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Review-#007-D ショートレビュー Vol.03 Part 4

 Part 4です。ここまで分割してもまだありますからね。ぶっちゃけ書くことがなくなってきました。リンクはこちらから。

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・2018年春夏アニメのおしながき

<Part 1>
ルパン三世 PART5
はたらく細胞
<Part 2>
はねバド!
ちおちゃんの通学路
<Part 3>
あそびあそばせ
Back Street Girls -ゴクドルズ-
<Part 4> ← いまここ
深夜! 天才バカボン
ISLAND -アイランド- 
<Part 5>
百錬の覇王と聖約の戦乙女
異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術

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深夜! 天才バカボン (2018年7月-9月)

アニメーション制作:studioぴえろ+
監督・脚本:細川徹
副監督:山本天志

<TVアニメプロモーション映像>

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平成最後になってようやく時代が赤塚不二夫に追いついたの…か?


 2018年夏アニメ。1971年に最初のテレビシリーズが東京ムービーによって製作されてから47年経った今年、何と5作目のテレビシリーズ。私はリアルタイムではないですが『元祖天才バカボン』を観ていた記憶があります。

 あぁでもそっか、『平成天才バカボン』から『おそ松くん』と同じstudioぴえろ製になったのね。ちょっと前まで放送されていて社会現象にもなった『おそ松さん』はstudioぴえろ製だが、この『深夜! 天才バカボン』はstudioぴえろ+(プラス)製。製作元請が中心ですがこのスタジオ単体でもアニメーション製作を行っており、最近だと『魔法少女 俺』もここが担当している。

 天才バカボンと言えばナンセンスギャグ。赤塚先生亡き後の本作でもそのナンセンスさが発揮されている…はずだが、そうしたモノにこの数年間ですっかり慣れちゃった自分がいる。

 ある意味『天才バカボン』にルーツを見いだすことのできる漫画・アニメのギャグ展開の手法が一般化されたことにより既視感がじわっと滲み出てしまい、視聴者側の目が随分と肥えてしまったのかもしれない。ここ最近は『おそ松さん』や『ポプテピピック』等のアニメが間を置かずに放送されていたことで、その後釜作品である本作のハードルが相当に高かったのもあると思う。
 なんでも元々『おそ松さん』ではなく『深夜! 天才バカボン』が先に企画されていたんだそうなのね。両者とも本作の監督・脚本を担当する細川徹氏が提案したものであり、会議にて優先された『おそ松さん』ではプロットと脚本のプロトタイプを書いた後に降板してしまったらしいが、それが使用されて第1期がもの凄い社会現象になったという。

 細川氏は『おそ松さん』の陰の立役者、ということだ。彼のツイッターにて炎上騒ぎが放送数日前に起き、「バカボンがおそ松さんに似ていると言われた」ことに反論した件によるものだが、ごめん、正直な感想第1話はアプローチが若干違うだけでほぼほぼ『おそ松さん』だったわ。アニメ放送が決定したとき「二匹目のどじょう…もといウナギイヌでも狙ってんのか?」って私でも思ったもの。『おそ松さん』2期が終わって間もなくのことだったし、この短期間で赤塚作品のリメイクが立て続けに行われているなら似た系統のアニメになるんじゃないかっていう具合には期待も不安もあった。

 1990年前後では『おそ松くん』と『平成天才バカボン』が続けて放送されていたけれど、あくまでもその2つはそれぞれの前作のリメイク作であって『おそ松さん』と『深夜! 天才バカボン』は(一部の原作リメイク回を除いて)ほぼオリジナル作品と、似たような状況でも同等には語れない事情がある。それは一番スタッフが分かっていることじゃないのか、んじゃあそれ程言うならよっぽど差別化図ってきてんだろうと思ったらむしろ意識しているかのような展開で、全く成長してなくてちょっとガッカリしたのは否めません。
 自分の担当する作品についてアレコレ外から言われてツイッターでそれらに対して反論したくなる気持ちは分かるけどさ、20年以上様々なテレビ番組の放送作家とかをやってきているというのに、芸当がこれしかないなんてそんなことはないだろう?

