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2. 始まる前に終わった不妊治療

結婚し、すぐに始めようとした不妊治療。

夫の思わぬ拒否により、本格的に始める前に終わってしまいました。

夫にフーナーテストを断られる

 体外受精専門クリニックに何度か通い、私の方の検査はだいたい終了した頃、フーナーテストをする段階に来た。フーナーテストとは、指定された日の前日に性交渉を持ち、翌日来院して膣内の精子を調べる検査であり、当然夫の協力なしには不可能である。

夫は快く協力してくれるものと思い込んでいた。ところが、フーナーテストの説明をし、協力を依頼をすると煮え切らない様子の夫がこう言った。

「なんでそこまでしないといけないの?オレ、嫌だよ。」

 信じられなかった。返す言葉が見つからなかった。

夫との温度差

思い起こせば、不妊治療クリニックに通いたいと相談したとき、子どもを持つことについて話したとき、否定や反論はしないまでも、なんとなく興味がなさそうで、聞いているのかいないのかわからない様子だった。あるいはわざと聞いていない雰囲気を出していたのかもしれない。不妊治療について一緒に調べてくれる素振りもなければ、もし子どもができたら、の話に積極的に乗ってくることもなかった。

優しくて頼りになる、いつも私の味方でいてくれた夫が、突然全く何を考えているのかわからなくなり、不安と焦りで他のことが考えられなくなった。

クリニックでの屈辱と突然の終わり

夫の協力は得られなかったが、フーナーテストの予約を入れてしまっていたため、クリニックに恥を忍んで電話をし、わけを話した。会ってお話ししましょうとなった。

屈辱感に似た気持ちでいっぱいになりながら一人でクリニックに行き、通常であれば他人に話すことはない夫とのプライベートなことを、ぼそぼそ赤の他人に話した。そのクリニックは、先生が厳しいことで有名であり、案の定

「うちは体外受精専門のクリニックだから。メンタルケアはしない。時間の無駄なのでそういうことを話し合った上で来てくれ。」

というようなことをかなり厳しめに言われた。そういう方針なのは事前にわかっており、むしろ結果重視のクリニックがいいと思ってそこを選んでいた。なのでそこまで傷ついたり、ショックを受けたりはしなかった。しかし、それは夫に言ってくれよ、とやさぐれ、やつ当たりのような気持ちになった。

待合室で見かけた夫婦が、仲良く小声で談笑している姿が眩しすぎた。涙が溢れてくる。よく不妊治療に上の子を連れてくることの是非について話題になっているが、この時の私は他人の子ではなく、他人が夫と仲良く話している姿を見て勝手に傷ついていた。

私はこの後も、何とか治療を続けようと努力したが、クリニックからは厳しく言われ、夫にはのらりくらり断られ、どうすることもできなくなった。

「私は一体一人で何をやっているんだろう。」

結局そのクリニックにはそれきり、二度と行くことはなかった。

続く

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