Review-#023 『2019年春アニメを観たので感想を書く』Vol.01
平成と令和の橋渡し
今回は比較的早めに出せましたね。「梲」が上がらないだの何だのと言っていましたが、観たので感想を書いてnoteに上げる、これが出来ただけでもヨシとします。
今回は6作品と、夏・秋・冬に比べると大分落ち着いた紹介数に。紹介しようとしたけど脱落してしまった作品もそこそこあります。でも1年前の春もこの位だったんだよなぁ、自分で勝手にハードルをどんどん上げていただけで。
2作品ずつ、3記事に分けて紹介します。あまり日を跨がずに更新していこうと思っていますが、一番最後のVol.03はちょっと遅くなるかもしれないです。というのも現在進行形で観ている春アニメがあるのです…『鬼滅の刃』や『フルーツバスケット』とはまた別の作品ですよ。
まぁ、それに関しては観終えてからのお楽しみということで。Vol.01はMAPPA祭り。いや勿論、アニメーション制作のMAPPAのことですよ…?
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<このページのお品書き>
① どろろ
② さらざんまい
NEXT》
(『世話やきキツネの仙狐さん』
『超可動ガール1/6』)
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どろろ
(2019年1月-6月)
アニメーション制作:MAPPA・手塚プロダクション
監督:古橋一浩
シリーズ構成:小林靖子
<TVアニメプロモーション映像>
<☟今年は手塚先生没後30周年ですね…>
どろろ (週刊少年サンデー/冒険王掲載・1967年~1969年)
作:手塚治虫
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50ねんたっても ほげほげたらたら ほげたらぽん
またしてものっけからタイトル詐欺を働いていますが、2019年冬アニメが始まって一番推していた作品。ようやく紹介できましたねぇ。ちなみに2月に「MAPPA SHOW CASE」を見に行った時のレポートを「うわそら」の方で掲載しているので、もし良ければ是非。
原作は結局未完のまま終わりましたが、アニメ化・小説化・映画化・ゲーム化・リメイク漫画化と、かなり恵まれています。それぞれで違う結末が用意されていたりと、皆どのように『どろろ』を動かしていこうかと挑戦している様子。
元は『ゲゲゲの鬼太郎』に対抗心を燃やしたとか何とかで作られたそうですが、その負けん気でこれほどの魅力を持ち合わせることができるというのが、マンガの神様たる所以なんでしょうな。
アニメ版としては実に半世紀ぶりとなる本作。2クール作品として、原作を下敷きにしつつアレンジを加えています。例えばアイドルグループを結成できそうな程存在した鬼神の数が12体まで抑えられたり。原作ですら48体倒しきってないからね。
中でも注目する点が、本作のシリーズ構成を担当する「靖子にゃん」こと小林靖子女史。重くも引き込まれるストーリー展開で知られています。おかげで「脚本家が外道衆」とか酷い(?)言われ様。
鬼神によって身体の部位を奪われた百鬼丸(ひゃっきまる)は、旅先で出会ったどろろと共に鬼神を次々と退治していきます。元々の境遇自体が重いですが、時代が時代ということもあって道中もやはり辛い現実が待ち受けているのです。鬼神を斃すことで取り戻される、百鬼丸の身体(の一部)。そこで初めて経験するものとは…。
靖子にゃんは人の皮をかぶった鬼神か何かなんでしょうか。割と真面目に「地震雷火事靖子」に置き換えても良いと思っている今日この頃…ですが、毎回毎回救いが無いわけではありません。すっかりと身構えてしまった視聴者にささやかな安らぎを与えてくれるエピソードもあります。
きっと靖子にゃんは持ち上げてちょっと緩んだ所から奈落へ突き落とそうとしているのでしょう。疑念が払拭できてない。
冗談はさておき、百鬼丸とどろろ、彼らにとって大切な存在との出逢いと別離、そして再会と決別。序盤は無機質な雰囲気を漂わせていた百鬼丸は、身体を取り戻しながら心を成長させていき、連れのどろろとの絆をも深めていきます。どろろも何かと世話の焼ける彼のこともあり、結構しっかりとした性格に。心の行き場がなく、何処か飛んで行ってしまいそうな百鬼丸を引き留める存在です。
今見ても斬新だと思うのが、身体を取り戻すことで「弱くなる」という設定。しかし同時に「弱さ」は人の「強さ」でもあるのよね。そこもまたストーリーを引き立てているというか。
そうそう、実は靖子にゃん担当回はそんなに多くなかったりします。『進撃の巨人』やら『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』やら『賭ケグルイ××』やら、色んなところに引っ張りだこだったというのもあるのか、全24話中8エピソードが靖子にゃん。
本作の脚本家や演出家のアプローチの仕方…というのもあるんだろうけれど、少しパンチに欠けるエピソードが(序盤が序盤なだけに)中盤の方ではあったかなと思います。十分辛いエピソードなんだけれど、先にもう一段階何かありそうなところでスッと引いてそのまま締めくくられる、そんな感じのお話が。
ただ全話観終えた今、すっきりした気分でこの文章を書いています。いや、モヤモヤしてる? うん? どっちだ??
