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【中世欧州料理試作】(18)イチゴのタルト

このコラムでは、過去試作してご紹介した中世ヨーロッパのアレンジ料理についてちまちまご紹介します。
全部実試作つき&単純に自分の感想や所感なども書きなぐってます。基本的に全部美味しいんですけど、一部「?!!?(なんともいえない味)」ってものもありますので、そのあたりも正直に書いときます。


■いちごの大きさについて

いちごのタルトやケーキって年中通してゲットできるので嬉しいんですが、それもこれも食材を作って下さる農家の方や工場の方々の多大なる努力と恩恵に感謝するしかないわけでして、ほんと美味しいっすよね。お値段がお高めなのは!仕方ない!(雑序文)

そんないちごですが、中世ヨーロッパ以前から食材として、時には薬効作用のある材料として重宝されました。大半の果物や野菜は「生で食する」ということはせず、必ずなんらかの形で火を通していたみたいです。実際、料理指南書の調理方法には煮込むor焼くor炒めるor焼成するというのがほとんどでした。生食だと身体によくない(おなか壊しちゃう)という概念もあったみたいです。まぁ、確かに理にかなっているといえばそうなんですが。

中世の彩色写本にもいちごはよく描かれています。「聖母の実(正義としての意味)」としての立ち位置もあってか、ホントによく登場します。もし、中世の彩色写本をご覧になる機会がありましたら、挿絵のところをちょっとばかし見て頂いてもいいやもしれないです。

15世紀頃の彩色写本・時祷書の一葉(羊皮紙工房コレクションより)。
右側に「善」の意味をもつイチゴの挿絵が描かれています。

中世ヨーロッパの「食材としてのいちご」ですが、現代の近所のスーパーでみるようなデカさではなく、いわゆる野イチゴ(キイチゴ)のサイズだったと考えています。そもそも、でっかくて大きいイチゴは品種改良後の姿なので、昔の人がそんなの見たら卒倒するんじゃないかと思います。なんたってでかいし甘いし(真顔)。

昔のイチゴは小さいので、料理チームは必要な量を用意するのに相当苦労されたんじゃないかと思います。品種改良のすごさに改めて敬服でございます(震)。

■ざっくり材料&ざっくり作り方

16世紀頃のストロベリータルトアレンジ版(ドイツ方面 伝)

では、毎度恒例の食材+作り方ざっくり紹介を抜粋します。分量とかの仔細は拙著同人誌「中世ヨーロッパ料理アレンジおまとめ集」をご参照下さいませ。

<材料>※分量は割愛します
いちご(生推奨。入手できない場合は冷凍でも可。乱切りにする) 
砂糖(グラニュー糖推奨)・赤ワイン(安いものでOK)
シングルパイクラスト(パイ土台)

<作り方>
1.パイクラストの中にいちごを敷き詰め、上から砂糖をふりかけて約170℃に温めたオーブンに入れ、約20分焼きます。
2.焼けたら赤ワインをパイクラストの中に注ぎ、同じ温度でさらに20分焼きます。
3.十分冷やしてからすすめてください。

深き西洋中世の食レシピ総集編(2023/コストマリー事務局)より抜粋

■タルトの要「赤ワイン」

明らかに調理工程で「?」というのが赤ワインを加えるという点。以前、某SNSで軽くご紹介した際に「…ワイン入れたら浸水してタルト台壊れませんか?」というご質問を頂いたんですが、ちょっとずつ入れれば崩落はなんとか防げます。一気に入れるとだばーっとなる可能性は高いですが。

タルトと赤ワインの組み合わせは、中世的に流行っていたのかますとびーだったのかは分からないのですが、とにかくよく入れてました。赤ワインなので、焼き上がるとだいたい茶色っぽくなるのはいた仕方ないのですがコレ。
他にも、赤ワインを使ったタルトとして「森の果実のカスタードタルト」というのがあります。こちらは以前記事でまとめていますので、ご興味ありましたらご参照下さいませ。

■いちごはできるだけ小さいものを

生でパクっと行きたい場合はもちろん大きくてもいいんですが、こちらのタルトに使う際はできるだけ小さな粒状のサイズを推奨します。よく探しているのが「ジャム用・加工用」として売っている、ちっこめサイズのイチゴ。大きめのものに比べて甘味が落ちるんですが、これがまた中世料理にはうってつけのもの。農家の方が直接納入している直売所などではよく見かけます。
どーしてもそっち系がない場合は、ふつーのスーパーのいちごでも全然問題ありません。1個を4つ割りないしちょっと小さく切ってから使った方がいいですね。生食モノは甘味も増すので、使用する砂糖の量は少し少なくするなど調整した方がいいかなと思います。

野生の野イチゴを実際に集めて作ってみたいというご意見もあったような気がするんですが、昔に比べてめっきりと収穫できる量が減ったこともあり、正直おススメはしません。食用のいちごを素直に使って頂くのが吉かど存じます。

ジャム用などの加工向けのものが使いやすいです

■味は意外と素朴です

とってもシンプルな作り方のいちごのタルト、現代の生果実&クリームバリバリに使っているものと比べると甘味もボリュームも劣りがちですが、素朴な味にはなっています。赤ワインも焼き上げるとアルコール分がとぶので、そこまで気になることはないかなと。ご興味がございましたらぜひトライして見て下さいませ(^-^)。

最後までご一読頂き、有難うございました(^-^)。


■中世ヨーロッパなお料理や民俗文化ネタつぶやきについて

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