ナツノオワリの話
毎年、肌寒くなる季節、夏が終わるこの瞬間にとてつもない孤独感を味わう。
それは、何故か、説明がつかない。
夏が特別好きという訳ではない。
冬は特別嫌いであるが。
でも、強いて言うなら
初恋の人が、夏を好きだったからかもしれない。
ナツノオワリに思い出すのは、いつもあの地平線だ。
「夏」は、凄い。
「暑さ」は、人を酔わせる。
「暑くて」
「熱くて」
「眩しい」
幻覚を見ているのかと錯覚するくらい
目の前に立つ人物は輝いていた。
太陽に照らされた彼は、
体育館のコートで見る時よりもずっと
大人びていた。
こんな風に思い出す、自分の中のメモリーは、
毎年、「美化」というアップロードを無意識の内にしていることだろう。
良い感じに、綺麗な部分だけ残り
苦しかった思い出は削除されていく。
もう、あの頃のほろ苦かった部分を思い出すことはできない。
そんな、曖昧さもまた、ナツノオワリをより一層孤独にさせる。
経験が自分を成長させることはあっても
思い出が自分を動かすことはない。
「現在」は止まったままで
「過去」だけが、変わろうとする
そんな、儚さがあるのが
ナツノオワリだ。
あの頃、「会いたい」と願った気持ちすらも
もう、思い出せない。
「若さ」について語るのはナンセンスだ。
だが、ナツノオワリだけは、
この季節だけは、
少し、感傷に浸りたくなる。
ああ、
そういえば、あの時食べたのは、
ハンバーグだった。
向かい席に座ると、妙に緊張して
箸を持つ手が震えた
右側の窓を見ると、日が落ちて暗くなってきて
「帰りたくない」そう思った。
目の前の彼は、「夕陽が綺麗」だと呟いた。
彼は、どちらかといえば
日向が似合うような男の子だった。
きっと、その影で咲く綺麗で、凛とした花を好きになるような
そんな男の子だった。
p.s
清水翔太のナツノオワリ
良い曲です。
文字を書くことが生き甲斐です。此処に残す文字が誰かの居場所や希望になればいいなと思っています。心の底から応援してやりたい!と思った時にサポートしてもらえれば光栄です。from moyami.