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もやブロ #53 湯沢町移住定住施策 6月議会の一般質問答弁への補足

こんにちは。湯沢町で移住相談窓口業務の受託をしている民間企業・きら星(株)の伊藤です。

6月の湯沢町議会で一般質問のトピックに移住定住施策をたくさん取り上げていただいたので、町長答弁に補足して、現状と課題などをお話ししたいと思います。

田村議員の一般質問でフォーカスしていただいてますので、よろしければ答弁内容はそのまま動画で公開されているのでご確認いただければ。

湯沢町の移住定住プロジェクト自体は、平成28年(2016年)より開始しており、以来ブランドスローガンの決定や、町のWebサイトにて移住定住ポータルサイトの立ち上げ、相談用のフリーダイヤルの設置、新幹線通勤補助金の開設、賃貸補助金など様々な施策をやってきていました。

私自身が、全国の地方の人口減少に歯止めをかけるために自ら地方移住&起業をしようと決めたのが2018年。そして実際に湯沢町に居を移し、きら星株式会社を立ち上げたのが2019年になります。

自らの実体験も踏まえ、移住するにあたり、仕事・住まい・生活環境・コミュニティなどの複合的な要素の情報提供が必要であることから、町に対して提案をし、ワンストップ移住相談窓口を設置していただき、その業務を受託開始したのが令和2年度(2020年)からということになります。
そのため、2019年から私が見てきたこと、体験したことをもとに補足の方はさせていただければ幸いです。

1-1.ターゲット年齢である20〜30代の出入りが多く不安定なのではないか?

議員の質問によると、移住定住施策においての効果は出ているので一定の評価をしていただいているとのことでありがとうございます。

下記が、ワンストップ移住相談窓口業務のレポート総括になります。

▼令和2年度(2020.4〜2021.3)の実績

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R2年度の実績(一部抜粋)

今までかつて「負の動産」というメディアの取り上げられ方をしてきていたリゾートマンションを活用して人を呼び込むためのフックとして認識を変えてもらえるようなメディア戦略を打ったという点が非常に大きかったと思います。
日経新聞に取り上げられ、そこからガイアの夜明けの取材につながり、県内メディアはじめいろんな媒体に取り上げられることとなりました。

また、ターゲット層に合わせた情報提供や集客をする必要があることから、無料で取り上げられるPR以外は全てインターネットでの情報発信に活動を絞っていたことも戦略の大きなポイントであります。
というのも、テレビ・新聞等のマスメディアに広告掲載等の訴求をしても、結果としてはシニア層からの問合せ増があるばかりでした。20〜40代の方に届けるためにはやはりWebを中心に展開をする必要がありますし、逆にいうとWebで情報を集めることができるリテラシーを持った方にこそ、来てほしいという狙いを持ってやっています。
お試し移住に関しても、予約をWebサイトからの申込みに限っており、移住相談フリーダイヤル等でかなり文句を言われることがあるのですが、それも重点的に取ってきたい層はオンラインでの予約が問題なくできる方という狙いがあるためです。

結果、初年度ながら相談窓口を通じた移住は29名、うち20〜30代が19名という結果となりました。(実際は2019年より手弁当で相談には乗っていたので、2019年からのご相談者が2020年度中に移住したなどがあります)

▼令和3年度(2021.4〜2022.3)の実績

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R3年度実績(一部抜粋)

やはり住まいを大きく変えるということは短期間でできることではありません。相談に乗った方でも、早い方では3ヶ月、長い方では2年以上のお付き合いをしてやってきてくださる方もいらっしゃいます。お子さまが中学校に進学するタイミング、であったり、5年先のこと。と決めていらっしゃる方もいます。
すぐには結果が出るという性質の業務ではないということは、予め皆様にはご理解いただきたいところです。

昨年度は、二拠点居住などの多様な暮らし方の問合せが増えました。
そしてそうしたライフスタイルを実現された方は「移住人数」には入っていないのですが、それは大きな動きだと思っています。

家族ぐるみでの交流をさせてもらっているYoutuberのイケさんの影響も大きなものでした。子どもと一緒に冬だけ湯沢で暮らしたい!そんな生活を叶える #区域外就学制度 を広く紹介され、実践される家族が増えました。(これに関しては、教育委員会の皆さまにも多大なるご尽力を頂いたので別で記事にしたいと思います)

