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【配給会社ムヴィオラのウラ⑤】“ムヴィオラ”という会社名は××××からだった!

6/1から都内の映画館もいよいよ再開。
どの映画館も消毒やソーシャルディスタンシングでまだまだ手探りの営業です。それでも映画館で映画が見たかったという観客には(私にも)、これは朗報です。映画の経済を動かしつつも、感染には重々注意して、もう二度と映画館が休館しなくていいように努めなくては。


私たちの見放題配信パックもまだまだ続きます。
配給会社の仕事について、配給会社それぞれの個性について、もっと身近に感じてもらえるように頑張ります。

さてと。きょうは会社の名前について書こうと思う。
「ムヴィオラ=MOVIOLA」である。

2000年に会社を立ち上げる時、会社名をどうしようかと考えるのは、楽しいような、困ったような、そんな気分だった。何しろ映画会社には、素敵な、おしゃれな、かっこいい、カタカナ名前の会社が多いのである。
この道の諸先輩がたに、どうやって名前をつけたか聞いてみると、さすがに映画会社だけに「好きな映画にちなんで」という会社も。このHelp!The映画配給仲間のザジフィルムズさんは、『地下鉄のザジ』社名の由来とnote記事に書いている。ほかにも、サム・ペキンパー監督の『ケーブルホーグのバラード』からとったケーブルホーグという会社もあった。

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『パラサイト』の大ヒットで有名になった、わがミニシアター村のきらめく星ビターズ・エンドさんは、社名の由来をHPでこう紹介している。「最後まで(to the bitter end)屈しない者(bitter-ender)Roxy Musicの1stアルバム『Roxy Music』に収録されている曲『Bitters End』」。かっこいい。

他社の名前の由来を知るほどに、どうしようと悩んでしまった。

そして私は結局、好きな言葉を社名にすることにした。それが「ムヴィオラ」だった。じつはムヴィオラとはフィルム編集に使用するデバイスの名前だ。英語のwikiを検索すれば、すぐにわかってしまう。

ムヴィオラ とは、映画フィルムの編集の際にフィルムの画像を閲覧するための装置である。世界初の映画の編集のための機械であり、1924年にイヴァン・セリュリエ によって考案された。企業としてのムヴィオラは今もなおハリウッドで操業中である。 ウィキペディア

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大好きなジョン・フォードやブニュエル、黒澤明といった名監督の本を読んでいると、「ムヴィオラを使って編集を。。」「ムヴィオラのおかげで編集が。。」と頻繁に出てくる。当時はどんな機械なのかわからなくて、ただ憧れた。音の響きが大好きで、まるで良い映画ができる魔法の言葉のようで“ムヴィオラ”と口にするのが大好きだった。

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そして2000年頃は、ノンリニア編集に押されて、ハリウッドの「ムヴィオラ社」は事業を撤退するかもしれないという噂があったのだ。「ムヴィオラ社」がなくなってしまうなら、映画が美しいフィルムだった記念に、私がその名前をいただいても怒られないかな。そんな気持ちで勝手に名前をいただいてしまったのだ。

ところが「ムヴィオラ」社はなくならなかった。

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それはスティーヴン・スピルバーグのせいなのである。
スピルバーグはフィルムが大好きで、すべての映画をいまだに「ムヴィオラ」を使って編集している珍しい監督。スピルバーグの編集者として知られるマイケル・カーンは、スピルバーグ作品はいつもムヴィオラを使うのだと言っている。そのスピルバーグの助言によって、デジタル並の精度の編集を可能にするムヴィオラが『プライベート・ライアン』の時に開発されたのだと聞いた。さすが、スピルバーグ。
そんなわけでハリウッドのムヴィオラ社は今も元気である。

過去に出会った監督で、私が会社名を名乗った時に、「その名前はもしや。。」と言い当てた監督は、メキシコのアルトゥーロ・リプステイン、フランスのフィリップ・リオレとアルノー・デプレシャンだった。
もっともみんな口に出さないだけで、きっと気づいてるんだろう。そこはすこし恥ずかしい。

ムヴィオラ 武井みゆき

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