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ジョージア、天国に一番近い国(3)もしかして親日【トビリシ】

※2日目その2。長くなりすぎたので分けました。


 早々にシオニ教会を出て、ナリカラ要塞に向かう。ここは、ちょっと急な坂を上らないとたどり着けない(ロープウェーがあるのもうなずける)。石畳の坂をずんずん登ると、入り口にたどり着いた。一本道なのでわかりやすくていい。
 要塞を名乗るだけあって、ナリカラ要塞からはトビリシの街が一望できた。ゲルニティ教会には高台がないので、より遠くまで見える。さえぎるものがないことでよりダイレクトにとんでもない強風が私を揺らした。買ったばかりの帽子を危うく持っていかれそうになった。

 景観を堪能していると、トビリシ中心部とは反対側、ナリカラ要塞の裏側に当たるエリアで、ふと目についたものがあった。

動画のスクショのため画質は勘弁

……鳥居である。思わず目を疑った。

あれ?ここって実は京都でした?
まじで、なんで?

歩いたら遠そうだけど、めちゃくちゃ気になる。わざわざ目指すほどじゃないけど、行けたら行こう。そんなふうに心に決め、次はどこに行こうかと思案してGoogle mapを開いた。
 そこで、ナリカラ要塞を下った近くに、トビリシの名前の由来にもなっている温泉エリアがあったので、行ってみることにした。

 トビリシは、「温かい」を意味する言葉で、温泉が有名だ。中でも、ナリカラ要塞のすぐ近くにあるアバントゥバニ地区は、独特のドーム状の屋根を持つ温泉施設が数多く立地するエリアで、観光客だけでなく、地元客にもよく利用されている。温泉には旅の後半で入るつもりだったのだが、せっかくなので散策してみることにした。

アバントゥバニ地区
上から見るとその不思議な形がありありと
ナリカラ要塞の近くに立つ「ジョージアの女神」
近くに行ってもデカすぎて何の感動もなかった
ナリカラ要塞に隣接する教会はめちゃくちゃかっこいいです


 下る途中でふと、事前にインターネットで読んだジョージアの旅行記に、「温泉地区からちょっとだけ歩いたところに、オアシス的なきれいな滝がある」という情報を見かけたことを思い出した。暇だし行ってみるかと、再びGoogle mapを見ると、確かに滝らしきものが表示されている。そろそろお腹もすいていたが、まあ近くだしと歩き始めた。
 滝の方面に向かっていくと、植物園の入り口にぶち当たった。何の気なしに入ると、入場料を請求される。全然考えてなかった。
 そんなに滝に対してのモチベーションもなかったのだが、「じゃあいいです」というのもなんか悔しいので、トイレ代だと思って払った。

 入り口付近でトイレを済ませて散策を続ける。植物園とはいえ、時期が時期(年末年始)なので、全然花はなかった。入ってすぐの看板に「Water Falls」の文字を発見。よしよし、さっさと見てランチに行こう。

春はまだだね
遠くに女神の後ろ姿が


 ところが、歩けど歩けど滝が現れない。
 想定では5分くらいで行けそうな距離だったのに、気づくと10分以上歩いていた。

 この時点で、うっすら気づいていた。
 多分、この周辺に滝は2つあるのだ。もっと近いところにもあったのだろうが、わざわざ遠い滝を目指してしまっているようだ。
 引き返すことも考えたが、ここまで来て戻るのもなあ、と思い、ひとまず進むことにした。

 結局トータル20分くらい歩いて、ようやく滝が見えた。
 案の定、まじで大したことない滝で、全然日本の滝の方がすごくて、こんなもんのためにお金を払って空腹を抱えて20分も歩いたという事実にウケてしまった。近所に住むおじいちゃんの散歩かよ。

 帰りはせっかくなので違う道を通ろうと思い、滝が流れ込む細い川を渡って、対岸をぐるっと周って帰ることにした。
 歩き始めてみるとこれまたちょっとした坂道になっていて、若干後悔した。

 こぎれいに整備された道を進んでいくと、私はまたも驚きのものをみた。

 鳥居あるじゃん!!!!!!

