Review-#006-B ショートレビュー Vol.02 (下)
ということで、まさかの2分割です。でもこっちはそこまで文量が多くない…わけでもないか。右端のスクロールバーでお察し。
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・2018年冬春のアニメ祭りのおしながき
(上)
① ダーリン・イン・ザ・フランキス
② 多田くんは恋をしない
(下) ← この記事はこちら
③ 宇宙戦艦ティラミス
④(おまけ) ???
このページでは『宇宙戦艦ティラミス』とおまけの2作品を紹介しています。後半よりも長い前半はこちらからどうぞ。
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宇宙戦艦ティラミス (2018年4月-6月)
制作:GONZO
監督:博史池畠
シリーズ構成:佐藤裕
<TVアニメプロモーション映像>
<☟原作コミックはこちらから>
宇宙戦艦ティラミス (くらげバンチ連載・2015年10月~)
原作:宮川サトシ
漫画:伊藤亰
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ネタを挟まないと死んじゃう病アニメイション
2018年春アニメ。原作は既読済み。
本作はどういうアニメかと言われれば、確かにロボットアニメ…だと思う。確かに宇宙の二国間で繰り広げられるスペースオペラ…だと思う。作風も何だかとっても硬派な印象をこちらに与えている…と思う。
でも皆さん、上のBlu-rayジャケットとコミックスの表紙を見て何か変だと思いませんか。コックピットの周りに色々散乱しているのが。
大体察せるものと確信していますが、このアニメは間違いなくロボットアニメなんだけれど、どちらかというと半分以上はおおよそロボットと関係のない、しょーもない事が繰り広げられるギャグアニメなのです。
ほら、そこに串カツが見えるでしょう? それは原作・アニメ共々第1話のキーとなる主人公のご飯です。
地球連邦軍のメーン戦艦である「ティラミス」。ティラミスのクルーでは最年少にしてエースパイロットでもある、この物語の主人公スバル・イチノセは集団生活になじめず独り人型兵器「デュランダル」に引きこもり気味。ティラミスの愉快なクルーたちと共に、今日も取るに足らないことで葛藤し続けるのであった…。
アニメ本編は1話10分足らず(厳密には7分間)。原作のことも考えると、ダレないベストな尺設定であると言えるだろう。しかしながら内容が濃く、それでもって非常に下らない。ネタバレが激しいが、具体的にはこんな感じで序盤が進んでいく。
・コックピット内で串カツを食べようとして衣やキャベツの千切りとかが散乱する(1話)
・お気に入りのTシャツを後ろ前に着たまま戦闘する(1話)
・宇宙チワワをティラミス艦内で飼いたいと言い出す(2話)
・女性パイロットの専用機で思春期を爆発させる(3話)
・自分の陰毛(cv.中田譲治)と能力で会話する(4話)
・極限状態の中、おかずがないので白米をコックピット及び自分の身体のあちこちに乗せて食べる(5話)
…うーん、下らねぇ。大体最初から最後までこんな感じなので、この時点で嫌な予感がした人は観ない方がきっと幸せになれると思う。逆に言えば、最初から最後まで暗い雰囲気になかなかさせてくれないので、ギャグが合えば肩の力を抜いて楽しめる作品でもある。
日常的ではない戦闘やロボットシーンでも結局下らない展開が待っている。一見シリアスなムードが漂うもすぐに(あるいは次の回で)ぶち壊しにされる。とまぁ、まさにギャグのオンパレードなロボットアニメである。念のためにもう一度言うとロボットアニメである、これは。
原作を読んでいた時に思ったのが、これだけのしょーもないギャグばかりを詰め込んだ作風と伊藤亰氏による本気の作画の無駄遣いが余計にシュールで笑いを誘うということ。伊藤亰氏にとってはこれが初の単行本化作品、らしい。それでいいのか。
本人曰く「描いたことのないものばかりでヒヤヒヤしている」んだとか。そりゃあなぁ。まさかロボットものでいきなり串カツを描くだなんて思いもするまいよ。しかもあんな無駄に高い作画で。
アニメーションを制作しているGONZOはかつて『フルメタル・パニック!』(第1期)や『超重神グラヴィオン』や『ぼくらの』など、色んなロボットアニメで実績のあるスタジオである。