 とはいえ、細川氏が言う所の「赤塚先生が今、全盛期だったらこういうネタをやったんでは」という展開であるように思えるのも確か。原作はあまり読んでいないけれど、本当に何でもありなんです。普通にメタ、時事ネタ、パロディ、下ネタ、グロ描写、その他もろもろ。勿論、最初から固定された作風ではなく連載中に何度か変遷した結果そうなったのだが、それを踏まえて考えれば、赤塚先生ならこのご時世に合わせて声優ネタとかも取り入れてくるかもしれない。本作ではママの声が日髙のり子さんと、テレビシリーズでは始めて声優の変更が行われたので「増山江威子じゃないのか!?」とか言いそう(これまでのテレビシリーズでは、赤塚先生の希望で唯一ママのみ声優の変更が無かった)。
 うーん、『おそ松さん』の第1話とて今考えればバカボンがやった方がしっくり来そうな感じではあったけれど、先にやっちゃったからねぇ…。二番煎じ、と言われても仕方あるまいよ。

 まぁ、これはあくまでも前座だから、2話からエンジンかけて不条理ギャグ全開なストーリーが観れるはず…と思ったんだけどさ。何か、あんまり観ていて面白くない。話の流れが不条理なことには違いないが、あんまり笑いに繋がらない。全然笑えないわけではなくちょっとクスリとくるものもあるんだけれど、なかなかそれが連続して来ない、言ってみれば寒いというより湯冷めしたかのような感覚。笑いの熱がセーブされずに逃げていく。
 何でか。このアニメは振り切れていない…恐らくそれが純粋に、本作が面白く映らない理由になっていると思います。原作そのまんまやれとは言わないけれど、大人しすぎるのよ。「BPOなんか関係ないのだ」と言っているなら、毎回BPOの審議入りが不可避なぐらいにぶっ飛んだエピソード流してみろっての。これだと多分BPOにも相手にされていないよ。予防線にもなっていないコンセプトを引っ提げた割には、結局無難な感じに収まってしまっている。studioぴえろ+ビビってんのかオェーイ。ヘイヘイヘイヘイ~。

 だいいちBPOって真面目にテレビ番組全体の品質の向上を目指すつもりあんのか? なんか自分たちの手の届く範囲で、自分たちにとって気に食わない番組にだけイチャモン付けてるイメージ。そのくせ本当に動くべきマスコミの不祥事にはまともに取り合うことなくもみ消そうとした事例も結構あるようだし、感想から脱線するのでこの辺で止めにするけど喧嘩を売りつけるだけの価値なんてBPOにはないんじゃないの? ナンセンスという点では案外『バカボン』らしいと思うけど。多分本作の作り手はそう思ってない。
 あと台詞とギャグのテンポが悪い。同じことを続けて2回言っていることが多いのである。これは細川氏独特のものなのかね。天丼ネタをたくさんやられてもお腹いっぱいだよ。

 子供だと深夜枠で動かしづらいという理由で設定をぶっ飛ばした『おそ松さん』とは違って『天才バカボン』は元のまんまでも十分設定や作風がぶっ飛んでいるんだから、安直なメタネタや時事ネタに走るだけじゃなくてもうちょっとストレートなナンセンスギャグで攻めてもウケる、というかむしろそっちの方がウケが良いとは思う。時事ネタとて「都知事の5000万円入るバッグ」とか、とっくに使用済みで何の新鮮さもない。それもう『銀魂』とかがやってるから。製作時期を考慮してもさ、もっとタイムリーな話題があったでしょーに。「Nice boat.」ネタも半年前に『ポプテピ』がやってたし、今のアニヲタが皆『School Days』とか10年以上も前のアニメのネタしか知らないとでも思っているのか? もう平成も30年目なのにこうも昔のアニメが次々とリバイバルされている状況には「今年って西暦何年だっけ?」って冗談交じりで訊きたくなるけれど、この件については冗談抜きで訊きたくなる。

 ゲストとしての本人出演は別にいいけど、…いやその前の『おそ松さん』で照英ちゃん出てきちゃっているからやっぱり既視感半端ないけど、無駄遣いもいいところ。ただ出ている、それだけ?? 細川氏の人脈自慢か何かか??
 4話では遠藤憲一さんをハジメちゃんのモーションアクターとその後のエピソードのチョイ役に抜擢…。いやまぁ、確かに驚いたけれど遠藤憲一さんを出した意味あるか? これ。感想がこの程度止まりになってしまうのは本当に「ただ出ている」だけだからなんだよね。どうせならもっとしっちゃかめっちゃかに掻き回せばいいのにって、本人出演がある度に毎回思う。

 あとやたら芸能人のランキングを発表したがるよねこのアニメ。深夜枠のアニメを観ている人って、放送内で芸能人の話題を持ち出されているとテンションが上がるもんなのか? 結局人名1コも出さないままランキング発表が遮られちゃうし。下手すれば名誉棄損で訴えられるからそうしているんだろうけれど「やるよ? やっちゃうよ? でもやらない」っていうチキっているのが見え見えのギャグを多用している辺り、これ以上この作品に期待するものが何もないという現実が浮かびます。言えないんだったら最初からやるな
 芸能人ネタをやるんだったらランキングは別にどうでもいいから「藤圭子と前川清は結婚してもきっと離婚する」ぐらいの話題を出しなよ。これは原作にあったネタで、ふたりは本当に離婚したけど。

