Review-#010 『SSSS.GRIDMAN』

帰ってきた電光超人が、"君を退屈から救いに来た"


 2019年のはじめは毎期恒例の「アニメを観たので感想を書く」いつものレビューです。それでもって今回から単独記事に。今まで何故かショートレビュー枠で上げていましたが、どうやっても文章が長くなるので開き直ってこうなりました。気付くのが遅すぎるんじゃい!
 あと評価の画像レイアウトがちょっとだけリニューアル。

 今回は全部2018年秋アニメ作品です。本当は同タイミングで上げるつもりだった2018年春アニメの『PERSONA5 the Animation』がもう1本特番残していたようなので。
 そんでもって新たな試みとして、毎日1記事ずつ更新することにします。この記事を含めて、公開する(予定)のものは計8作品。約1週間連続で投稿できるように頑張ります。

 目次はこちら。この順番で公開していきます。それにしても秋期はクオリティの高い作品が多かったなぁ、という印象でした。「夏ほど観ない」はずが、気付いたら同等かそれ以上に観ていたなんて。態々自分でノルマを増やしたおかげで、追っかけるのが大変でしたね。わはは。

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<今回紹介する2018年秋アニメ一覧>
SSSS.GRIDMAN ←いまここ
青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない
やがて君になる
となりの吸血鬼さん
うちのメイドがウザすぎる!
抱かれたい男1位に脅されています。
宇宙戦艦ティラミスⅡ
ゾンビランドサガ
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 そんなわけで、2018年秋アニメ紹介のトップバッターは『SSSS.GRIDMAN』。1993年に放送された円谷プロダクションの特撮作品『電光超人グリッドマン』を原作とするアニメーション作品です。
 ちなみにSSSS.の部分は読みません。アメリカローカライズ版の『Superhuman Samurai Syber Squad(スーパーヒューマン・サムライ・サイバー・スクワッド)』の略称もSSSS.ですが、本作においてはその意味ではありません。どういうことかは(致命的ではないけれど)ネタバレになっちゃうので、本編で確かめて。

 円谷プロの作品と言うと『ウルトラマン』シリーズがひとえに有名です。近年は新作が毎年放送されているんですね。子供の頃はそれなりにテレビに釘付けになっていましたが、現在はそれほど。特撮から深夜アニメにシフトしたというところでしょうか。

 そんな私ですが、この作品を観ていたら、いつからか距離を置いていた特撮作品に対するワクワク感を思い出した…そんな気がします。
 お話自体はオリジナルで、いかにも深夜アニメというシナリオなのですが『電光超人グリッドマン』を全く知らない所謂新規勢の私でも楽しめた作品だった、というのが全話観た後の感想です。

 そういや、円谷プロが関わっているアニメ作品って結構多いんだね。私は『ザ☆ウルトラマン』しか知らなかった。観たことないけど名前だけ。

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SSSS.GRIDMAN (2018年10月-12月)

アニメーション制作:TRIGGER
監督:雨宮哲
シリーズ構成:長谷川圭一

<TVアニメプロモーション映像>

<☟原作の特撮もどうぞ>
電光超人グリッドマン (1993年4月-1994年1月)

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【ストーリー】思い出してくれ、君の使命を!

 主人公・響裕太(ひびき ゆうた)はクラスメイト・宝多六花(たからだ りっか)の部屋で目覚めた。今までの記憶を全て失った状態で…。
 混乱する彼の頭に響く、彼の名前を呼ぶ謎の声。声のする場所へ向かうと、そこには一台のジャンク(古いパソコン)が置いてあった。画面にはハイパーエージェント・グリッドマンと名乗る存在が映っており、裕太に告げる。

 「思い出してくれ、君の使命を」と。

 状況を飲み込めないまま、裕太は六花、友人の内海将(うつみ しょう)らとツツジ台にて日常生活を送ることになる。そんな中、街に怪獣が突如出現したのだ。裕太の頭に再びグリッドマンの声が響いた。ジャンクが置いてある宝多家に辿り着くと、成り行きで裕太はグリッドマンと合体する。

 間もなくしてツツジ台にもう一体の巨影が現れる。
 実体化したグリッドマンが、迫り来る危機から守るために…。


 1話のあらすじはざっくりこんな感じ。
 グリッドマンや一部の怪獣を除いて、登場するキャラクターとかストーリーは本作オリジナルのもの。ただ、3人組で異変に立ち向かうとか、敵ポジションのキャラクターとか特撮版を彷彿とさせる設定もあるようで。
 先ほども述べたように特撮版は観たことがないのであまり滅多なことは言えませんが、この記事は新規で入った勢としての感想として読んでくださいね。