とは言っても10分アニメなのでモリモリ動くわけではない(デュランダルなどは3DCGで動いているので乱れはほとんどない…分かりやすいCG臭な質感がちょっとアレだが)し、演出とかも派手派手しさはないけれどね。予算が予算だからそこは仕方ない。ただやっぱり作画とのギャップが面白い作品でもあるんだから、もっと演出に力を入れたり手描き部分が動いたりしても良かったんじゃないかな。どうでもいいところでぬるぬる動かしてみたりとか。アニメーターさんには酷かもしれないけど。ていうかGONZO、上場廃止してからしばらく経つが経営は大丈夫なんだろうか…利益はちゃんと出してるみたいだけれど純資産額は未だにマイナスだし。
ただその代わりと言っていいかはともかく、声優さんが無駄に豪華。スバル・イチノセ役の石川界人さんをはじめ、諏訪部順一さん、遠藤綾さん、土師孝也さん、新井里美さん、櫻井孝宏さん、江口拓也さん、杉田智和さん…
あとナレーションが大塚明夫さんだし、先ほど書いたように陰毛が中田譲治さん。いや、ホントにキャスト名が「陰毛」なんだってば。
第一線で活躍している声優さんが集まってさぁこれからどんなロボットアニメが繰り広げられるんだと思いきや実際はとんでもないギャグの連発ですからね。脱力感もひとしお。
まぁ、本作で挙げられそうな欠点は普通過ぎる(?)作画と全13話ではメトゥス側のキャラクターをあんまり活躍させられなかったぐらいだし。『ティラミス』のメインであるしょーもないギャグを良質な原作からそのまま持ってきて更に声優さんたちの力でお笑い増しなので、原作ファンも本作のノリに魅かれた視聴者も最初から最後まで楽しめる出来だと思うよ。
そんな感じで本作の評価はGREAT。原作はWEBマンガサイト『くらげバンチ』にて連載中です。最新話及び直近のエピソードが無料で公開されているので、まずはここから入って自分の感性とマッチしているかを確かめてみるのがいいかと思います。
しかしコレを観ていると、他のロボットアニメも描写していないだけで裏ではこんなことやっているのかなぁと思ったりもするのです。もっとも、この『ティラミス』だって舞台背景はシリアスなのよ。強烈すぎるキャラクターとギャグの所為で忘れがちなだけであって。
最後、切ない感じの回で締めくくったと思ったら『宇宙戦艦ティラミスⅡ(ツヴァイ)』がこの秋からやんの? このアニメで2期を? …あれ、意外と凄かった、このアニメ?? じゃあ10月からまた観ないとね。そんでもっていつかレビュー記事上げます。きっと。コックピットで巻き起こる、爆笑の渦に再び飲み込ませてくれることを期待します。
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つり球 (2012年4月-6月)
制作:A-1 Pictures
監督:中村健治
シリーズ構成:大野敏哉
<TVアニメコマーシャル映像>
<☟ノベライズ版もどうぞ>
つり球 (文庫ダ・ヴィンチ・2012年8月10日発売)
作者:大野敏哉
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SF(青春フィッシング)SF(サイエンスフィクション)
ということでおまけは2012年春アニメの『つり球』です。いわゆるノイタミナ枠です。もう6年前なんだね、このアニメ。
お話としては、「他人とのコミュニケーションが苦手な高校生、真田 ユキが引っ越し先の江ノ島で出会った宇宙人と名乗る謎の少年、ハルに無理やり釣りに誘われ、釣りを通して自分自身を変えていく」という感じ。ノベライズ版が出ているけれど、これは『多田恋』と同様にオリジナル作品。ていうか今回紹介したやつは『ティラミス』除いて全部オリジナルアニメだね。別にショートレビューではどっかしらで共通点を見出さなきゃいけないルールがあるわけじゃないんだけれど…
釣りなのに宇宙人とはなかなか妙なことになっているのだが、あらかじめ言っておくとこの物語は「釣りが30%、SFが30%、青春が20%、あと20%は江ノ島踊り」で構成されている。私が全話観て分析した結果です。信用できねぇな。
そういうわけで少年誌で掲載されていそうなガチの釣りアニメでもなければ、超人どもが集まる「釣り」という名の別のスポーツファンタジーアニメでもない。その辺を念頭に置いてこのアニメは視聴すべきだと思います。逆に言えば、この作品は基本的に結構ゆるい。勿論、全く釣り知識が無くても楽しめる。
とか何とか言ったが、ちゃんと普通の魚を釣る描写はある。私は本格的な釣りの経験はないので詳しいことは分からないが、釣り監修の人を置いているので経験者から見ても不自然な点はそう見当たらないとは思う。高田晃氏、てっきりその手のプロかと思いきや色んなアニメを担当している原画マン・アニメーターだったのね。別の分野のプロだった。同じA-1 Picturesということで『ダリフラ』にも参加しています。
