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大卒フリーターになるまでの物語

これからは個の時代になる。

ある日の昼下がり、僕はそっと本を閉じた。
本の作者は堀江貴文。
まだ自分は社会人になるという実感はなかったため、
本に書かれている言葉も軽く流していた。

大学3年生の春、食堂でひとりの時間を過ごすのが好きだった。
することと言ったら授業の課題、ゼミ活動、読書である。
パソコンをカタカタと作業することが楽しかったため、
積極的にパソコンを使っていた。

少し子供の頃の話をしよう。

読書習慣がついたのは小学生の頃くらいだと思う。
「デルトラクエスト」という本がきっかけだ。
男なら誰しもがあの独特な表紙の存在感に魅力を感じたのではないのだろうか。
遊戯王のURカードのようにキラキラしていて、本を傾けると表紙の絵が動くのだ。
それから図書館に通うようになり、本屋に足を運ぶことも増えた。
というかそもそも兄と父が漫画好きなので、一緒に集める対象が増えただけである。
これに加え、両親の趣味は洋画鑑賞。
幼稚園生の頃からグロいものも怖いものも一緒になって見ていた。
A.I.やPerfect Worldを見て大号泣していたのは今でも色濃く覚えている。

漫画を読んだり、アニメを見たりすることで想像力を膨らませることは誰でもあることだろう。
ベッドの下にモンスターがいる。
夜中に人の気配を感じて寝れなくなる。
かめはめ波は練習すれば打てるようになる。
など、子供は想像力に溢れている。

想像力は、触れてきた世界に比例する。

これは僕が自己分析の結果導き出した答えだ。
想像力というものは、いわば、当てはめる能力である。
モンスターズインクの世界観と自分のいる世界を当てはめる。
ホラー映画と実世界を当てはめる。
ドラゴンボールとリアルを当てはめる。
フィクションとノンフィクションをごちゃ混ぜにして世界が混同する。
だから自分が今まで見てきた世界、擬似体験した世界が多いほど、
当てはめるものの母数が増えるため、想像力が膨らむ。
没入して感情移入するものほど、擬似体験は実体験に近いものとなり、
世界観の影響を強く受けるのではないのだろうか。

こう考えると自分は想像力が強いのかもしれない。
聞こえがいいかもしれないが、自分では厨二病の延長であると思っている。

さあここまででとても長くなったが、この性格特徴が後々大きな影響を与えてくる。
前置きは以上だ、本題に入ろう。

卒業間近になるまで就職のことなど考えることはないと思っていた。
大学卒業したら自動的に就職できるのだろう、と安易な考えをもっていたのだ。
しかし、うちの大学では三年生の履修単位としてインターンに行くことが義務付けられていた。
それにより強制的に企業のことを考えることとなり、就活意識が芽生えると言った大学側の戦法である。なるほど。

学科の先生方がインターン実習についてのベラベラと教鞭をとる。
正直、全く意欲は湧かなかった。
むしろ学生たちを脅すような話し方で腹が立った。
そんな言い方で誰がやる気になるのか。当時の自分は相当捻くれていたのだろう。
就活に対して焦る意識を持たせたかったのだろうが、自分には逆効果だった。

また学生は就活支援センターに登録することが義務付けられていたため、
絶対に一度は就活センターに行かなくてはならなかった。
そこの事務員とカウンセリング相手によって、
就活に対するネガティブ意識に更なる拍車がかかった。
説明は割愛するが、とにかく対応の雑さと愛のなさが目立っていた。
友人は「家が農家なんだってね。どっか親のコネとかで入れるとこないの?」
と言われたらしい。

そんなこんなで就活に対して大学側の大人に頼る気はゼロ。
そもそも頼るものではないが。ネガティヴは膨らむばかり。

ある日、ゼミの一つ上の先輩が就活セミナーをやるから来て欲しいと言ってくれた。好きな先輩だったため、2つ返事で参加をした。
そこで価値観を揺さぶれることになる。

プレゼン形式で内容は
就活に対して自分たちが何をしてきたか
社会人に必要な能力とは
就活生のすべき事
だった。
心を鷲掴みされたような感覚だった。
悠々とした話し方、コミュニケーションスキル、構成力。
一つ上とはいえ、こんなに立派な先輩がこの学校にいたのか。
この行事に参加するまで、自分の学科には尊敬できる先輩などいない、と思っていた。
それだけに、余計に感銘を受けた。

自分は考えている人間だと思っていた。
色々な経験をしているし、学科内の試験成績も優秀。
サークル活動に誰よりも力を注ぎ、サークル長として色々と考える機会も多かった。
しかし違った。全く違う。必要な能力は模範解答をする能力ではないのだ。
必要なのは地頭力。論理的思考、問題解決能力である。
考え方というものを知り、衝撃を受けたのだ。