 本作はヒーローものだからといって、常に戦いに臨んでいるわけではありません。高校生である裕太達は、いつもはクラスメイトと共に日常生活を送っています。割と青春をエンジョイしています。ひょっとしたら、現実の世界以上に。
 グリッドマンと怪獣という存在さえいなければ、至ってありふれた世界の出来事を描いているようにも見えます。ここんところは後々のパートでも紹介するんだけれど、日常風景の描写がいかにも等身大で素敵

 が、怪獣が現れると一気に雰囲気は変貌。街はどんどん破壊されていき、そこに住む人々も容赦なく巻き込まれていく。このままではいけないと、裕太達がジャンクに集まることでグリッドマンが実体化し、怪獣とバトルを繰り広げるお待ちかねの展開へと突入します。

 第1話ではイニシャルファイターという姿で実体化しており、一部機能が制限された状態で怪獣と戦うことになります。ジャンクとグリッドマンは連動しており、いきなりジャンクが火花を撒き散らして煙を吐くというピンチに陥りますが、六花と内海によるサポートもあって何とか勝利。1話以降も「グリッドマン同盟」こと、この3人組が集まって立ち向かうことが重要となっています。

 第2話でジャンクのパフォーマンスが向上したことにより、上の赤や青を基調としたカラーリングに変化。特撮版よりもメカニカルなデザインになっています。特撮版も本作もどちらもカッコイイですね。
 お約束の変身アイテムも。裕太の腕に装着された「アクセプター」を使いジャンクの前で「アクセス・フラッシュ!」と叫びながらボタンを押すことでグリッドマンに変身。特撮版ではウイングパーツが展開するようですが、このアクセプターにはそのギミックが付いていません。ここらへんの違いをよく覚えておくといいかもしれませんよ。

 次々にアシストウェポンの人間態であるキャラクターが登場することで、グリッドマンはより強力な存在になっていきます。1クール作品なので最強フォームが中盤辺りで登場するハイスピードっぷりですが、新しいフォームで怪獣をやっつける時のワクワク感が懐かしさを呼び起こします。ていうか最強フォーム、ただのロボットじゃねぇかコレ。でもそれがいい。
 ちなみにアシストウェポンは4人登場します。4人揃って「新世紀中学生」。…元ネタはあるけれど、別にあの作品じゃないよ?

 なお、グリッドマンもウルトラマンのように制限時間があります。特撮版だと10分と決められていますが、こちらの作品では不定。実体化する際のスケールで活動時間が変化し、アシストウェポンも登場しますがジャンクの処理能力に応じた調整をしないとジャンクそのものが固まってしまいます。なかなかに難しい。


 んで、グリッドマンの言う使命って何なんやと気になるかもしれませんが、その答えは案外あっさりと見つかるかと思います。何せ本作の敵が一体誰なのか、第2話で早速明らかになるので。意外にも引きずらなかった。
 特撮版では主人公・翔直人の同級生である藤堂武史がグリッドマンの宿敵であるカーンデジファー様と手を組み、自身に嫌なことが起こる度に怪獣を実体化させて荒らし回るというものでしたが、本作でも大体そんな感じです。狂気性で言えば本作の方が寧ろ上回っているかもしれない。

 第1話から「怪獣とのバトルの後に何もなかったかのように修復されている街」という特撮だと割かしスルーされそうな現象に言及するなど、この世界には色々と謎が潜んでいるのですが、これらは敵キャラクターとの関わりが強いです。うーん、ここら辺はネタバレ成分が多いからどう書けば良いのか困る。裕太達の住む世界で一体何が起きているのか、どういう原理なのか…。それらはじっくりと少しずつ明かされていくので、あぁだこうだと想像しながら観てみると楽しめるかと思います。

 それともう一つ、怪獣も全部が全部ぎゃおーす言いながら街をぶっ壊していくのではなく、アシストウェポンのように人間態と知性を持ち、グリッドマンに対峙するキャラクターも登場します。1回限りの出演ではないこのキャラクターが、物語の進行と共にどのように変化していくか。そこにも注目です。