こうした方々は「移住人数」には入ってきませんが、町のリゾートマンションを契約し(所有者や、不動産屋さんにお金が落ちる)、スーパーで買い物をし、町内の飲食店に貢献し、スキー場などのレジャー施設にお金を落としてくれます。

議員からは湯沢学園の転出入の増減が多い、というご指摘がありましたが、こうした区域外の方の受入れなどは統計資料に影響していないでしょうか。そこは教育委員会に確認していただきたいところです。

さらに補足ですが、二拠点生活→移住というパターンも大いに考えられるので見過ごせないところです。実際に、中長期お試しで暮らしてみて、よければ湯沢での生活一本に切り替えるという方も実際に出てきています。

▼東京のイベントでお会いし、実際に湯沢に来てくださったマリコさん

田村議員も質問中でおっしゃっていましたが、定住をしていただくためには、町の環境を整えていく必要があるので、教育・医療・福祉・インフラなどの町が関わるところの生活環境もそうですし、民間事業者が主体となり買い物環境や住環境などの整備、そして労働環境を官民一丸となって向上させていかないとせっかく来ていただいた方々も離れていくことになります。

さて、前置きが長くなりましたが、出入りが大きい理由としては
・ウィンターシーズンに働きに来る方という季節性の要因
・子育て世帯の流出に関しては、近隣市町村に住宅を建てた方が数世帯ある
ということがあるかなと見ています。

湯沢町内にはあまり住宅を建てる用地の件数が多くありません。また、南魚沼市内にて就業しているご家庭もあります。そのため、新築住宅着工、通勤のために南魚沼市内に転出をした子育て家庭をいくつか知っています。

宅地の造成はこれからの時代マッチしないとは思いますが、
①駅前等利便性の高い場所にある空き地の未利用
②不動産屋さんに出ている中古住宅が比較的値段が高い
③空き家があるにも関わらず所有者さんが利活用に踏みきれず流通しない

などの課題が解決すれば上記のようなケースは防げるのではないかと思います。

湯沢の場合は、バブル期に土地の値段が高騰していたことなどが原因で、原所有者さんが貸すこと・売ることへの意欲が高くなく、特に不動産の流通が鈍いという話を聞いたことがあります。
東口の商店街などもそうですが、遊休不動産になっている場所を利活用していただけることをどう促していくか?ここは是非、昔から町に住んでいる方や議員の方々も中心になって働きかけをしていただけると良いのではないでしょうか。

1-2.高齢者の移住について

こちらの記事を議会事務局でも回覧していただいたようで、ありがとうございます。

テレビの放映があると、こういった問合せが非常に増えます。そのためなるべくテレビ取材の対応はしたくないなと思っているのですが・・・

本件に関しては、今後のマンション管理をどのようにしていくか、まちづくりの一端として真剣に考えていくことを併せて検討していただきたいと思います。
私は新潟県の住生活マスタープラン(第4次計画)策定検討の委員になっているのですが、その中でもマンション管理についての課題が議論されています。

湯沢町は、県が制定する予定のマンション管理適正化推進計画の適用エリアになります。
その中で、建築後50年を前に「25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定しているマンション管理組合の割合」を全国水準並の75%(現状69%)へ引き上げるという成果指標を設けているのですが、長期修繕計画や管理費滞納住戸への対応方針、将来的に除却の可能性の検討などを町としても把握やモニタリングをしていく必要があると思います。
リゾートマンションは、区分所有権がある共同住宅ですので町としての関与は権利的に難しいところがありますが、高齢者の入居が一定数ある以上、固定資産税の確保など税収面での観点でも看過できないところです。

2-1.就労環境の整備について

町と商工会とハローワークにて実施しているU・Iターン就職説明会ですが、毎回参加者がほぼいないと聞いています。こちらも旧態依然の、チラシを入れるなどの方法ではU・Iターン者に届くはずはないので、告知方法や開催方法を見直ししてはどうでしょうか。

また、湯沢町の主要産業である観光業についても、中抜けなどの拘束時間の見直しやチェックインのDX化などによる業務の見直し、通年雇用ができる事業体への変革など、単に「人手・労働力」として見るのではなく、被用者にとって魅力的な労働条件ややりがいがあり風通しが良い職場になることによって選ばれる職場、Uターンしてきたい仕事がある町になっていくかと思います。
これは有料職業紹介事業を営んでいて切にそう感じるのですが、現状、ご紹介しても「これはちょっと」と言われることが多いです。

2-2.本事業での問題は出ていないか?