 全然気づいてなかったけれど、そういえばナリカラ要塞から見下ろした場所はちょうど植物園のエリアだった。
 日本庭園と看板が立てられたその場所は、都会の小学校のグラウンドくらい狭かったし、鳥居はあるけど祠はないしで、はっきりいってめちゃくちゃだったが、全く予期していなかったのでかなり楽しかった。全然おすすめはしないけど。

 結局植物園には1時間くらいいた。
 さすがにかなり疲れていたし、おなかもペコペコだったので、アバントゥバニ地区を通り過ぎ、手近で一番Google mapの評価が高いお店に入ることにした。多分ものすごい観光客向けのお店だ。

 さて、ジョージア料理の開拓だ。
 1日目はシュクメルリを食べたのでそれ以外。何もわからないので適当に行くしかない。

 私はここで「プハリ」の盛り合わせと、「ヒンカリ」を頼んだ。どちらもジョージア名物料理だ。プハニは、くるみをベースにしたペーストのようなもので、ホウレン草やビーツなどの味があり、彩りが美しい。また、このくるみのペーストを薄切りにしたナスでくるんだもの、パプリカの中に入れ込んだものも合わせて出てきて、こちらはプハリのもったりした食感とはギャップのあるオイリー&ガーリックな味わいだ。
 ヒンカリは、ジョージアではアイコン的な料理で、小麦で作られた皮の中に肉餡が包まれ、中の肉汁と一緒に楽しむ、小籠包とかモモっぽい料理。こういうところにモンゴル帝国の支配の歴史を感じるな。
 ヒンカリは思っていたより皮が分厚くかつサイズも大きく、かなりのボリュームがあった。汁をうまく食べる難易度がめちゃくちゃ高かった。
 それからもちろんワインも飲んだ。今度は赤ワインにしようと思って、一番おすすめを頼んだら、一番高いグラスがきてびっくりした(とはいえ22GEL、1,000円くらいだけれど、ジョージアの食費からしたら相当高級品だ)。ここで飲んだワインは「キンズマラウリ」といって、セミスイートに分類されるワインである。これがもう引くほどおいしくて引いた。もちろん好みがあると思うけれど、赤ワイン特有のタンニンの渋みがほとんどなく、上品な甘さがあり、なんというか、澄んだ味という感じだった。白ワインもおいしかったけれど、赤ワインのおいしさには度肝を抜かれたという感じだった。

盛り合わせ。1人で食べる量じゃない
これは後日判明したことだが、ヒンカリにはちゃんと食べ方がある。てっぺんのとがった部分を手でもってひっくり返し、上からかじるのだ。そしてなんと、手で持つ部分は食べない人も多いらしい。道理で固いと思ったよ。
ダントツ美味しかった赤ワイン

 お腹も満たされ、さて次なる目的地を考えようと本日何度目かのGoogle map起動。気になる場所にはいくつかピンを打ってあるので、その場その場で次の場所を考えるスタイルだ。お店の近くに中央モスクがあるらしい。キリスト教が多数派と思われるジョージアでのモスクがどんな感じか気になったので、行ってみることにした。

 いざ行ってみると、建物は小さく、扉はうっすらと開いているという感じで入っていいのか微妙な雰囲気。ええいままよと開くと、4人くらいの信者が談笑していた。入っていいかと聞くと、どうぞどうぞと手招きされる。中は修理中らしく、また絵柄もかなり簡素で、まさにローカルなムスリムの為の手作りのモスクという感じだった。中央モスクという名前からは想像できないほどのコンパクトさでまた笑える。トビリシ、総じてめちゃくちゃ楽しい。