 面白かったです。毎回色んな怪獣が登場して、グリッドマンがそこに駆けつけては重量感あるバトルを展開する、というのは昔ちょっとだけ観たウルトラマン…というか円谷プロ作品そのものであり、今この年齢で観ても楽しめるんだと実感しました。うんまぁ、それだから終盤のとあるセリフがグサッと来たんだけれど。
 この世界における謎も、答えが明かされた時は「なるほど」と唸らされる部分もあって。私は提示されている謎にあれやこれや考えを巡らせるのが結構好きなタイプであるため、そこに上手いこと嵌ったというのもあると思います。
 シリーズ構成は平成ウルトラマン三部作や『ウルトラマンネクサス』の長谷川圭一氏です。話が重くなるのかな~? とも思ったけれど杞憂でしたね。いや、全然重くないわけじゃあないですよ。シリアスな部分はちゃんとシリアスやってます。

 賛否別れそうな部分についても言及しておきましょう。
 まず『SSSS.GRIDMAN』が『電光超人グリッドマン』の続編的ポジションに(結果的には)なっていること。TRIGGER作品らしくエピソード内に円谷作品について言及されていたりオマージュと見られる描写が存在しているのですが、それとは別にして、本作の設定に『電光超人グリッドマン』由来のものが含まれているんですね。
 この『よもやま To-Review-To』では基本的に続編は最初から紹介しない場合は取り上げないスタンスでやっていますが、『SSSS.GRIDMAN』がそういうものだというのは中盤まで全然気づいていませんでした。すみません。ほぼ新作扱いして良いとは思うけれど。

 スタッフによると、本作はファンに向けては『電光超人グリッドマン』に対する制作陣からのアンサーであり、新規勢に向けては『電光超人グリッドマン』への足掛かりとなる作品だとしているようです。
 意図的に特撮版と共通化させている設定などがありますが、それはあくまでも原作を知っているとより楽しめる要素として働いていると考えられます。本作もどちらかと言えばそうした向きが強いのですが、一見だと「?」となるシーンがあるかもしれません。特に最終回。
 ファンサービスで終わるのではなく、それがストーリーの本筋に関わっているとなると余計に「どっから出てきたんだその設定!?」となって、「原作を知っているとより楽しめる」のではなく「原作を知っていないと楽しめない」ものへと変化してしまうかもしれませんね。ただ、基本的にはここから入っても十分面白く観れる作品だと思います。

 あと、最終回に関連して設定・世界観の回収しきれていない謎。
 ここが考察の余地を残していると取るか説明不足と取るかは人に依りますかね。私はストーリー系の作品に対しては「着地点がここであると定まっている」ことが重要だと思っているので、着地してくれれば後は世界を広げるための要素として見ているのですが、この作品は最終回になって言及されたことが結構多く「あと1,2話あればその辺についても解明できたのでは」と引っかかりを覚えるかもしれません。

 「詰め込み過ぎ?」と言われればそうかもしれないし、それらに関してただ「多くを語らない」だけであるとも考えられます。本作のストーリーの本筋は、「敵ポジションのキャラクターを『退屈から救いに来た』」といったところでしょうか。そこを軸にすると、理解するために必要な描写は揃っているように見えます。
 あとは…オチ? かな。あれはこの作品におけるテーマ(あるいはメッセージ)を込めた演出だと思いますが、皆さんはどう捉えましたか。

 特撮ファン、あるいは25年前の『電光超人グリッドマン』を観ていた直撃世代は勿論、普段特撮に全然触れていない人やアニメ媒体なので観てみようと思った人でも、あらゆる人が楽しめる作品になっていると思いますよ。
 特撮版かぁ。コンピュータが一般家庭に普及する以前からデジタルに着目していたのって、よくよく考えたら凄いことだよね。一緒に観ると+αで楽しめるんじゃないでしょうか。

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【作画・劇伴等】特撮の世界をアニメに落とし込む

 この作品で一番魅力に感じたのは静と動の雰囲気
 言うまでもなく静は日常パート、動は特撮パートのことです。
 本作の劇伴として、『新世紀エヴァンゲリオン』で知られる鷺巣詩郎氏を起用。…していますが、日常パートではほとんど流れません。環境音が漂っているぐらい。

