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困った身内も見放せない「バットランズ」

公  開:2023年
監  督:原田眞人
上映時間:143分
ジャンル:犯罪/サスペンス

悪いことしてる人にも、生活があるのメェ~

特殊詐欺と呼ばれる犯罪があります。

有名なものでいえば、オレオレ詐欺とかがわかりやすいでしょうか。

電話口で息子のふりをして、母親から金品をだまし取ったりすることが多く、母さん助けて詐欺という名称に変更されたものの、定着することなく自然消滅したりもしました。

犯罪というのは良くないことではありますが、こと創作に関して言えば、そんな悪い人たちも肯定するのが、懐の深いところでありますし、そんな人たちもたくましく生きていたりするわけです。

詐欺を計画する人間がいて、それを実行する人間がいる。

彼らは彼らで、組織的に物事を行っておりまして、上下関係だって当然発生してきます。

原田眞人監督による「バットランズ」は、そんな特殊詐欺グループの犯罪模様の一端がわかる作品になっているのが魅力です。

三塁コーチ

「万引き家族」や「百円の恋」などで圧倒的な演技力をみせた安藤サクラが主演となっておりまして、特殊詐欺における、受け子に指示を出す人物として行動します。

三塁コーチと呼ばれる立場で動いたりする、安藤サクラ演じる主人公のネリは、犯罪組織の人間でありながら、もっと受け子にお金を渡してあげたい、と思っていたりと、組織なりに中間管理職の大変さもみてとれたりします。

ニュース等で、「受け子」であるとか「出し子」といった名称は知っていても、実際にどのような行動をするのかは、想像の域をでないところでしょう。

「バットランズ」では、そんな特殊詐欺グループのやり方であるとか、取り締まる警察の捜査もテンポよく見ることができます。

職業ものの作品というのは、自分の知らない業界のことがわかって面白いというのがありますが、バットランズは、そんな犯罪組織事情がわかります。

わりと聞き取れる

原田眞人監督といえば、「関ヶ原」にしても、「燃えよ剣」にしても、セリフが聞き取りずらい、ということで定評のある監督です。

聞こえないなりに、なんとなく言わんとすることがわかる、っていうのが面白いところでもあるのですが、「バットランズ」では、バリバリの大阪弁を聞かされることになります。

原田監督作品の中では比較的聞きやすい分類だとは思いますが、もし、聞き取りずらいことにストレスを感じる場合は、そういうものだ、と思ってもらえると気にならないと思います。

勁草

本作品は、黒川博行による「勁草」が原作となっています。

ですが、原田監督によって、主人公は男性から女性に変更となり、大筋の内容は変わらないにしても、安藤サクラ演じる主人公と、その弟の物語へと後半は意味合いを変えていきます。

物語の前半は、特殊詐欺グループのメンバーである主人公は、西成のいわゆるドヤ街に住んでおり、そこで生きる老人たちと生活しています。

日本であるはずなのに、どこか時代や場所が日本ではないような場所

この地域が気になったかは、レポなどの体験本も存在していますので、是非、ご覧いただきたいと思います。

困った身内

さて、安藤サクラ演じる主人公は、やっていることこそ特殊詐欺グループの片棒を担いでいますが、お金さえ貯まれば、海外で楽隠居したいと思っています。

しかし、それを許さないような事情もあります。

それこそが、山田涼介演じる弟の丈なのですが、彼は、かなり困りものです。

友人や知人であれば縁を切ればいいかもしれませんが、家族となるとそうもいきません。

そんな、家族と自分の人生をどう考えていくのか、というところも描かれています。

詐欺も大変

ニュースでは被害総額が大々的に報じられますが、「バットランズ」をみていると、額面こそ大きく聞こえますが、リスクの割には手元に残る金額はかなり少ないように感じてくるから不思議です。

下準備の為に、何件も老人の家を周り、対象に近づいて言ったりする作業は、普通に仕事をしたほうがいいんじゃないか、とすら思ってしまいますが、彼ら、勁草なりの生き方というのを見せてくれます。

「バットランズ」は、犯罪者の話ではありますが、現代社会の中において、決して順風満帆ではなかった人たちが描かれています。

結果として、犯罪まがいのことを行ったりしますし、登場する老人たちの多くもまた、人に後ろ指をさされるようなことをしてきた人たちばかりです。

しかし、そんな人たちも、しぶとく生きている、そんな姿を見せてくれる作品となっています。


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