僕らのバーチャル放課後逃避行
まだ暖かく、しかしもう二度と動かない少女の寝顔を横に、真剣な顔で複雑な機械の解析を続ける大人達。
わからない。何故彼女はまだ動いている?
逃げ出そう。どこか遠くに二人で行こう。
僕は彼女を連れて学校を脱出する、飛び乗ったバスが走り出す。一緒に遠くへ行きたい、学校にもおうちにも帰らない。絶対だ。
僕たちの小学校では生徒も先生も皆バーチャルサングラスをかけていて、空中に浮かぶ模型や図形を使った授業をする。
サングラス越しでしか姿が見えない「彼女」が転校してきたのは今年の4月。
「彼女」は街から少し離れた大病院の無菌室で、ずっとずっと寝ているらしいと聞いた。世界には彼女のように学校に通えない子供たちがたくさんいて、どうにかして学校に通うための「実験」が行われて、被験体として僕らの学校が、そして彼女が選ばれたそうだ。
あれが海?彼女が指さす水平線には夕日が沈む。近くで見ようか。
僕は降車ボタンを押した。
【続く】