Review-#011 『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』

さすが梓川、ブタ野郎だね


 毎日更新(予定)の「アニメを観たので感想を書く」コーナー2発目がこの『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』。
 長い、そしてなんかいかがわしい。まぁラノベですからね、今やこのぐらいのタイトルなんて割と普通なんでしょう。インパクトはあるし。

 ライトノベルねぇ。私の場合あんまり読むジャンルでも、アニメとして観るジャンルでもありません。『涼宮ハルヒの憂鬱』も精々アニメで観たぐらいだったか。あ、でも『しにがみのバラッド。』は読んだ記憶があります。大分前の出来事なので、内容は忘れてしまったのだけれど。

 この『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』は『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』というアニメ作品の中の1つの物語であり、アニメではこの『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(しつこい)以外のエピソードもある…というオムニバス形式をとっています。
 いいですね、このラノベ感。字面のインパクトでとりあえず1話視聴を決めたクチではありますが、SFを交えつつ展開される学園ラブコメは素直に面白いと思いました。言葉の響きだけで判断しちゃいけないね!

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<今回紹介する2018年秋アニメ一覧>
SSSS.GRIDMAN
青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない ←いまここ
やがて君になる
となりの吸血鬼さん
うちのメイドがウザすぎる!
抱かれたい男1位に脅されています。
宇宙戦艦ティラミスⅡ
ゾンビランドサガ

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青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない (2018年10月-12月)

アニメーション制作:CloverWorks
監督:増田壮一
シリーズ構成・脚本:横谷昌宏

<TVアニメプロモーション映像>

<☟原作ライトノベルもどうぞ>
青春ブタ野郎シリーズ (電撃文庫[既刊9巻]・2014年4月~)

著者:鴨志田一
イラスト:溝口ケージ

<☟コミカライズ版もあるでよ>
青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない (電撃G'sコミック掲載[全2巻])

作画:七宮つぐ実
(現在、電撃G'sコミックにて『青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない』が連載中です!)

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【作品紹介】君のせいで私…

 さて、この『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』ていうか毎回毎回正式名称を使うのもアレなので以下『青ブタ』とします。とにかく字面にまず目が行きますが、このタイトルは何一つ間違っていないのです。

 第1話のあらすじ。

 5月3日、高校2年生の梓川咲太(あずさがわ さくた)はバニーガール姿で図書館をうろついている同じ高校の先輩・桜島麻衣(さくらじま まい)を見つける。
 これだけ奇抜な格好をしていても、どうやら桜島先輩の姿は咲太にしか視えていないらしい。この不可解な現象は思春期症候群と呼ばれるものであった。原因と解決策を見つけるために咲太は奔走するが…。

 こんな感じなんですが、青春ブタ野郎というのは主人公である梓川咲太のことです。で、どの辺がブタ野郎なのかと言うと、第1話だけでも

 ・桜島先輩に足を踏まれて「幸せです」と言う(真顔で)
 ・桜島先輩に胸の傷跡を触られて「すごく気持ちいいです」と言う

 …まー、変態野郎です。後者は単純にくすぐったかっただけなんかもしれんが。そしてラノベあるある「やれやれ系」主人公です。若干ウィットに富んだ感じのセリフ回しが彼の特徴というか。セクハラで訴えられそうな発言もチラホラと。ええ、この辺で難色を示す人もいるとは思います。ただちょっと待って、そこだけで判断するのは止めましょう。折角観に来たんですから。


 思春期症候群というオカルト的な要素が出てきましたが、これは症候群を抱える人物が持つ悩みというものに大きな関係があります。
 思春期症候群に一定の理解を示す咲太は、彼女が他人に視てもらえなくなった原因をなんとか突き止めようとします。学校では浮いている彼の協力者(一応)は2人。友達思いの国見佑真(くにみ ゆうま)と科学部唯一の部員・双葉理央(ふたば りお)。
 特に双葉からは、非科学的な思春期症候群については否定的な立場を取っているものの物理学にからめた考察を行っており、これが解決への糸口となっています。例えば桜島先輩の場合は「シュレディンガーの猫」。御用達ですね。

 そして、解決のために奔走する咲太は実はいい奴なのであることに気づかされます。こいつ、変態紳士と言う名のイケメンであるというだけなんです。
 普通ならあり得ない、不思議な現象に何故理解を示しているのかというのは色々と事情があるのですが、とにかく咲太は思春期症候群を抱える彼女に付き合い、彼女自身の想い、そして自分自身の想いに気づいた彼はそれまでの達観したような態度から一変させ、秘めていた熱さを爆発させます。

 具体的にはどんなだ、というと…えーと…とにかく熱いのです。青春しているのです。咲太演じる石川界人さんの熱演が光ります。全話通して、石川プロによる咲太の飄々とした態度と隠し切れない青臭さが印象的です。
 嫌ですね、こういう時に丁度いい語彙が浮かんでこないというのは。クライマックスのシーンについてネタバレするのもどうかと思うので、とりあえず「バニーガール先輩」の話が続く第3話まで観てみるといいでしょう。