 私見として、一番問題なのは『おそ松』や『ポプテピ』などでこちら側が赤塚イズムの耐性をつけてしまったんじゃなくて、赤塚イズムに徹しきれていない、上っ面を真似ただけで滑っていると感じてしまうところにあると思った。いつの時代でもメタ・パロ・シモは話を面白くするのに使えるネタのはずなのに、「とりあえずこういうのをぶっ込んでおけば赤塚作品っぽくなるだろう、ツイッター上はその話で持ち切りだろう」っていうのがあからさまな上に悉く新鮮さも面白みも欠けるものばかり。ナンセンスギャグが本当にナンセンスでどうすんのよ。ツイッターでバズるのを期待するのは結構だけれど、他のアニメは小手先のものを使わなくてもインパクトがあればそれだけで話題になってるんだわ。作画崩壊を止めるためにツイッターに投稿を呼びかけるシーンとか、意図が分かりやすすぎて呆れるしかなかった。台詞を聞く分、スタッフらも自覚していたようだが。

 一応フォローすると中には結構面白かったエピソードもあって、それは第3話。細川氏が自ら日常回と位置付けたこともあって、奇をてらわずに奇をてらってきていて理不尽だったり超展開だったり、昔観たバカボンらしいなと素直に思えた。なぜ高橋克典氏を出したかのは謎だけれど。それが続けば良かったんだよ、第4話からまた右肩下がりになっちゃった感じがする。
 その後のエピソードもいかにも原作準拠という回はそれなりに面白かった、というのはギャグ漫画の王様と呼ばれた赤塚氏が打ち出した展開の完成度が高いということの再確認であると同時に、本作の試みというのがいかに自分のツボにハマらなかったかということを示している。「うんこ男子」は…。最後にバズって良かったね。

 あと今回、バカボンのパパは古田新太氏が演じている。声優としての出演は多くはないが、調べてみると結構有名どころのアニメに参加している。聴いてみるとバカボンのパパとマッチ具合は悪くないのね。本作ではキャスティングが『おそ松さん』と発端の企画だった『しろくまカフェ』とそれなりに共通していて、特にバカボンはテレビシリーズで初の男性声優である入野自由さんになっているんだけれど、これはトド松。『おそ松くん』(第2作)でトド松を演じた林原めぐみさんが『平成天才バカボン』でバカボンを演じたのと合わせたのかな?

 ここで出すのは初めてですね、私が12話通しで観ての評価はMEDIOCRE。スタッフは「これでいいのだ」が二次創作の出来に対しての免罪符か何かと勘違いしているのではと疑ってしまうぐらい、不条理にも笑いにもBPOへの喧嘩売りにも徹しきれていない作品。バカボンのパパが「これでいいのだ」と締めくくると何故か謎の説得力があって納得してしまうけれど、「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな」と素直に返したい気分になったのは『深夜! 天才バカボン』が初めてだぞ。

 ここまでに紹介した『ちおちゃんの通学路』とか『あそびあそばせ』とか『ゴクドルズ』とかの方が、よっぽど喧嘩を売ってる作品だよ。この作品がチラッチラッと周りの反応を伺っている間にも、他作品は普通に「これ大丈夫なのか!?」と吹っ切ったギャグやってるんだわ。
 特に『あそびあそばせ』は岸監督がコント番組を意識して制作したというだけあって、テンポや意外性のおかげでギャグのクオリティが高く目論見通りの出来映えになっていると思う。『深夜! 天才バカボン』は細川氏ということもあってバラエティ番組に近い作りになっているのだろうが、なんていうか人気の高い深夜番組がゴールデンに移行したら以前ほどの勢いがなくて、程無く番組終了の憂き目に遭ったかのような感じ。このアニメは深夜にやってるはずなのになぁ…

 この作品は「子供に見せられません」って言っているが、……万が一何かの手違いで見ちゃっても別にいいと思う。やることなすことに躊躇ってる様子が見受けられるもの。
 『天才バカボン』が打ち出したシュールなギャグに時代が追いついてしまったのか、それとも単純に作り手が時代に取り残されているだけなのかは本作を観ても私にはよく分かりません。赤塚先生が観たら本作も「これでいいのだ」と言ってくれるのかもしれない。だけど今ハッキリしているのは、赤塚先生はもうこの世にはいないという寂しさだけです。それ以上は…何も言うまい。

