Review-#034 『2020年春アニメを観たので感想を書く』(下)
これを書いている間に、「アメリカのAmazonで『はめふら』が販売停止した」という話を耳にしました。「ホントかよ?」と検索にかけてみたら、あ、ホントにKindle版使えなくなってる。
…と思ったら3巻と4巻は利用可能みたいで。そもそも現在も手に入れられる並製本の方は販売元にAmazonも入ってて、3巻以降は9月1日以降の発売とある。ただし同時に話題になってた『ノーゲーム・ノーライフ』に関してはマジで見当たらない。
どのあたりが問題なんでしょうね。全然想像つかないわけではありませんが、詳しくは知らないのでこれ以上の言及は控えます。春期の「観たので感想を書く」コーナーもこのページでおしまい、ということで残り3作品の紹介に移りましょう。
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<このページのお品書き>
⑦ グレイプニル
⑧ 啄木鳥探偵處
⑨ プリンセスコネクト! Re:Dive
《PREV
(『かくしごと』
『球詠』
『波よ聞いてくれ』)
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グレイプニル
(2020年4月-6月)
原作:武田すん
アニメーション制作:パインジャム
監督:米田和弘
シリーズ構成:猪爪慎一
<☟原作コミックはこちらから>
グレイプニル (ヤングマガジンサード連載・2015年10月6日~)
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着ぐるみを着るもの、身ぐるみを剥がしかねんもの
どういうわけか着ぐるみに変身できる気弱な主人公と、異能の事件に巻き込まれ真実を求めるヒロイン。そんな二人が合体(比喩ではない)して戦いを繰り広げるバトルラブコメ、それが『グレイプニル』なのです。マジで「あなたと合体したい…」案件だったんかい。あとどうでもいいんだけれど、何故か着ぐるみにDOB君味を感じた。
第1話はよく分からなかったけれど、第2話で「あぁ、これをやりたいわけね」とこの作品の方向性が理解できました。その分すんげー恥ずかしい光景を見てたわけですが。なので余裕があれば、そこまで観て考えるといいと思います。
「うん、載ってるよな青年漫画雑誌にこういうの一つや二つは」ってな具合で回りくどさのあるストーリーでしたが、この世界のシチュエイションは嫌いではない。てかシュール。その点、本作の高橋ナツコ女史はうまくハマってたと思います。誰にでも言えることだけど、やっぱ相性の問題なんだなと。
1クールだけだと「こんなことができます」だとか「こんなことがありました」という表層的な内容が中心になってしまっていて、今一つのめり込めなかったかな。 各々のキャラ付けも作中の描きたいシーンに引っ張られている感じ。特に青木江麗奈(あおき えれな)の変わり様が凄い。あなた初登場時と印象が180°変わってね? そもそもの話登場人物がキャパオーバーで、理解の手がかりとなる心情面の描写が削られているように見える。
趣向と嗜好を楽しむ視覚的要素の強い作品、といったところでしょうか。バトルシーンは多くこそなかったけれど、第2話のそれはなかなかに引き込まれるアクションが描かれていたし。
そして露骨にも程があるサービスカットも充実。何だよそのちょいちょい入るパンチラシーンは。なんでお前そんな恰好なんだよ。だいいち戦闘スタイルが意味深っていうか狙ってるだろ。ていうか普通立場逆だろ。そこが本作のイイ所なんだろうけど、バトルもエロも第2話がピークだったかなぁ…。まぁエロに関しては好みにも依るか。
このエキセントリックさは確実に人を選ぶものの、それ故に観てみたら想像以上に楽しめたっていう方もいるのではないでしょうか。しかし、そう考えてみるとガチャピンって凄いよね。山に水中に宇宙にと、何でもござれだもんなぁ。中の人もいないし。いないよ? 疑う人は食べちゃうぞ??
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啄木鳥探偵處
(2020年4月-6月)
原作:伊井圭
アニメーション制作:ライデンフィルム
総監督:江崎慎平
監督:牧野友映
シリーズ構成:岸本卓
<☟原作小説はこちらから>
啄木鳥探偵處 (創元推理文庫刊行・単行本は1999年5月)
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一度でも 我に頭を下げさせし 人みな死ねと いのりてしこと
『一握の砂』より。日常や生活苦を詠い、若くして亡くなった明治を代表する文士、石川啄木。名声の裏でクズ&ネタエピソードにも事欠かない、そんな彼が生計のために始めたのは…探偵! 友人の金田一君と共に、事件の謎を推理するという作品です。
原作は創元推理短編賞を受賞したそうですが、第1話から「これそんなにミステリーになってるか?」とイキナリ不安に。各エピソードの事件も推理も微妙。事件の顛末がパッとしないし(似たような流れもそれなりに)、推理も唐突な所が多くて「解いてる」感が薄い。オチも釈然としない。
『虚構推理』でも言った話ですが、解決したのにスッキリしないのは…多分、この系統のミステリーは私向けじゃないんだなぁ。
なのでキャラクター面に期待したのですが…主人公(一応)の啄木君がクズな性格で、この時点で好みが分かれる造りだというのを差っ引いても、話毎にブレていて中途半端。アニオリで原作には登場していない文豪もぞろぞろと登場しましたが、…ほぼ駄弁っていただけだったような。いい御身分ですな~。畑の肥やし要員?