 この作品はオムニバス形式で進んでいくので、桜島先輩の思春期症候群が解決した後も別の現象に咲太は巻き込まれていくことになります。そして患っているのはみんな女の子。ハーレム展開にはならないけどね。何故って、そりゃあ咲太くんが桜島先輩一筋だから。
 咲太は彼女たちの悩みをどうすれば晴らせるのか、とことんなまでに付き合います。真正面から受け止め、時に彼女たちにアドバイスをしていく彼は頼もしい存在にも映ります。だから本当に彼はイケメンなのです。同時にブタ野郎なのも変わんないんだけれど。
 自分の問題が解決した後も桜島先輩が登場し、(恋敵候補に成り得る)女の子の思春期症候群を解決するため、咲太に協力の手を差し伸べます。

 と言うのもありますが、やはり第4話以降は事件解決後に関係を深めたこの2人によるイチャイチャっぷりが大きなポイントになっていると思います。傍から見たらこいつら相当にバカップルやってます。関係性のバランスがとれているため、二人のやり取りにニヤニヤさせられるかも。話数を重ねるごとにどんどん関係が進展していきます。青春してるなぁ…。ヒロインはどれも魅力的で、しっかり掘り下げているので視聴者側としては候補が分かれそうですが、咲太はどんな時でも麻衣さん一筋。安心感がありますね。


 本作では原作でいう『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』から『青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない』までがアニメ化されています。
 もしかしたらそれぞれの題材に既視感を覚えるかもしれません。例えば第4話から始まる『青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない』は『涼宮ハルヒの憂鬱』の「エンドレスエイト」じゃねーか! みたいな。言っちゃいました。

 あまりラノベ界隈は詳しくないので、テンプレのようなストーリーになっているのかも分かりません。しかしたとえテンプレでも、むしろテンプレだからこそ、それを洗練させて楽しめる作品にすることの難しいことよ。
 本作は面白かった、というのが私の率直な感想です。起承転結があって、それぞれの心情も描かれていて、それでもって楽しい作品になっていると思います。ファンタジー要素があるとは言っても、本質的には等身大の女の子が抱える心の悩み。実際に起こっていることは非現実的でも、彼女たちの境遇に共感できる部分もあるのではないでしょうか。

 で、原作をアニメ化するにあたって結構カットされた部分もあったようですが、何にも知らない私が観た分だと違和感はそこまで感じられなかったかな。あるとするなら2話構成のエピソードは3話構成よりも描写が薄く感じたぐらい。原作5冊分を全13話でまとめた作品なのでそこは仕方ないかな。

 あとは一部キャラクターの謎が解明されていないということ。この辺は後述。尺は限られていたけれど、それでも限りある時間の中でできるだけ丁寧に描写がなされていたのでストーリーを追う分にはそれで十分だとも言えます。もっとキャラクターについて詳しく知りたい人は原作を読みましょう。

 アニメーション制作は『PERSONA5 the Animation』や、秋期では『抱かれたい男1位に脅されています。』も制作していたCloverWorks。『だかいち』、後程紹介しますよ。作画は最初から最後まで安定していましたね。分かりやすく崩れていたシーンは無かったかな。EDはエピソードごとに登場するヒロインがED主題歌『不可思議のカルテ』のボーカルと共に変わる力の入れようです。
 あと1話あたり25分。ちょっとだけ他のアニメより尺が長いです。なのでちょっとだけ得した気分?

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【総括】すこしふしぎな、等身大の青春

 評価はGREATです。安定、という言葉が似合うかな。

 それぞれのストーリーは「こんな風に終わるんだろうな」というのがそれなりに見えてはいるんだけれど、その過程で捻りが入っているから「そうきたか」と思わせられる感じ。それでもって原作から端折ってはいるんだろうけれど心理描写などがきっちりと組み込まれているため共感しやすく、そして楽しめる作品に仕上がっていると思います。
 あとはそうね、ラブコメパート。もう2人とも末永く爆発しちゃえばいいのに…と思ったんですけれど、

 今年劇場版やるようですね。アニメの話の続き。

 これ。『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』が2019年の初夏に劇場公開だそうです。画像をクリックすると公式ホームページに飛びます。
 原作の第6巻,第7巻『青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない』を映像化したものだとか。

 TVアニメ版でも登場した牧之原翔子の正体と、梓川咲太の抱える胸の傷(物理)についての真相が明かされます。「劇場版商法?」と変な風に見るかもしれませんが、もともとこのアニメが放送される前から決まっていたことなのでセーフ。
 結局彼女は、彼の過去は何だったのかというのが気になる方は劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。ただ、話としては重いらしいのでその辺は覚悟のうえで。


〈了〉

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project