 赤塚作品のアニメというと他にも『ひみつのアッコちゃん』とか『もーれつア太郎』があるけど、このブームに乗って東映アニメーションも深夜枠とかでリメイクの製作を検討することは…あるんだろうか。いや、あってもいいけどさ。普通にやってても普通じゃないんだから普通にリメイクしてもらった方が、変な方向の期待とかを抱く必要がなくて逆に有難がられるかと思います。『おそ松さん』ほどの話題性を得られるかどうかは、別として。

--------------------------------------------------------------------------------------ISLAND -アイランド- (2018年7月-9月)

アニメーション制作:feel.
監督:川口敬一郎
シリーズ構成:荒川稔久

<TVアニメプロモーション映像>

<☟原作ゲームもどうぞ>
ISLAND (Windows[2016年4月28日]/PSVita[2017年2月23日]
     PS4[2018年6月28日])

定価: 9,800円+税(Windows)
    6,400円+税(PSVita, パッケージ版), 5,700円(PSVita, ダウンロード版)
    6,200円+税(PS4, パッケージ版), 5,500円(PS4, ダウンロード版)
ジャンル:せつなとえいえんのおとぎばなし
メーカー:フロントウィング(PSVita, PS4はプロトタイプが発売)

<プロモーション映像(キャラ紹介ムービー)>

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1クールだとギャルゲーのアニメ化は難しい?


 2018年夏アニメ。『魔界天使ジブリール』シリーズや『グリザイア』シリーズなど、アダルトゲーム業界で名を馳せるフロントウイングの設立15周年を記念したビジュアルノベルゲーム『ISLAND』を原作とするアニメ。ちなみにゲームは非18禁どころか、PC版ではなんと「全年齢対象」のレーティングを受けているので興味が湧いたら恥ずかしがらずに購入してみましょう。
 ちなみに私は未プレイ。7月に入って、まだあんまり夏アニメ放送していないかな~と覗いてみたらこの『ISLAND』があったので、他にないしとりあえず1話だけでも観てみるか、と思い視聴開始。

 さて、第1話からだが、このアニメはなかなかにハードルが高い。というのも、最初に色んな謎を散りばめてからスタートするという手法を取っているからである。あらすじをざざっと説明すると、

 主人公の刹那(せつな)は、目が覚めると日本本土から離れた島、「浦島」に(全裸で)流れ着いたことに気づく。記憶喪失ではあるものの、断片的に残る夢の記憶から、自分は未来からやってきたと信じる刹那。海岸で浦島御三家のひとつである御原家の少女、御原 凛音(おはら りんね)と出会ったことで彼は「三千院 刹那」として御原家の使用人として浦島に住むことになる。
 浦島には煤紋病(ばいもんびょう)と呼ばれる風土病と、排他的な因習、そして数々の言い伝えの謎があった。刹那は、やがて島の未来を変えるために奔走をはじめることとなる…。

 …第1話の情報量が多く、1回観ただけではなかなか把握しきれないところがあると思う。キャラクターも主人公をはじめ、立ち位置を含めて謎の多い人物が多いが1話ではあまり明かされていない。
 1話のラストシーンでは凛音が「煤紋病を患っている」ことを刹那に伝えている。煤紋病にかかった人間は太陽光を浴びると衰弱してそのまま死んでしまうらしい。と、言った後に本作のOPが流れるのだが「いやアンタ、太陽の光思いっきり浴びてますがな!」と突っ込んじゃうかもしれない。重大そうな設定を抱えていると思いきやOPの盛り上がる部分であたかも無視したかのようなカットを挟んだら流石に失笑しかねない。が、なぜ凛音が露出の多い服で日中から海岸にいても平気なのかは、後々明かされる。とりあえずこの1話では銀魂の某EDと同様「海岸を模したスタジオで撮影しているだけなんだ」ということにしておきましょう。そうしましょう。

 本作のシリーズ構成は特撮界ではお馴染みの荒川稔久氏。1クール放送のため、どうも原作シナリオよりも展開が速めになっているとか。
 『PERSONA5  the Animation』とは違って原作既プレイ勢ではないから、実際どのぐらいの差異があるのかはよく分からないけれど、とりあえず本作を視聴するのであれば「5話ぐらいからが本番」だということを頭に入れておくといいかもしれない。
 どういうことか、というと具体的に謎を解き明かしていくフェーズがこの辺りから始まっているのね。それまでは謎を提示しつつ、それぞれのメインヒロインルートを展開していく感じ。