 日も少し傾いて、そろそろ寒くなってきた。正直、行きたいところはもうほとんどなかったが、Google mapにはまだいくつか言っていない場所にピンが立っていた。どれも絶妙な距離感で、宿に戻るか迷ったが、行くか行かないか迷ったときは行くのがモットー。
 寒さに凍えながら、謎の時計台や、ドライフルーツマーケットというこれまた謎の公園、アーティスティックな地区であるファブリカ地区を散策した。

ジョージアのクリスマスの飾り、チチラキ。イナウ(アイヌ文化)にめちゃくちゃ似てるけど関係ないらしい
犬とチチラキ
細かいタイル
不思議な時計台
ゲストよりキャストの多い公園
壮大にクリスマス

 この時点で、かなりシビアに現金が不足していた。背に腹は代えられぬと、レートは我慢して周囲で両替する。空港が一番レート良かったな。

 さて、歩き尽くすと外はすっかり夜になっていた。いつもならこれで一日が終わり…なのだが、この日はもう一つイベントがあった。ジョージアを訪れるにあたって、友人から、ジョージアに住むとある日本人の方のツイッターアカウントを紹介してもらっていたのだ。彼ーーゾノさんは、ジョージアに10年以上住んでおり、様々な文化や歴史に造詣が深く、どうしても会ってみたいとDMしたところ、夜ご飯を一緒に食べることになったのだった。

※最高すぎるゾノさんのアカウントはこちら(本人許可済み)

https://x.com/siontak?s=21&t=4OOzWm2ll5LTR0DlbeUH2A


 一度宿に戻って一息ついてから、待ち合わせ場所に向かう。これまで移動は全てBoltだったのだが、せっかくなのでメトロに乗ってみることにした。ジョージアにはメトロが2種類通っており、1ラリ(50円くらい)で乗ることができるので、タクシーも相当安いがメトロの方がはるかに安くt便利だ。メトロカードにチャージをして利用するのだが、おつりが出ない仕様なので、小銭は必須である。

 メトロのエスカレーターのスピードがめちゃくちゃ速くてウケたり、チケットの買い方が全然わからなくててんやわんやしたりしつつ、なんとか待ち合わせの駅--リバティスクエア駅に到着した。

 リバティスクエア駅を一歩出ると、クリスマスのイルミネーションがきらきらと輝く大通りが広がっており、まるで表参道だった。私は内心、唯一持ってきていた「ちょっと街なかっぽい服装」にきちんと着替えた自分に感謝した。

中央駅
メトロカード
表参道みたい

 お店はゾノさんが決めてくれていた(私は当然のように何も考えていなかった)。ジョージアワインに造詣の深い日本人が働くお店で、料理もおいしいお店だそうだ。
 リバティスクエアの喧騒を早々に抜け、15分ほど歩いた静かな路地にその店はあった。そこで働いているトモヤさんという日本人の方は、ジョージアワインを飲んでその味にほれ込み、数か月後に移住してきたというツワモノだった。この世には面白い人がいっぱいいるなあ(しみじみ)。でも、どのジョージアワインも飲みやすくておいしくて、次から次へと飲んでしまった。ほれ込む気持ちもわかる。
 食事も、ジョージア料理に少し手を加えたようなおしゃれなものが多く、日本ならではの天ぷらなんかもあって、とてもおいしかった。このときは、どのメニューが何なのかもちんぷんかんぷんだったけれど、最終日ももう一度行けたらきっともっと楽しかったと思う。

 ジョージアでガイド業もやっているゾノさんとの話は、とにかく面白く、ずっと聞いていられそうだった(個人でもガイドを頼めるので、訪れる際はぜひ問い合わせてみていただきたい)。

 一日歩き回って疲れていたはずなのに、気づけば0時を超えていた。Boltを呼んで帰路に就く。本当に楽しかったなあと、ふかふかのベッドにもぐりこみ、時差ボケなんて一つも感じず、気づけばあっという間に眠っていた。
 この時は、ゾノさんとの出会いが、私のこの後のジョージアトリップにあんなに大きな影響を与えるなんて、夢にも思っていなかった。


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