Review-#032 『2020年春アニメを観たので感想を書く』(上)
製作の皆さん本当にお疲れ様でした
はー、何とか書けたな。せめて月イチでも、と心掛けているとはいえ書くというモチベーションは確実に下がってきている。どうにかして打開しないと夏が一層厳しくなりそうです。コンスタントに新しい記事を公開できている人を見習えってんです。
さて、今回は9作品を取り上げますよ。最初のうちは久々に2桁行くかなと思っていたんだけれど、残念ながらコロナ禍で延期(今期で仕切り直し)した作品が幾つかあったのでこんな感じで。上中下編の3分割でお送りいたします。
無事に全話を放送できたといっても、製作は非常に大変だっただろうなぁと思います。3ヶ月間観させていただいてありがとうございます、と感謝しつつ紹介していきたいです。書いた後に「コレ本当に紹介できてる?」となるのは秘密です。
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<このページのお品書き>
① かぐや様は告らせたい? ~天才たちの恋愛頭脳戦~
② イエスタデイをうたって
③ 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…
NEXT》
(『かくしごと』
『球詠』
『波よ聞いてくれ』)
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かぐや様は告らせたい? ~天才たちの恋愛頭脳戦~
(2020年4月-6月)
原作:赤坂アカ
アニメーション制作:A-1 Pictures
監督:畠山守
シリーズ構成:中西やすひろ
<☟今回は小説版をば。あぁ……!! サブタイは要らない子!!>
かぐや様は告らせたい 小説版 〜秀知院学園七不思議〜
( JUMP j BOOKS刊行・2018年9月24日)
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次は「告らせたい」が要らない子になりますねこりゃあ…
今期の感想としては、状況の変化も相俟って作風が変わったなってのが強いです。そこが評価の分かれ目でもあるのかも(作品は楽しませていただきましたが)。
恋愛頭脳戦()よりも踏み込んだ駆け引きの描写が増えたことで、真っ当な(?)ラブコメとしてはパワーアップしている感じ。勿論今期も恋愛頭脳戦()、なくはないんだけど…明らかにかぐや様がアホになっていて早坂に同調せざるを得ません。成程、これは生徒会コント劇場だ。個人的にはコメディは第1期の方がキレがあって好きなんだけどね…。
1年経ったこともあってか、一段とギアの掛かった生徒会メンバーの皆さんの演技も笑いを誘います。藤原書記はシャミ子っぽくなったけど、シャミ子が悪いんだよ(シャミ子は悪くないよ)。
良く言うと演技がギャグを引き立てている、悪く言うとそれ頼みの力押しギャグが増えている、観ていて(聴いていて)そんな風に感じたりして。
今期では新キャラ、伊井野ミコ(いいの ―)が登場。前半は生徒会選挙編のキーキャラクターを務めるも、それが終わった後半ではほぼオチ要員に。便利なやっちゃなー。
前半は生徒会選挙編、後半は石上君たち後輩のエピソードが中心。そういうことで途中で茶化しの入らないシリアスなエピソードが多めです。1期のようなコメディ主体の作風が気に入っていた人には不満も出るかもしれないけれど、それぞれの抱えているものが軽々しくない以上そこはちゃんと真面目に描かないとね。石上君の過去をちゃんと知れたことで、1期での彼の態度にも納得。
今期もOPは超大型期待の新人アニソン歌手の鈴木雅之氏。一説によると『星獣戦隊ギンガマン』の希砂未竜氏以来とも言われているそうです(ちょっと性質が違うか?)が、アニメ主題歌2曲目の『DADDY! DADDY! DO! feat.鈴木愛理』もアダルティなラブソングに仕上がっています。
そういやシャネルズ(ラッツ&スター)40周年おめでとう! 来年はソロデビュー35周年だね! …はて、何のことやら。
今期もなんだかんだ面白く拝見させていただきました。多分3期以降も作られるんじゃないかと勝手に思い込んでいますが、本作で描かれた内容によって今後更にお話が広がっていきそうな感じ。
その為の第2期だとしたら、これからの四宮&白銀&生徒会役員共の行方がより一層気になりますね。
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イエスタデイをうたって
(2020年4月-6月)
原作:冬目景
アニメーション制作:動画工房
監督・シリーズ構成:藤原佳幸
<☟原作コミックはこちらから>
イエスタデイをうたって
(ビジネスジャンプ→グランドジャンプ掲載・1998年~2015年)
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「昨日」をうたえない今日を生きる人のために
1998年に連載を開始して、2015年に完結した『イエスタデイをうたって』。そんな作品が令和の時代にアニメ化とは、「今頃?」と言うべきか「今だから」と言うべきか。
凄いな、ここまでストレートなラブストーリーだったとは思ってもみなかった。うわー、登場人物皆めんどくせーのばっか。特に森ノ目榀子(もりのめ しなこ)、お前は文字を出すのすら面倒なんじゃい!
