絶叫!アタッシュケースの秘密!!
皆さんには秘密があるだろうか?
いや、別に今言わなくてもいい。どうぞ、胸にしまっていて欲しい。
勿論、こんな私にも秘密がある。
今日はそんな話だ。
突然だが皆さんはインタビューをされたことがあるだろうか?
そもそも、インタビューとは気になる人間にするものである。たとえそれがどこのうまのほねとも知れない一般人だったとしてもだ。
インタビューする側は「こいつ面白そうだな」と見分ける嗅覚や経験を持っているはずだ。だから、街頭インタビューなどで声を掛けられるのは「面白そうな人」だ(多分)
これまでのnoteを見てきてくれた聡明な読者諸君はすでにお分かりであろうが、私は別に面白い人間ではないし、魅力あふれる人間でもない。
コンビニの肉まん一つ買うことも大冒険なほど不器用な人間なのだ。
だから、東京に住んでいたときも渋谷でやたら滅多にやっていた各局のインタビューに引っかかったことは無い。(まあ、あんなものは引っかからない方がいいのかもしれないが)
しかしそんな私でもたった一度だけインタビューされたことがある。
高校・・・・・・たぶん、二年ぐらいの時だと思う。
先ほど言ったように、もしインタビュアーが外見や風体で面白いかどうか判断しているのだとしたら、この時期の私は輪を掛けて酷い有様だった。
学校では居場所がなく、それまで唯一のアイデンティティーだった勉強が崩壊し、底辺を這いつくばり、うんこに集った蠅にさえコケにされる有様。周りに起こること全てが何の面白みも感じられず、毎日その夜どうやって眠りにつくかを考えて過ごしていた。
・・・・・・っと言ってしまえば、嗚呼かわいそうな御仁であるぞ、と哀れんでくれる心優しい方がいらっしゃるかも知れないが、ただ単純に寝不足で無気力になっていただけだ。(勉強云々に関しては入学1ヵ月後に諦めていた)
しかしそれでも、表情や雰囲気はとても社交的とはほど遠かった。
その日、私はそれでも辛うじて話をしてくれていた数少ない友人と帰宅途中だった。
最寄りの駅までたどり着いた時、一人の男性に声を掛けられた。
「すみません。〇〇新聞ですけど、少しお時間よろしいですか?」
無論、それは私の隣にいた快活で身なりの整った友人に向けられた言葉であった。
「秘密にしていることって何かあります?」
なんだその質問は。
秘密にしていることを今ここで言ってしまったら、それは秘密ではないではないか!
矛盾。
だが、よくある質問だ。
友人はうーんと首をひねりながら何かを思案している。
ここで話は大きく変わるが、当時私はAKB48グループにはまっていた。
最初はただ仲のよかった友人がはまっていたというただそれだけの理由で曲を聴いたり、メンバーの名前を覚える程度だったのだが、だんだんと熱が入ってしまうのが悪い癖で、思春期のまだ目覚めかけない性欲云々もよい可燃材となって友人が飽きてしまってからもたった一人で追いかけていた。
懐かしいのは当時金曜日の夜やっていたAKB48のオールナイトニッポンだ。(今もやってんのかな)
中3の夏頃から聞きはじめ(当時、なぜか私の中でラジオを聞くのがかっこいいという謎のブームがあった)高校へ進学した後もずっと聞き続けていたこの番組。
純情ボーイで、夜は9時就寝というあんまりなルールのため香取慎吾の西遊記をわざわざVHSに録画してみていた私からすれば(いや、流石に中3の時は9時就寝ではなかったか・・・・・・)夜中の1時から始まり、丑の刻を通り過ぎ、百鬼夜行もお開きになる午前3時までやっているANNはあまりにも刺激的で、深夜という異様なテンションの中、小さな箱の向こうから聞こえてくるかわゆい女子の声にどうとも処理しきれない不思議な感情を弄ばれていたのだ。
金曜日といういくらでも夜更かししてもいい時間にやっていたのもよかったのだが、高校になり土曜補修が始まると不眠のまま登校し、学校で寝るというのも今となってはいい経験である。
金銭的には世に言うドルヲタの方々にも遠く及ばないが、少ないお小遣いでCDやグッズを集め、お布施をしていた。
しかし、これが思春期の難しいところで、この事実が親兄弟に知られてしまうことは一生の不覚と思い、さも隠れキリシタンのようにテレビで彼女たちが映れば「みんな顔一緒じゃん」と笑ってみたり(得てして興味のないものは同化してみえるものなのだ)、「あー、アイドルとかあんま興味ないなぁ・・・・・・名前も覚えられないし」と笑ってみたりもした。
↑現代に生きる隠れキリシタン
特に私は女性に無頓着なつまらない男として家では通っていたので、CDやグッズがばれてしまうのは非常にまずかった。
私も健康な男子高生のはしくれとして、007もビックリな裏ルートや闇の売人(中高の頃にはこーゆー奴が一人はいるのだ)からエロ本やアダルティなビデオを数点所持していたが、そちらの方は別段隠す気も無く、本棚に平然と混ぜていた。
むしろ、このエロ本などよりもアイドルグッズが見つかる方が私にとっては死活問題だった。
一度バレてしまえば、内メカゴジラ(内弁慶よりも強いヤツ)としての私の地位は一瞬で揺らぎ、嘲笑の的になる。学校ですら居場所が無いのに、家すら奪われれば………考えただけでも恐ろしい。
そんな私が見いだした最強の隠蔽手段、それが………
アタッシュケースだ
ホームセンターで見つけた耐衝撃、耐火性の強固なアタッシュ。頑丈な体に絶対に破られることのない鍵。
↑こんなヤツだったと思う
「これだッ」
私がそう叫んだかどうかは今となっては定かではないが、とにかくこれしかないと思った。このジュラルミンの箱が私の羞恥を閉じ込め、一切の隙も見せず秘匿し続ける。
例え、ケースが見つかったとしても私以外誰も開けることは出来ないのだ!
少ない小遣いを叩き、それを購入すると早速家にあったありったけのグッズを詰め込んだ。
大きいジュラルミンはスカスカで、お前のアイドル愛はそんなもんか、と笑っているようだったが、まあよい、これで私の秘密が露呈してしまうような事はない。
例え、実家が火事となってもこいつだけは残り続けるのだ。
そう、これが秘密である。
当時の私が持っていた数少ない秘密の一つだ。
気が付くと、私は全て洗いざらい話し終えていた。
恐らく気を使った記者が私にも質問したのだろう。
頭の先からつま先まで、一つの不足も無く私は秘密をぶちまけていた。
が、別段私はしまったとも思わなかった。だって、こんなくだらない話を記事にして乗っけるほど世の中は暇ではないはずだ。
いや、どうやら世の中は相当暇だったという事を私は1週間後に知ることになった。
何気なく開いた新聞の一ページ、流石に名前は伏せられていたものの、私の秘密が紙面にデカデカと印刷されているではないか!
百歩譲って、私と全く同じ秘密を持っている人間がいるかも………ないだろう。
父がそれを見て笑う。
「こんなことしてるやつヤバいな、そういやモヨヨもアタッシュケース持ってたな?」
PS:結局、この一件でアイドル好きがバレることはなったが、次第に私も惰性で追いかけるようになり、特に隠す必要もなくなったが今だに実家にはアタッシュケースが残っている。
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