この人たちについていこう。

心からそう思った。

彼らの団体はまだ発足したばかりだという。
他大学には学生による就活支援団体があるのに対して、
ウチの大学は福祉系のためそれがない。
今回のイベントは初の試みだったらしい。
何をするにおいても、始めたての段階は苦労とエネルギーが伴う。
しかしその分、得られるものも多い。
この団体に後輩として所属することにした。

団体の名前はCSP(career sport project)。
CSP自体が衝撃を与えたものだったが、二人の先輩に出会い、さらに衝撃を受ける。

自分は大学二年生の頃、オーストラリアで2週間のホームステイをした。
そこから多くの刺激をもらい、1年間独学で英語の勉強をしていた。
元々高校の時から英語を勉強することが好きだったため、それが再燃した形だ。
しかし独学ではやはり限度があり、アウトプット先もない。
英語の勉強に飽きかけていた時に出会ったのが、
CSPのリーダーと副リーダーである、W先輩とK先輩だ。
二人とも留学経験があった。それも自分よりもはるかに濃いものを得ていた。
行った国の数も計り知れない。
行動力には自信があった自分だったが、また鼻っ柱を挫かれた。
この二人、面白い!!
二人から様々な話を聞き、勉強方法をマルパクリした。
姿勢も真似しなくては、と思った。
1限があるないに限らず、毎朝学校の自動ドアが起動すると同時に食堂に入り、
英語参考書を開いて勉強をしていた。
この習慣は卒業まで続いた。

CSPのおかげで周りの学生が就活意識の低い中、高い意欲を持ち就活が楽しみになっていた。また同世代の意識の高い仲間もでき、お互いに刺激を与え合っていた。
昼休みや空いた時間にグループディスカッションをしたり、読んだ本をシェアしたり良い影響を与え合っていたと思う。
CSPの活動は様々だった。
大学に大企業、ベンチャー企業の人を呼んで講演会を開いたり、他大学と連携したセミナーを催したりしていた。

何度かイベントに参加して、ある程度慣れ初めてきた頃の話だ。
連携イベントで挫折を知ることになる。

コンテンツは丸一日かけたグループワーク。
グループには今までのイベントでできた他大学の知り合いもいて、
良い雰囲気になりそうだと安心しきっていた。
議題は「1億人を幸せにするサービスとは?」
会場が一瞬固まる。
今まで練習してきた
「満員電車を改善する仕組みとは?」
「学生がスマホ離れするためには?」
と違い、範囲が広すぎるし、議題がフワフワしすぎる。
シンプルだが、それ故に難しい。

グループワークの結果は散々だった。
A~Hくらいまでチームがあった中、最下位。
最後まで案が固まらず、プレゼンもグチャグチャだった。
穴があったら入りたい、むしろそのまま埋まりたい。
それくらいの気持ちだ。
このイベントまで割と順風満帆に進めていただけに余計辛かった。
結果に落ち込むというより、それまでにしていた努力の空回りを感じて落ち込んでいた。
ビジネス本を片っ端から読み、意識的に考える癖をつけているつもりが全く役に立たなかったのだ。付け焼き刃である。
他大学との圧倒的なレベルの差も感じた。
聞けば、他大学は大学2年生くらいの段階から就活を意識し始めて活動するらしい。

「こりゃ無理だな。」
シンプルにそう思った。自分のいる県だけでこれなら東京はもっと凄い。
まだまだ力が足りない。これまでの考え方じゃダメだ。
しかし今回のイベントで足りないものはわかった。
スピードと応用力。
そこを集中的に鍛えよう。

読む本の幅を広げた。
趣味にも考え方を応用した。
時間をかけながらもCNNを読んだりしていた。

世界の最先端技術の情報が流れる。
日本ではビジネス芸能人やオンラインサロンが水面下に出始めていた。

読む本の幅を広げたとは言いつつも、本の軸足は自己啓発本とビジネス書に置いていた。ホリエモンの本は宗教の教本かの如く購入。
YoutubeにもNewspicsなどのビジネス系の動画が増え始める。

全てのビジネス系の情報ツールで共通していたのは、

これからは個で生きる時代

ということだった。
会社も日本という国も信用できない。
副業や転職が当たり前の時代に入ったということである。
就活という時期に入り、自分はこの言葉を真に受けた。
それはもう丸呑みした。

就職しなくても知恵(地頭)があれば生きていける、
とシンプルに思った。
さらに社会は少子高齢化。
働き手がどこも不足している。
最悪仕事を選ばなければ、働くとこなんて無限にあるし、
知恵があれば職場でも上り詰めていけるだろうと思った。

そもそも就職に対してずっと疑問を抱いていたのだ。
みんな自己分析や企業分析をした上で就職する。
色々な選択があっただろうが、自分で志望した就職先だ。
それなのに何故、SNSでは会社の愚痴や働きたくないというネガティヴで溢れるのだろう。
活き活きと働いている人は昨今有名なビジネス芸能人くらいだ。