このアニメの本筋に関わる4人の男子高校生(一部怪しいのもいるが…)はそれぞれ事情を抱えていることもあって青いところが多い。時に考えていることがすれ違うことで衝突することもあるのだけれど、その中でユキはそれまで経験に乏しかった人との関わりを、ハルは人間の価値観を知り成長していくことになる。
さわやかな青春。ハルは序盤のテンションや態度にイラつかされてしまうかもしれないけど、まぁ宇宙人だしなぁ。ハルはユキを釣りに誘った後同居するのだが、ユキの祖母であるケイト(フランス人、ユキは日本人とフランス人のクォーター)の言葉を汲み取ってしっかり前進しているし。最初は鬱陶しく思っていたユキも何だかんだ快闊なハルに影響されて自分の言いたいことをはっきりと言うようになっているので、2人は良いコンビである。
何で釣りにSF? というのは、1話冒頭で語られる江ノ島の伝承に関わっていいる。全体のストーリー構成は8話まで釣りの方がメイン、9話以降がSFメインという印象。勿論、完全に釣り要素が大気圏を突破したわけではなく終盤でとんでもない強敵(?)を釣ることになるのだが…。
まぁメインの4人の高校生に共通の趣味を持たせるために「釣り」という題材を選んだところもあるとは思う。
人類と宇宙人、そして宇宙人を追う謎の組織。江ノ島を舞台にお前らどういうこっちゃと突っ込みたくなるけれど、色々混ぜ込んだ割には意外と浮いた要素が無くまとまっているのがポイント。最終回は色々詰め込み過ぎたこともあって後半の展開で端折りに端折った感が否めないけれど、全体で見れば釣りを通じての友情・青春・成長はしっかりと描写されている。
彩色が引き出す独特の雰囲気やタッチもこのアニメならでは。あと栗コーダーカルテットが音楽を担当していてすごく癒される。キャストの方は、現在色んなアニメで主演を張っている逢坂良太さんが本作で初出演。その他入野自由さん、内山昂輝さん、杉田智和さんを中心にサイドを平野文さん、加藤英美里さん、冨永みーなさん、古川登志夫さんなどで固めている堅実さ。
監督の中村健治氏は『モノノ怪』『空中ブランコ』『ガッチャマン クラウズ』などでも有名ですね。シリーズ構成の大野敏哉氏も後に『ガッチャマン クラウズ』で共にアニメの制作に携わっている。
あとOPアニメで登場人物が踊る。OPで踊るアニメは面白いのが多いね。OPはフジファブリックの『徒然モノクローム』。そういえば志村正彦氏が亡くなって何年経ったんだっけ…。時の流れは早いものです。
評価はGREAT。知名度はどのぐらいあるのかは分かりませんが、雰囲気だけでなく青春ストーリーも楽しめるアニメとしておすすめできる1作。これを観て釣りに興味が沸いた人もいるんじゃないでしょうか。あと江ノ島に行ってみたくなったりとか。…まぁ、未確認生命体が釣れるかどうかはまた別の話だが。さぁ皆さんもご一緒に、「えの! しま!! どーん!!!」
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ふぅ。4作品取り上げるだけでもこの文章量になってしまいましたね。纏め書きができないとも言いますが。でも今後も、1ページ分のスクロール量を少なくするために今回みたいに分割したほうがいいかもしれませんね。ショートレビューと言いつつ。
各期で放送されるアニメの数はとても多いですからね…正直3(+1)作品でもボリュームが少ない、というか書くんだったらもっといろんなものを観ろよ、と言われそうではあります。ま、このタイミングで載せるにはちょっと時期が早すぎるアニメも観ているというのもあるんですけど。
でも今回取り上げたものと現在観ているもの、どれも視聴時の体感速度が速い。『ティラミス』だけは元々短いけれど、全体的に観入っていました。そういった意味では観る本数が少なくても充実はしていたかな。「あれ、もう30分過ぎたの? 速くね?」という感覚に浸れるアニメは良いと思います。
さて、もう夏アニメも始まっていますね。もしかしたら10月あたりに夏アニメと春から2クール分やってるアニメの感想を書くかもしれない。とか言ってズルズル引き摺って更新が遅れるかもしれませんが、大して期待せずにお待ちいただければ幸いです。
ということで、また次回。
《了》
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©宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会
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