『いのちの水』
「いのちの水」はなぜ自由に飲めなくなったのだろう?
昔々、誰もが飲める「いのちの水」の泉がありました。
しかし、その水に感謝するために建てたはずの記念碑や礼拝堂は、
当初の思いを越えてどんどん大きくなり、やがて、泉がどこにあるのか分からなくなってしまいました。
また、泉を管理する特別な人たちが現れ、その水をいつ、誰が、どのように飲めるのか、意見の相違が生じてしまいます。
カナダ人神学者トム・ハーパーが遺した痛烈な寓話を、幻想的で美しい消しゴム版画が彩ります。
とてもとてもマイナーな絵本で、当たり前のように絶版なのが悔しい…。
「いのちの水」はストレートに解釈すれば、著者が神学者であることからも分かるとおりキリスト教の救いを描いているのですが、それだけにとどまらず、自然環境や私たちの才能など、「あることが当たり前になってしまっている大切なもの」を表しているように思います。人間はそれをどうにかしてコントロールしようと躍起になりますが、その姿勢が本当に正しいのかどうか…一度立ち止まることも必要ですね。
と終わるため、一見バッドエンドにも感じられるのですが、
決していのちの水は枯れ果てることがないことに希望を覚えます。
手に取りにくいかもしれませんが、ぜひ見つけ出してほしい一冊です。
トム・ハーバー・作 中村吉基・訳 望月麻生・絵
ページ数:48ページ
対象年齢:5歳から
2017年11月