ここまで聞いて恐らくあなたは僕にこう言うだろう。
「でも仕事ってそう言うものだよ。」
そう言うものだよ、という答えが一番嫌いだ。
自身も何度も言われた経験がある。
諦めているようにしか思えない。
家庭の事情、育った環境、色々あっての選択というのは承知だ。
だが僕は諦めたくない。ビジネス芸能人のように遊ぶように働きたい。

正直、今での人生は何度も妥協して生きてきた。
今回は妥協したくない。
もっと前から考えとけ!と言うことは今言われても仕方がない。
過去には戻れない。
しかし今と未来は変えられる。
変えられる選択肢があるのならば、そっちを選びたいんだ。

生きていると思っている世界の範囲は案外狭い。
人は世界を狭めがちだ。
幸い僕は色々な世界を見ることができた。
まずは読書。所詮は本の中での話かもしれないが、本の数だけ世界がある。
世界観に触れて、自分の中にその価値観がほんの少し溜まっていく。
そうして自分の考えが形成されていくのだと思う。
「あ」から「ん」の50音を知り、それを組み合わせて文章を自在に作るように。

次にサークル長の経験。
自分がサークル長を担った時のダンスサークル人数は約100人。
地方の大学なのでなかなかのマンモスサークルである。
地方というのがまた良かった。
地域イベントや小学校のボランティア、過疎地域に向けたイベント、
イベント業者や学校の事務、様々な世界に近い距離で関われた。
そこでの出会いや気づかされたダンスの可能性は計り知れない。

サークルでお世話になっている居酒屋でのバイトも良い経験だった。
店長は歳が若く、いつまでも遊び心を忘れないカッコいい大人だ。
そんな店長によくしてもらって、色々なお客さんとも繋げてもらえた。
インターン先の会社を紹介してもらったり、居酒屋仲間の話などたくさん聞かせてもらった。

その店長つながりでクラブのオーナーを紹介してもらい、
夢だったクラブDJデビューもできた。
サークル仲間を呼んで朝まで遊んだのは今でも良い思い出である。
DJ同士の繋がりで今まで知らなかったラッパーやダンサーの繋がりも増えた。

地方は都会と比べると何かと不便かもしれない。
しかし不便の中だからこそ得られるものもある。
人の温かさを感じる、結の文化が大好きだ。

世界は広い。色んな生き方がある。
出会ってきた人たちの話を聞いて、それを肌で体感した。

肌で感じた世界を二乗に広げたのが、海外でのホームステイだった。
たった2週間だったが、オーストラリアのパースでの体験は忘れることはできないだろう。
勉強というよりも旅行だった。そこが少々の悔いである。
初海外、日本人あるあるを発揮してしまった。
そう、日本人同士で固まってしまったのだ。
そもそも英語力が低かったため、ランク別に配属された授業クラスには日本人ばかりだったのが原因だ。(県外の友人がたくさんできたので結果オーライ)
とはいえ、何もかも楽しい。
日本とは違う天気、景観、文化、全てに感動。
クラスメイトやホームステイ先の家族にダンスを魅せることもできた。
ダンスは言葉を超えるという事も実感した。

こんだけ世界体験してたら、そりゃあ夢見るって!
自分が何者かになる妄想するって!

ダンス以外でもゼミ活動や実習で色んな世界を見てきた。
考えてみたら、アンダーグランドからオーバーグランドまで
幅広く体験してきたかもしれない。
資格も何もとっていないが、間違いなく言える事がある。
誰よりも濃い大学4年間を過ごせた、という事だ。

そして自分の強みは
興味があるものは迷う前に飛び込む
そして積極的に学ぶ
という気質だろう。

こんなことを言っているが、メンタルは豆腐よりも脆い。
最近ネットでできる診断をやってみたが、中度のHSPだった。
自信を持っているようで、すぐに不安になる。
そんな性格だが、世界に飛び込むのは楽しい。
心がグシャグシャに潰されても、後で振り返った時に楽しかったと感じれる
ということを僕は知っている。
これからも忘れずにいたいし、大切にしていきたい。

そんなこんなで大学を卒業しました。
卒業時にcum laudeという成績資格をもらった。
成績優秀者に与えらるものだというが、自慢できるものではない。
ただ、「努力する力、頑張る力を持っている」という証明にはなると思っている。

現在フリーター2年目。
卒業して、バイトでお金を貯めて語学留学に行こうと思っていた。
お金は200万ほど溜まって、2020年6月からフィリピンのセブ島CGアカデミーに入学する予定だった。
そこにきてコロナ襲来。
人生計画を練り直し中。←今ココ

卒業後もいい人に出会えている。
人生とダンスの師に出会えた。
withコロナ。
相変わらず、運は良いみたい。

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