても慣れなかった。
でも監督が『メジャー』の人ということもあって、野球シーンには力が入っています(禁断の3DCGも混じってるけど)。ガタイの良さも動いている時には躍動感が増してそれほど気になりません。そんな作画も中盤から安定してきた…ような、そうでもないような。流石に第8球(話)の入場行進シーンは卑怯すぎて吹くわ。体幹どうなってんだお前ら。
ストーリー以外の要素で話の腰を折られるのが嫌だったら、原作の方を勧めるかも…。それは気にならないから彼女たちの動いている姿を観たい! と言うのであれば選択のうち。要らぬケチが付いちゃった所為で、序盤で観るのを止めたかもしれませんね。
そんな方もトータルでの評判が気になるならば、風呂に入った後でいいので続きを観てみましょう。結果的に『ハチナイ』と似た傾向になった本作、注目の判定はアウトかセーフか? 私としてはこんな具合でよよいのよいとさせていただきます(?)。
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波よ聞いてくれ
(2020年4月-6月)
原作:沙村広明
アニメーション制作:サンライズ
監督:南川達馬
シリーズ構成:米村正二
<☟春期は『無限の住人-IMMORTAL-』もやってましたね>
波よ聞いてくれ (月刊アフタヌーン連載・2014年7月25日~)
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主演の杉山女史の1話あたりのギャラが気になる
しっかしまー、主人公の鼓田ミナレ(こだ ―)。頭の回る凄い人ではあるけど、えらいクズですわなぁ…。人生チュッパチャップスの女。ラジオを題材にしたお仕事作品ではありますが、どっちかというとミナレの人生劇場の要素が強いのでこの主人公に好感を持てるか、拒否反応を示すことになるか。そこで作品に対する評価も変わってきそうです。ウィットに富んでいて楽しいと思う反面、鬱陶しさも感じたので…。
ひとつ言えるとするなら、本作は間違いなく大人向けであること。言うまでもないか。
ミナレを演じる杉山里穂女史のマシンガントークにはビックリ。でもあまりラジオっぽくはないんですよね。それが(ラジオ企画の)狙いではあるんだろうし、ヘビーリスナーではないから偉そうには言えないけれども、トークのテンポや間から作られるラジオの空気とはなんか違う。
そこはまだ経験が足りないってのもあるだろうから置いといて、先述したことに繋がるのだけれど全体を通して「ラジオよりリアルの方が面白い」と感じてしまったのは、本作の場合プラスかマイナスか。架空のシチュエイションを設定するというやり方がミナレとマッチしていないように思うのです。
事実は小説より奇なりとは言い得て妙、いやフィクションなんだけどねコレは。人間関係の描写はホントに面白いだけに複雑な気持ちです。第1話がしっくり来なかった人も、よければ第2話を観てほしい。次なるハードルはミナレとの波長だけれど、引っ掛からなければ続きが気になる作品に変わるんじゃないかと。
正直なハナシ、今回取り上げた中で一番判定に悩んだ作品です。『イエスタデイ』にも言えることだとは思うけど、実写ドラマ向けっぽい内容なんだよなぁ。一方でアニメを通じて興味が沸いたのも事実でして。原作はどんな感じなんでしょうか。
制作は老舗のサンライズ。全体通して丁寧な作りでしたが、『わたてん』の半目の呪いを喰らわなかった私も眼の円い影は流石に気になったかな。私からは以上、後はー……琴欧州のブログを読んでください。
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次の下編で春アニメの紹介もおしまい。春は「安定」のイメージがありましたが、夏はどんな風になりそうかなぁ。
©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会
©マウンテンプクイチ・芳文社/新越谷高校女子野球部
©沙村広明・講談社/藻岩山ラジオ編成局