 なんというか、すごく自然。キャラクターの会話の演技も自然です。第四の壁に向いているかのような、どこか取り繕っている感じがない。あくまでもフィクションの世界なんだけれども、そこにも日常が確かに存在しているという本作の雰囲気づくりに一役買っています。この辺は同時公開されていたボイスドラマを聴くとより分かりやすいかもしれませんね。各エピソードは他愛もない会話ですが、それだけに本作らしいと言えます。

 あと、敵ポジションのキャラクターの演技も、それが持つ狂気性と同時にある不安定さを見事に演じ切っています。もしかしたら演者の名前で誰がそれなのか分かっちゃうかもしれないね。

 何はともあれ、そうした丁寧でリアルとも映る日常があるからこそキャラクターへの愛着も湧くのだと思います。ヒロインである宝多六花やクラスメイトの新条アカネはキャラクターデザインそのものでも人気が高いようですが。実際可愛いし。
 無駄だとか印象が薄いとか、そういったキャラクターが殆どいない。…うん、先ほど紹介したボイスドラマ、マストアイテムじゃないでしょうか。本筋ではないけれど、あの時にあのキャラクター達はどんな様子だったのか、どんなことを話していたのかが分かります。キャラクターのこともより深く知れるので一石二鳥。基本コメディなので肩の力を抜いて聴けるので、今からだったら円盤を購入してくださいね。限定のも付いてくるそうですし。

 そして怪獣が現れると、オーケストラによる重厚なBGMが鳴り響きます。ここは流石の鷺巣氏。「世界が何者かに侵略されてる」異変への緊張感が漂ってきます。そして本作を語るのに欠かせない、OP主題歌である『UNION』。歌うのは同時期に『ウルトラマンR/B(ルーブ)』でも主題歌を担当したオーイシマサヨシ氏。2018年の彼は絶好調でしたね。何回紹介したっけ、このブログで。
 格好いいOP映像と共に流れる爽やかなメロディは、この特撮パートでも度々使われています。いわゆる勝ち確BGMというやつですね。ストーリーにマッチした歌詞も印象深いものがあります。

 重量感を伴うグリッドマンと怪獣の格闘戦は、手書きと遜色ない3DCGの融合で描かれます。昔観ておぼろげながらに覚えているバトル、その感覚がアニメで再現されているかのようなクオリティの高さ。今ってここまで表現できるようになったんだなぁ…。怪獣も着ぐるみが動いているような感じ。 え?中の人などいない? でも本作の場合ゲフンゲフン…。
 そしてとどめに「グリッドビーム」。25年前と同じ緑川光さんによる必殺技。臨場感も相俟って堪りません。

 アニメーション制作はこのブログでは『ダーリン・イン・ザ・フランキス』を取り上げているTRIGGER。作画は文句なしです。
 特撮パートのグリッドマンとアシストウェポンの合体シーン等もそうですが、日常パートでも結構作画枚数いってるように見えるシーンが織り込まれていて。何気ないシーンでも先述した自然さのおかげで観返したくなる部分が多いです。
 あと、この作品で目にすることの多い「電柱」には電柱専門の作画を置いているようで。ディティールへのこだわりはいかにもTRIGGERらしい。

 そうそう、TRIGGERは2015年にも「日本アニメ(ーター)見本市」にて『電光超人グリッドマン boys invent great hero』を公開しています。

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【総括】いつの日も「夢のヒーロー」は素晴らしいものですね

 好スタートですね。評価はAMAZING。画像のレイアウトはこんなんでいかがでしょうか。視辛かったらまた別のを考えるか以前のものに戻すか、とりあえず今回はこれでいって後日検討します。

 日常シーンも特撮シーンもクオリティが高く、見どころが豊富にあるというのがポイント。先述したように最終回の「分かりづらさ」に引っかかるかもしれませんが、物語の本筋を追っていくにあたっては然程障害にはならないはずです。
 アニメであるということの良さも、特撮ならではの良さもうまく一つの作品として落とし込んでいるため、老若男女問わず楽しめる作品に仕上がっているのではないでしょうか。25年前の『電光超人グリッドマン』を観たことのない人でも、本作を通じて興味を持つことができたのであればこの作品の存在意義と言うのは非常に大きいと思います。


 ということで1発目はこれにて。うわー、スクロールバーが小っちゃくなってる。これは単独にして正解でしたね。あと7作品、大体こんな感じになるとは思いますがお付き合いの程よろしくお願いします。

〈了〉

Ⓒ円谷プロ Ⓒ2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会