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7. 夫に別居を切り出した時のこと

散々現実逃避をした私は、もう一度「子供が欲しい」という気持ちに向き合いました。いろいろな事情が重なり、夫と別居することに。

別居の経緯

ちょうどその頃、仕事で一年間、遠方の部署に異動する話があった。私の会社は良心的であり、通勤時間が極端に長くなる場合には断ることができた。しかし私はこの話に乗ることにした。そして、長時間の通勤ではなく、新しい職場の近くに部屋を借り、そこに住むことにした。

そうした理由には大きく2つある。

一点目に、純粋にキャリアアップのためだ。この仕事のポジションは定期的に交代するのだが、毎回将来有望視された若手が選ばれるという社内の暗黙の了解があった。言わば出世の登龍門のようなものだ。現実逃避のため、仕事に没頭し、同僚との飲み会に明け暮れた結果いただいた話であり、少々自虐的な気分にもなったが、純粋に嬉しかった。

二点目に、冷静に自分を見つめなおす期間にしようと思ったからだ。それまでの人生だって完璧に順風満帆だったわけではないけれど、ここまで心を病むほどの経験は初めてだった。 きっと自分が思っているよりももっと心は疲れいるに違いない。少し離れた場所で仕事に没頭し、疲れた心を癒そうと思った。一人になって、静かに穏やかに自分と語り合おうと思った。

今すぐ子供ができると確約されていたのであれば、断っていただろう。しかし確約どころか、夫との話し合いもこれからである。焦りすぎると良くないということを身に染みて学んだところだ。環境を変えて冷静になるためにもいい機会だと思った。

夫に曝け出す

夫にこの話を伝えた時、あまり驚いてはいなかった。

「行きたいならば行けばいいんじゃない。」

文字にしてしまうと冷たく感じるが、私が本当にそう望むのであれば、そうしなさいよ、と言う意味で温かくそう言ってくれた。

夫がこの頃の私の変化に少しも気づいてなかったはずはない。今までとは違った空気を吸い、別の環境、別の仲間と仕事をすることで、私のためになると思ってくれたのかもしれない。精神的な意味でも、今後のキャリアのためにも。

そして、夫にもこんなボロボロになった私との将来、特に子を持つことについて考えてほしかった。どうやって一緒に歳を重ねていくのか、それとももう終わりにしたいのか、立ち止まって考えたかった。成り行き任せにして後悔するのは嫌だった。そんなことを真面目に考えたり、話し合うのは若い夫婦にとっては恥ずかしくてやってられないのかもしれない。しかし私にとっては今後も夫婦生活を続けるのであれば必要なことだった。

意を決して、別居前に一度ちゃんと話し合う場を持ちたいと夫に伝えた。あえて家ではなく、落ち着いたお店に出向き、話し合った。冷静に落ち着いて話すために、私は資料を作成し、夫にプレゼンした。ここに書くのも恥ずかしいが、そうすることによって理路整然と話せた。

まずは私の気持ちについて、今後どうしていきたいのか、なぜそうしたいのかを話した。事前に調べてきた不妊に関するデータ、体外受精についての調査結果、スケジュール案、予算計画などを説明した。

人によっては可愛くお願いしたり、涙ながらに自分の気持ちを語るのが得意な場合もあるだろう。しかし私にはそれができない。苦肉の策で、自分の比較的得意なプレゼンという形にもっていった。滑稽に思えるかもしれないが、できるだけロジカルに資料を示しながら話した。

その上で、夫からフィードバックが欲しいとお願いした。そうすることが正解だったのかはわからないが、少なくとも私の本気度は伝わり、夫に私の計画が承認(笑)された。

それまで私は、不妊治療は私だけが頑張って時間をやりくりし、痛い思いを我慢、それなりのお金を払って、粘り強くやればいいと思っていた。自分のことばかりで、夫のことをあまりにも蔑ろにしていた。当然夫にも協力してもらわなければならないし、人によっては屈辱的と感じるような体験をしてもらわなければならない。それに気づいた私は、夫に改めて、男性側も大変な思いをすることになるかもしれないけれども、よろしくお願いします、と伝えた。


別居と言うと世間一般にも離婚前提、というイメージが強いし、夫に話す前はそうなるかもしれないと思っていた。話し合った結果であればそれも一つの選択だと覚悟していた。しかし前向きな別居に進む結果となり、まだまだスタートラインに立つ前だが、やっとスタートラインに向かって歩き出すことができるなと思った。

続く

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