 だから序盤はあまりメインストーリーが動かない。伏線を張るフェーズ。これと言ってガツンと来るシーンが少なく、ギャルゲーものによくある日常シーンが続いている。あとキャラクターソングがよく流れる。急に歌うよ
 こんな感じなので、「ホントに面白いのかこのアニメ?」と1話切りあるいは3,4話ぐらいまで観たけど切ってしまいたくなる気持ちはよくわかる。しかし何回かアニメを見返しつつ視聴し続けていくと、それまでの描写の点と点が線で繋がっていることに気付ける、というところが本作のポイントであろうか。そのため本作の場合、可能ならば過去の話を録画して溜めておくことを推奨する。伏線を見返すのに必要なので。配信サービスとかだと伏線が伏線であったということの把握が難しいかもしれんね、「そんなシーンあったっけか?」みたいに。アニメーション制作がこの手の原作で結構担当することの多いfeel.で作画やキャラクターデザインも上々なので、世界観やヒロインの可愛さを目的に見続けてみるのも悪くないだろう。

 ただまぁ、やっぱ1クールじゃあ無理があったんだろうか…。本作のペースの速さの弊害をモロに被っているというべきか、ストーリーがダイジェスト風味で進んでしまっている。折角の後半、伏線回収&急展開パートも容赦ないダイジェストっぽさ。全体的には必要なんだけれど、どうもなー。前半をもちっと切り詰めれば良かったのではないだろうか。アニメだけだと結局どうなったのか、何だったのか分からずじまいなまま終わってしまうところもあって。
 設定自体はかなり面白そうなだけに、これはどう考えても2クール取ってしっかりと描写していく必要があったと思う。原作ゲームをやってからプレイすれば様々なシーンがより楽しめるのかも…気になる方は購入してみては。原作は相当にボリュームがあるそうで、猶のこと荒川氏も尺に悩まされたんだろうなぁ、と思ってやまない。誰だ、この作品を1クールあれば行けると思ったのは。
 主人公の刹那ですが…個人的には無味無臭の男だと思います。色んな女の子と絡み合ってるけど、「そこにいる」っていう感じが強い。前回紹介した『多田恋』の多田君よりはアクティヴだが、記憶喪失という設定もあってか受け身に回っていることの方が多いキャラクターだなという印象。折角声が付いた(cv.鈴木達央)のに、ぶっちゃけ地味。これといって不快にはならないけれど、記憶にあんまし焼き付いていない。ゲームにおける地の文に当たる心理描写が少ないしなぁ…。

 色々書いたけれど、「刹那と凛音の時を越えた出逢い」が本作の大きなポイント。先の自殺疑惑OP含めて、時折挟まれる急展開にビックリを通り越して笑いが出てくるかもしれないが、後半に入るとなかなかのSFっぷりを発揮してくるので先が気になってくる。ゲームのジャンルは「せつなとえいえんのおとぎばなし」とあるが、最後まで見れば勘のいい人はそれが本当にそうであったと気付けるかもしれない。
 だから本当に前半のうちに折れてしまいやすい構成だというのが勿体ないと思う。その分ギャップが引き立てられているが、常夏の島でエンジョイしていたと思ったら次の瞬間大時化の海に飲み込まれているような、そんな高低差が発生していることが評価ポイントとなるかどうかは、観る人がどういう展開を好むかにも依るだろう。

 尺が限られているアニメで原作ゲームのシナリオを再構成するという難しさをよく表した1作だと思う。序盤にインパクトがあるものを観て視聴のモチベーションを上げたい、という人には観続けるのが辛いかもしれないね。そういうことで、アニメ単体の評価としてはMEDIOCRE。こういうタイムリープものは面白いと思うだけに、非常に勿体ないという印象です。観るのであれば、原作ゲームもセットでどうぞ。

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 あー、ようやく次のPart 5で最後のパートになりますね。まぁ4作でも10作でも、結局ものぐさな性格が更新ペースを遅くしているのは変わらんのですが。自分でやりたいからやってるはずなんだけどね。続く。


原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV
©清水茜/講談社・アニプレックス・davidproduction
©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会
©2018 川崎直孝/KADOKAWA/ちおちゃんの製作委員会
©涼川りん・白泉社/「あそびあそばせ」製作委員会
©ジャスミン・ギュ・講談社/犬金企画
©赤塚不二夫/深夜! 天才バカボン製作委員会
©2015 Frontwing/PROTOTYPE/アニメISLAND製作委員会
©鷹山誠一・ホビージャパン/ユグドラシル・パートナーズ
©むらさきゆきや・講談社/異世界魔王製作委員会