光に満ち溢れているとは言えないけれど、闇に閉ざされている訳ではない、このどっちつかずな思い。最終回は駆け足だったかなと思うけれど、業と情が絡み合う、人の世を描いた本作らしい形に収まったのではないでしょうか。何が言いたいかと言うと、最後まで追っかけて良かった。
苦楽を分かち合いながら進展していくストーリー、随所随所で引き立つ作画とアクション、雰囲気を高める音楽(第2クールのOPEDは個人的にはちょっと合わなかったけれど…)。それぞれが高い水準で纏まっていたと思います。
本作は『テガミバチ』などで知られる浅田弘幸氏がキャラクターデザインを担当しています。本作の設定や空気感にマッチングしている印象、でもこれだと…分かっちゃうんじゃないかなぁ。実はあのキャラ(自粛)
原作でははっきりと明かされなかった、物語の「答え」。本作は一つの解を示すことが出来たと言えるでしょう。評価はGREATです。
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さらざんまい
(2019年4月-6月)
アニメーション制作:MAPPA・ラパントラック
監督:幾原邦彦
シリーズ構成:幾原邦彦・内海照子
<TVアニメプロモーション映像>
<☟小説版もございますケロ>
さらざんまい (幻冬舎コミックス・2019年4月16日(上))
作:幾原邦彦・内海照子
イラスト:ミギー
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"すしざんまい"なの? "かっぱ寿司"なの? "銀のさら"なの? …どれ??
2019年春アニメ。『つり球』以来のノイタミナ枠紹介です。
ティザービジュアル以外、何にも情報見ないで第1話を観たんですよ。そしたらどうなったか。
…?
……???
まぁ、確かなのは「思ってたんと違った」ということでしょうか。『さらざんまい』…だし、寿司? カッパ…カッパ巻き? …概ね違いましたケロ。
「欲望」「つながり」をテーマにした、汚いプリキュアを私は観ていたのでしょうか。訊かれても、と返したい気持ちは分かるけれど、『さらざんまい』は「よく分からない」…「でも何となく楽しい」という作品でした。こういう作品に出逢えるというのは中々ないことだからねぇ。
『輪るピングドラム』や『ユリ熊嵐』で知られる幾原邦彦監督の最新作。…なんですが、ごめんなさいイクニワールド初挑戦なんです、私。
既に履修した人の中には「分かりやすい」と感じたのもいるそうですが、でもいきなり3人の少年がカッパみたいな生命体に尻子玉を抜かれてカッパに変身し、急に歌いながらゾンビの尻子玉を抜く話だとは思わないじゃない? え?? これが通常運行なの? これが第1話で、今後どうなるの???
…少し落ち着いて観直してみると、成程「欲望」や「つながり」というものが、ストーリーを動かしているのだと第1話の時点で分かりやすく提示されています。このテーマは最後までずっと貫かれており、情報量の多さにビックリするし、何が何だか分かんないとも思うのだけれど、重要な所は確かにストレートなんだなと感心します。
膨大な情報もよーく見凝らしてみると、この世界のヒントだったり考察のタネだったりと、色々と捗る要素が盛り込まれています。アレコレ考えて楽しみましょう。
まぁ、難しく考えずとも、映像や音楽が何だか楽しいというのも1つのポイントかもしれないですね。作画は最初から最後まで綺麗でした。所謂バンクシーンも(前半の方では)多いんだけれど、実は毎回毎回どこかに違いがあったりして。ちょっと映像を止めて、何が書かれているか、何が描かれているかを見比べてみるのも一興だと思います。
前半の構成は『セーラームーン』や『プリキュア』などの、「魔法少女モノ」のような感じ。「汚いプリキュア」と書いた理由がそれです。
しかし後半から事態は急変を告げます。不穏なシーンが続き、警官コンビのレオとマブの描写も濃くなり、……まるで序盤の展開がウッソーだったかのように笑えない状況に。それこそ最初は過剰とも思えた演出の数々が、恋しくなるぐらいに。
最初から最後まで頼みはケッピとサラの二人(?)だけです。どんな時でも大体清涼剤。ケッピは…うん、汚いけど。
そうです。勿体ぶっていたわけではないのですが、この作品は…まー汚いんです。表現が。あれやこれやと。
第1話を観てもらえれば分かるかと思います。尻ですぜ、尻。こんなのお食事時に観ようものなら箸が止まるし、なんだったら口に入れていた物が零れ落ちますよ。そりゃあ深夜に放送するわけだ!
尻じゃなくても、人を選びそうなキャラクター設定だとかシーンだとか、相手に薦めるのであればちょっと考えなくてはいけない要素はそれなりにあります。
ただ、それを差し引いても「薦めたい」、「(無理のない程度に)観て欲しい」と思わせられるのがこの作品。最終回まで明かされなかった幾つかの謎は残っていますが、少なくともこの作品で描きたかったものの本質は感じ取れた気がします。「一つの可能性」に過ぎないのかも、分からないけどね。
評価はGREAT。頭まっさらにして、『さらざんまい』をたんと堪能するのですケロ。感じるままに、なお楽しむことが出来ればハッピーでぃっしゅ!
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そんなわけでMAPPA祭りでした。…ただ個人的には、MAPPAは良いものを作れるって分かっているからこそ、頑張って同時制作数を増やそうとしない方が良いと思うんだよね(他のアニメスタジオと共同だったとしても)。劇場版『ユーリ!!! on ICE』とか控えているわけだし。
そして、この夏から『かつて神だった獣たちへ』が放送スタートですね。『ゾンビランドサガ』や『どろろ』で脚本を手掛けた村越繁氏がシリーズ構成を担当します。どんな作品になるのか…原作未読勢として、楽しんでいきたいと思います。
Vol.02に続く。
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