平井君は推理に貢献してくれているけど、便利に動かし過ぎていて「これ啄木君が探偵やる話なんだよね?」と困惑。儲かってるのかね、探偵業は?
総じて、文豪を探偵役に置いてまでやりたかったことがあまり見えない作品だったなと思います。この話、架空人物に置き換えても実現できそうじゃないかと感じる程度には。強いて言うなら、啄木氏の生きた明治時代の雰囲気が醸し出ている作画と背景…そこは良いけど、結局啄木じゃなくていいじゃんということに。
あ、主演の浅沼晋太郎氏が啄木氏とつながりがあるそうなので、そこは本作のファインプレーだと言えますかね。でもそれ(声優さんの演技)だけでこの作品を推すとまでは至らない。本当に残念です。
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プリンセスコネクト! Re:Dive
(2020年4月-6月)
アニメーション制作:CygamesPictures
監督・シリーズ構成:金崎貴臣
<☟スマホ・タブレットからでもPCからでもプレイ可能ですよー>
プリンセスコネクト! Re:Dive
(iOS/Android/Windows・2018年2月15日サービス開始)
(クリックすると公式サイトにジャンプします)
定価:基本無料(アプリ内課金あり)
ジャンル:アニメRPG
メーカー:Cygames
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「ヤバいですね☆」に満ち溢れたこの素晴らしい世界に祝福を!
年末年始のヤバいソシャゲがついにテレビアニメ化。流石サイゲームズ、しっかりとキャラクターを可愛く、綺麗に、気持ちよく動かしています。所々光る演出も良し、シーンを盛り上げる劇伴も良しと、アニメRPGの名に恥じないクオリティ。サイゲマネーをふんだんに使ったんでしょうなぁ、良いことです。
ソシャゲらしく登場人数は多めですが、いきなりキャラをばかすか出さずに各エピソードで少しずつ絡ませていく構成のため、それぞれ印象に残りやすいです。え? 何? こんなの序の口なの? 本編ではまだ見ぬヤバいのがぞろぞろ待ち構えてるの?? まじっすか。ヤバいわよ。
お話自体は大したこともない…というか何というか。ちょっとずつこの世界の秘密が開示されてはいますが、結局最後まで大きな進展があったわけでも何か解決したわけでもありません。しかし「ありきたりで、けれど愛しい日々」の幸せがそこにはあるので、そういうものだと理解して観る分には全然気にならない、ていうか割と早い段階でそうだろうなと察しました。
謎を解き明かしたい方は是非ゲーム本編をプレイしてね、ということでしょうか。
本作の主人公ユウキは訳あって幼児退行。危なっかしいしあんま喋らない。この要介護っぷりにはキツさを覚えるかもしれないけれど、しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから…ストーリー中の奇行が全てこの一言で解決するのズルくないっすか?
彼の言動に「かわいいね~えらいねぇ~」と、視聴者までユウキ君のママになっちゃうぞ。傍から見たら凄い地獄絵図でヤバい。 終盤は(ちょっと唐突さも感じたけれど)彼の成長ぶりに感動しちゃったわよ。
とにかくこれでゲーム本編の方にも関心を引き寄せることはできただろうし、ソシャゲ原作のアニメ化としては理想的な作品に仕上がっているのではないでしょうか。ただし、始めるにしても「おかねたいせつ」ですからね。皆の課金次第で2期も夢じゃないとはいえ程々に…度を越しても緑の悪魔が喜ぶだけだ。
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これにて紹介はおしまい。これ以外にも観ていたものはあります。『ざしきわらしのタタミちゃん』とか。短い尺のアニメの中で藤原啓治氏の声を聴いていると寂しくなりますね。我儘な要求かもしれないけれど、できることなら皆長生きして沢山声を聴かせてほしい。
夏期のアニメも次々とスタートして、そろそろ最後まで観続ける作品が固まってきたかな? と思います。拠点の中に居続ける時間が長引くと、どうしてもnoteを書く口実が無くなってしまうので夏も記事を書きたいなぁ。
まぁ義務感みたいなことは一切考えず、素直にアニメを楽しむつもりで観ないとね。今期は『GREAT PRETENDER』や『デカダンス』といったオリジナルアニメ作品に注目していますよー。
《了》
©武田すん・講談社/グレイプニル製作委員会
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会
©アニメ「プリンセスコネクト!Re:Dive」製作委員会
©Cygames, Inc.