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混沌と愛の国インド、美しき冬のラダック⑦レーの暮らし

 11月29日(火)。この日は、16:00〜18:30(日本時間では19:30〜22:00)にWEBの講座を予定していて、元々遠出する予定もなかったのだのだが、前日にレー近郊の観光スポットであるツェモゴンパやshanti stupaに運良く行けてしまったため、はっきりいってやることは全くなかった。
 旅先で暇することほど贅沢な時間はない。私はのんびり起きて、ひとまず小腹を満たしに、ヌブラ・パンゴンツアー初日に行った、teaとパンが楽しめる路地を探して彷徨い歩いた。
 正確な場所を把握していなかったのと、念のため狭い路地は避けて歩いていたため、なかなか見つけられなかった。彷徨うこと約30分、私はなんとか、暖かな湯気があちらこちらの建物から立ち上る、見覚えのある路地を発見した。
 地元民に混ざり、温かいお茶と焼きたてのパンで一息をつく。Hidden Himalayaの上甲さんからもらった市街地のイラストマップをみていると、「ムスリムのパン屋街」なる場所があることを発見した。午前中で閉まってしまうらしい。パンは食べてしまったが、せっかくなので見に行ってみようと、Google mapとイラストマップをなんとか照らし合わせ、今度はパン屋街に向かった。

道中、あまりに家族間溢れる犬たちがいたので思わず撮影。

 パン屋街とはいっても、簡素な小屋に直接窯がとりつけられ、男性3人ほどで焼いているような感じで、到底おしゃれな雰囲気ではない。
 一通りお店を見た上で、通りすがりに好意的な挨拶をしてくれた若い青年のいるお店に戻り、焼きたてのパンを買った。70ルピーだったが、50ルピーもおまけしてくれた。
 温かいうちに食べようと、店から少し離れた階段に腰掛けてムシャムシャ食べていると、青年が「tea?」と声をかけてきた。
 お言葉に甘え、イエスと答えると、まさかの家の中にお呼ばれ。デリーだったら断固拒否だが、レーだし、逃げるのが難しい作りでもなさそうだったので、物は試しとお邪魔してみることにした。
 部屋には人懐っこく毛並みの綺麗な猫がいた。青年はshabirと名乗った。結婚しているか?と聞かれたので、私はちょっと警戒して、イエスと嘘をついた。インドで結婚しているか聞かれたら、とりあえずイエスと答えておくのが無難である。ところが、shabirも「来年結婚するんだ」という。私はすっかり安心して、相手の写真を見せてもらおうすると、「相手はまだ決まってない」とあっさり返された。なるほどそういう発想もあるかと、妙に感心したことをよく覚えている。
 夕飯にも誘われたが、話すこともそれほどないし、そこまで行くのは危険そうなので、友人と約束があると丁重にお断りした。
 shabirは帰り際、実家で育てているという大量のリンゴとクルミをプレゼントしてくれた。彼にいいご縁がありますように。

美味しそうなので我慢できなかった
左側の男性がshabir
美猫

 もらったリンゴとクルミが大変重かったので、一旦宿に戻った。リビングではゲストやスタッフが思い思いにくつろいでいた。ゲストとはこれまでも少し話す機会があったが、特に親近感を覚えていたのは、おそらく歳が近く、インド人でありながら非常に聞きやすい英語を話す青年Devである。彼は、これから1時間ほどカフェで作業をするので、その後昼食でもどうかと言った。直感的に信頼できそうな青年だったので、せっかくの交流の機会、ご一緒することにした。

 Devとの待ち合わせまで少し時間があったので、私は初日に仕立ててもらったドレス(午後までにはできると言われていた)を受け取りにTaylorに行ったが、結局夕方までかかると言われた。まあそんなもんだ。そこで、最後のお土産を探すべく、メインマーケットをくまなく探索。良いと噂のアプリコットオイルやソープ、スパイス(なお、「kitchen king」はこのタイミングで発見)なんかを楽しく買い物した。

 待ち合わせ時間きっかりにカフェに行くと、彼はオンタイムだねと驚いた顔をした。私は普段全然時間を守らないタイプなのだが、ここぞとばかりに「日本人だからね」とドヤ顔を決めた。
 ランチは当然のように昨晩と同じCHIMATH TIBETAN KITCHEN である。注文を待つ間、Devは自分のしてきた旅について話してくれた。YouTubeチャンネルも持っていて、冬のネパールを15日ほどかけてトレッキングした話や、ベトナムで不思議な魚のマーケットに行った話、インド国内ではKashmirの夏にリンゴ農園でステイした話など、聞いていて飽きない話ばかりだった。
 彼はこのあと、10日間の瞑想プログラムに参加するのだといった。自分のためにきちんと時間を使うことは、私が思っているよりずっと当たり前のことなのだなと思った。

相変わらずめちゃくちゃおいしかった。


 宿に戻るとちょうど16時ごろだったので、オンライン講座にアクセスしたが、タイミングの悪いことにこの日は夕方からいきなり宿が停電し、Wi-Fiはおろか部屋の電気も真っ暗になってしまった。
 しばらく夕陽を頼りに参加していたが、一向に電気も回復しないので、私はやむなく、三度メインマーケットまで歩かなければならかった(マーケットは幸運にも街灯がついていた)。
 屋外はさすがに極寒で、私は鼻を真っ赤にしながら(受講生に心配されながら)、なんとか講座を受け終えたのだった。

 そこから再度、仕立ててもらったドレスを受け取りにTaylorに向かった。
 無事に完成していたドレスは、思った以上に模様が綺麗に見えており、ちょっと感動する出来栄えだった。ところが、念のため試着すると、控えめにいって相当キツい。こんなんでは着られないよと文句を言うと、店主はちょっと首をすくめて、その場で採寸し直し、さっとミシンを動かして、10分足らずで直してみせた。私はさすがのスピードにただただ驚くばかりであった(そのスピード感なら昼時点でできててもおかしくなかったのではとうっすら思った)。


 それほど腹ペコではなかったが、レー最後の夜ということで、本当に何度行くんだと言う感じだが昼と同じレストランに行った。
 最後なので、いつものThenthukに加え、気になっていたTingmokと言うチベットのパンとveg soupを頼んだ。しつこいようだが本当に何を頼んでも美味しいお店だった。

相変わらず(以下略)

 腹も無事満たされ、私は気分良く宿に戻った。停電が終わっていたので、電気毛布で暖かな夜を過ごすことができた。また、その日は珍しくルームメイトの女性が早寝だったので、夜中に電話で起こされることもなく、実に平和な夜であった。
 それはあまりにも日常で、明日からも永遠に続きそうだなと、半ば祈るように思って、私はゆっくりと眠りに落ちた。

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