移住させるだけさせて、フォローアップしているのか?問題は出ていないのか?というような切り口での質問でした。

相談して移住した後にもお付き合いしていただける方ももちろんいますが、相談して移住したことを知らなかったりというケースももちろんありますし、移住した後にはなかなかコミュニケーションが取れなかったりというケースもあります。
LINE@やメールや電話、きら星BASEに来ていただければ移住した後もつながり続けられるように間口は開けていますし、適宜イベントも開催しているのですが、移住した方が全員つながり続けられているわけではありません。

後者は、フォローアップができていないのでは?問題では?と指摘されても仕方ないかもしれません。
ですが、定住させるためには相談窓口や役場の担当課だけが頑張るのではなく、町ぐるみでのフォローアップがあって欲しいと願っています。
住んでいる人、一人ひとりが互いに心地よく暮らせるように、あいさつしたり仕事をしたりして、住み心地の良いまちをみんなで作っていくことによって、住み続けたいまちになっていくのではないでしょうか。

2-3.移住してきた人の実態が見えてこないんだが

Web等では情報は出てくるものの、移住者との接点がない。実態が見えてこないというご指摘もいただいておりました。

いつでもコワーキングスペースはオープンにしているのでお越しいただければいいのですが。
Uターンしてきた若者や、Iターンで地域を選んでくれた方、二拠点居住をしている方、テレワークをしている方などが実際にいるので足を運んでいただければいつでも実態をご覧いただけます。

▼7/24(日)の町長懇談会は「移住者との交流」をテーマにしてます。
13:00〜15:00開催予定ですので、ぜひお越しいただきたいです。

あとは、毎月弊社では、月一ランチピッチという取組みを行なっており、新しいことを始めたい人の思いなどを発表する場を設けております。
渡辺議員はよく足を運んでいただいて、発表者との交流や意見交換をたくさんしてくださっています。

最後に

先日、6月14日に第三子となる次男を出産しました!

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湯沢町では「スクスク湯沢」子育て応援施策がたくさんあります。
・不妊治療費の助成(1回の治療にかかる自己負担額から5万円を控除した額の1/2)
・子育て応援金として出生後、小学校入学、中学校入学時に5万円ずつ
・子ども医療費18歳まで無料
・産後ケア事業(宿泊型でも自己負担額3,000円)
などなど

現在、十日町市のたかき医院でお世話になっています。たかき医院では、産後ケアとして産後半年まで宿泊やデイサービスで産院で身体を休めたり、育児指導を受けることができます。
南魚沼市・十日町市・津南町・栄村での産後ケア助成事業の補助額が半額のところ、湯沢はなんと実質7割の補助で利用ができるということ。
その他の施策も近隣市町村と比較してですがかなり手厚い!

湯沢の出生率は近隣市町村よりも低いのは、産院が近くになく不便・心理的不安があることも原因だとは思いますが、こうしたことがあまり知られていないからかもしれません。(私も当事者になって初めて知りました)
ですので、育児や教育の情報に関しても、メリット・デメリットともにありのままに伝えていくことで出生率も変わってくるのではないでしょうか。

ちなみに、湯沢学園子ども園への乳児の入園は生後6ヶ月以降からになりますが、きら星BASEでは子連れ出勤を推奨しております。

また、町内でも6ヶ月未満でも働きたい、子どもを預けたいお母さんたちのニーズもあるのでそういったニーズに応えられるように民間ベビーシッターを請け負ってもらえるような体制づくりを働きかけています。
内閣府ベビーシッター派遣事業、というものを皆さんご存知でしょうか?就労等のために従業員がベビーシッター利用した際に、その利用料を助成するという制度になります。対象は乳幼児〜小学校3年生までで、コロナ休園の時の家庭保育等でも利用ができます。4,400円/回の助成が受けられ、中小企業であれば助成額の3%の負担で自社の従業員にベビーシッターを使わせることができます。

町の子育て支援だけではなく、民間でもできることや、国の政策パッケージなどもうまく活用し、そしてそれを町内に広めていくことによって就労環境の改善という部分にも寄与していきたいと思います。

住みたいまちは、自分たちでつくる!

そんなところを大切に、今日も明日も一生懸命に生きていきます。

「魅力的なまちで溢れかえっている世界を」作り「地方で暮らす人を増やし消滅可能性都市をなくす」ことをミッションに動くまちづくり会社社長。湯沢町で暮らす2児の母でもある。