若さ故の過ちと惚れた弱み。もどかしいったらありゃしない。でもその雰囲気が良いのです、毎回グサグサ心に突き刺さってくるけどさ。各々の演技もこれまたグッと来るわけで。晴派か榀子派かきっぱりと分かれそうだな(もう分かれてるみたいだが)。性と年代別でアンケート取ってみたい。
配信限定エピソードもあるって、おいおいこれ重要なシーンじゃねぇか! 分からない方は円盤を買いましょう。
しかしいちいち小物にノスタルジーを感じますな。分厚いウォークマンとか使い捨てカメラとか安全ピンピアスとか。古い作品が現代でアニメ化する時って何故か時代設定も現代に合わせがちだけれど、原作そのままを貫いて隔世の感を出したのは正解なのかも。
まぁ全部が全部ということでもなく、未成年喫煙は流石に無理だったようで…別にいくらでもふかしてくれたっていいのに、お話なんだから。そこはちょっと現代に引き戻されるような心地がして興醒めする。
近年の動画工房らしくない雰囲気とはいえ、動きの細かさなどは折り紙付き。背景も素敵。春期からのテレビ朝日の深夜アニメ枠『NUManimation』の第一作ってのも、監督含め制作陣側で作品のファンが多いってのもあるんだろうけど、とても気合の入った作り。
OPは挟まずスタッフクレジットが流れるEDのみ。作風と相俟ってドラマを観ているような気分。こういうのは今となっては実写にしづらいのかね?
ただ終わってみたら「1クールじゃ足りなかったか」…っていうか「2クールでやって欲しかった」案件でしたね。同じところをグルグル回りつつも進んでいく群像劇というのが本作の魅力だと思うのですが、締めくくりのためにブレーキを掛けたら慣性ですっ飛んだってとこ。キャラクターの描写のバランスが悪めで、終盤の唐突さが強調されてしまったのも見過ごせない。総じて榀子が悪いよー、榀子が(雑)。榀子が悪女ってことでFA(雑)。
穏やかな雰囲気重視の作品だと思いますが、それを踏まえて視聴すると楽しめるのではないかと。
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乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…
(2020年4月-6月)
著:山口悟
イラスト:ひだかなみ
アニメーション制作:SILVER LINK.
監督:井上圭介
シリーズ構成:清水恵
<☟原作ライトノベルはこちらから。イラストを担当するひだかなみさんによるコミカライズ版も連載中です!>
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…
( 一迅社文庫アイリス刊行・2015年8月25日~[既刊9巻])
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今度の「なろう」は人間に転生しきれなかった野猿のお話です
タイトルなげぇ! で、何となーく察したかと思いますが、そうですいわゆる「なろう」系です。最近のSILVER LINK.にブームでも来てるのか? 公式略称は「はめふら」だけど、「BAKARINA」でも「野猿令嬢」("やえん"じゃなくて"のざる"ね)でもお好きなものを。
タイトルだけで敬遠しちゃいけないのは『異世界魔王』(2期おめでとう!)とか『青ブタ』とかで通った道…ってことで観たら、悪くはない作品でしたよ。
ゲームを遊んでいた前世の記憶を取り込んだ主人公・カタリナが、破滅フラグを回避しよう(?)と東奔西走。ぶっつけ本番のシビアなポジション、地頭は良くないし魔法もしょぼいのしか使えない、それでも人の好さを以てして登場人物を次々と墜としていく様は痛快。
主人公は紛うことなきアホガールだけど好感が持てますし、周りも嫌味なキャラがほとんどいないので安心して観られますね。本編には尺の都合上入れられなかったキャラクターの独白がボイスドラマとして用意されているので、セットで視聴するとストーリーへの理解も深まるはず。
ただ登場人物紹介に時間を割いているパートが長めで、ここで築いた繋がりが後々のお話で活きてくるわけですが、「ホントに破滅すんのか?」と言いたくなるユルい雰囲気には肩透かしを喰らうかもしれませんね。
そんなピリッピリとした大層なお話ではありません(寧ろフワッフワ)が、観やすさという点ではCHARM!になるかと。
キャラクターの魅力が全体を引っ張っているといっても過言ではないでしょう。とても「悪役」にも「令嬢」にも見えない、けれど楽しい存在であるカタリナは深夜の清涼剤でした。それだけに緩急の弱さが惜しいというか勿体ない気がしましたね。
私からの判定は以下の通りに落ち着きましたが、「やっぱこの手の作品は主人公に惹かれるかどうかがカギだな」と改めて実感した作品です。悪役令嬢モノのアニメ、これから増えていくのかな? とか思っていたらこちらも2期決定しましたね。おめでとうございます。ただ「これ以上どう広げるんだ?」という疑問はある。
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中編に続きます。よく見たら今回はオリジナル作品が無いですね。『BNA』観ようと思っていたんだけどね。『天晴爛漫!』延期しちゃったからね。夏期は豊富っぽいので頑張って割合を増やそうかなと考えております。
©赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会
©冬目景/集英社・イエスタデイをうたって制作委員会
©山口悟・一迅社/はめふら製作委員会