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見えない不思議なチカラ

今日は白いメスネコ、ウニの命日だから、天国に行ってしまった2匹の愛猫たちの、不思議なチカラについてのお話をしたい。悲しい話も出てくるため、苦手な方はどうぞその部分は飛ばして欲しい。でも、お別れした後の不思議なチカラについては、お読みいただけると嬉しい。

まずは悲しいお別れのお話。ウィーンからロンドンに移住して2年目、私も仕事をはじめ、夫も私も忙しく外に出ていた。そんな時、ウニの食欲がなくなり、腎臓に癌があると診断された。15歳のウニの体を思うと、手術は考えられなかった。そして、1ヶ月後にはすっかり弱くなってしまった。ヨーロッパでは、ペットは安楽死を勧められる。でも私たちは決断しかねていた。もうダメだと覚悟を決めて仕事から家に帰った金曜日の夕方。ウニはいつも以上に元気だった。死を目前に、突然元気になるという話を読んだことがあるが、まさにその通りだった。歩けないながらも私と一緒にいてくれようとした。今思えば、おそらくウニは私たちの留守中に、一度天国の入り口までいったのではないかと思う。けれど、あと1日待てば土曜日、私たちに見守られながら旅立てることがわかり、頑張って戻ってきてくれたのだろう。その翌日、ウニは夫と私に見守られながら、天国へと旅立った。きちんとお別れの時を自分で決めたのだ。

私たちはウニをペット専用の火葬場に連れて行った。そこは、閑静な場所にあり、庭園が綺麗に整備された美しいところだった。スタッフの方の心遣いがとても温かく、ウニを安心して送り出すことができた。係の人が、火葬する前にウニの脚型をとり、体毛の一部をきちんとお守りのように袋に入れて、最後に渡してくれた。そして、遺灰を骨壷に収めてくれる。骨壷は猫型のものを選んだ。

火葬している間、2時間くらいは近くの街を散策するよう案内された。街は2箇所あった。そこは小さくまとまったイギリスの田舎街だった。食欲がないながらも、小さなカフェに入り軽食を取った。そして、近くにアンティークショップがあり、アンティークが好きな私たちはそこを訪れた。そこで、まずネコを象った小さなフォトフレームを見つけた。ウニの写真を入れて飾るのにぴったりだった。そしてふと私の目に、白ネコのティーポットが飛び込んできた。まるで今ここに突然現れたかのように。夫と私は迷うことなくそれを購入した。それはちょうど、ウニが火葬されている時間だった。ウニがティーポットに形を変えて、私たちの目の前に現れたのだ。アンティークショップに立ち寄る私たちのことも、お見通しだったのだろう。

ウニがいなくなってから、私は毎日毎日泣いていた。しかし、ウニは時々部屋に遊びにきていた。もう1匹の黒いオスのハチワレ猫、トトの姿を借りて。

ウニもトトもダンボールの空き箱に入って寝るのが好きだった。ちょうどアマゾンの箱が彼らにぴったりだったのだ。ある日、トトがダンボールに入って寝ていたのだが、その寝方がウニだった。ウニは時々額を段ボールの淵にピタッとつけて、体を剃らせるように寝ていた。トトはそれまで、そんな寝方をしたことがなかったのだ。あ、ウニがきているんだ、と思った。

ウニがいなくなると、トトはとても寂しがって元気がなくなるのではないかと心配していた。しかし、トトは元気だった。きっとトトはウニと最後に約束をしていたのだと思う。ウニの分まで元気でいるということを。そして、たまにトトの体を借りて遊びにくるということも。

トトは1匹になり、それから約束どおり元気に過ごし、3年近い月日が経った。しかし、当然トトも寄る年波には勝てない。やはり腎臓を悪くしていた。もう17歳だった。そんな折、昨年私たちの在宅勤務が始まった。トトと一日中一緒にいることができた。貴重な時間だった。けれど、トトの体調は悪化していった。トトが元気をなくしていると、不安でたまらない私は、骨壷ウニの頭を撫でながら、トトはまた元気になれるよね、とすがるように話しかけた。すると、不思議なことにトトはまた元気を取り戻してくれた。嬉しかった。しかし、私はウニパワーに頼りすぎたと思う。トトは本当に頑張りすぎてしまったのだ。弱くなった体で、何日も何日も頑張った。1日でもトトと過ごしたいと思った私たちの気持ちは、きっとトトも同じだったと思う。

トトもまた、ウニと同じ火葬場に連れて行った。去年は残念ながらロックダウンの最中で、飲食店は休業していた。お店は少し開いていたが、アンティークショップは見つからなかった。どうやらウニの時とは別の街に行ってしまったらしい。またウニの時のように、別の形でトトを手元に残すことができるのではと少し期待していたのだが、叶わなかった。トトもまた、ネコ型の骨壷に入っている。

トトは向こうでウニが待っているから、寂しくないね、とずっと思っていたけれど、いざトトが行ってしまうと、私たちのところには誰も残らないことを初めて知った。ネコのベッドもトイレもご飯も、もう誰にも必要とされていなかった。私はまた毎日泣いて過ごした。

しかし、トトはちゃんと別の形で現れた。

去年の私の誕生日。朝ベッドから出て、今年はネコたちがいない誕生日になってしまったと思いながらテラスへ続く窓のカーテンを開けた。すると、なんとテラスに黒ネコの後ろ姿があった。トトはテラスに出て、そこから見える川を眺めるのが好きだった。黒ネコは全く同じような場所にいた。トトがお祝いにきてくれたのだ。近所の黒猫の姿を借りて。

近所に、黒猫を3匹飼っている家があることは知っていた。以前1匹がうちのテラスに遊びにきて、トトと対面したことがあった。しかし、それからその黒猫がテラスに来ることはずっとなかったのだ。それが、私の誕生日に突然現れた。このことを、偶然とは言いたくない。

去年2匹のことを思いながら拙い小説を書いていた。ある日夜ベッドで寝ていたら、何かが布団の上に乗ったような感触があった。ネコが布団の上にジャンプしたような感触、そう、本当にそこにはウニとトトがいたのだ。私は興奮して、写真を撮ろうとしたが、なぜだかスマホのシャッターが押せない。写真に収めることは許されていなかったのだろう。ウニを撫でても、透けてしまい柔らかい感触を感じることができなかった。それでも、それから少しの間、ウニは以前のように私の頭の横、枕の上に腰を下ろし、くつろいでいた。トトもまた、以前のように夫に寄りかかって寝ていた。それはただの夢かもしれない。でもあの感触は決してただの夢ではなかった。私が2匹のことを書いていたから、応援しに来てくれたのだ。

私のnoteのアイコンの写真、白いネコのティーポット、これが先ほど紹介したウニなのだ。

黒猫は今も時々テラスに遊びにきてくれる。警戒心が強く、私が見ていることに気づくと、すぐに柵を超えて逃げてしまう。しかし、たまに妙に懐いてくれることがある。そんな時はきっとトトパワーが働いているのだろう。

泣き虫の私は、この記事を書きながらもまた涙を流している。ウニとトトに、そして夫に心配をかけないよう、普段はメソメソしないように頑張っている。でも今日はきっと許してくれるだろう。あれからもう4年が経ったのか。

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