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田舎暮らしの怖い現実Disney+ドラマ「ガンニバル」

公  開:2022年
監  督: 片山慎三、川井隼人
話  数:全7話(シーズン1)
ジャンル:サスペンス/ホラー
見どころ:暴力

田舎での生活は大変です。

都会であれば、隣に住んでいる人のことを知らなくても特に問題なく生活することができますが、これが、住人が300人程度の村となってくると、人間関係はいやがおうにも濃くなってしまうものです。

ドラマ「ガンニバル」は、そんな村社会での息苦しいやり取りをみせつつ、村に隠された秘密がにじみ出てくる作品となっています。

もともと漫画連載されていた作品ではありますが、柳楽優弥主演でドラマ化された本作。

反骨精神が旺盛な人であれば、常に頭に血が上るような感覚を与えられることになりますし、実際に田舎で暮らしている人たちからすると、大なり小なり頷く部分が多いと思います。

田舎のヤンキー

「ガンニバル」の舞台となるとは、林業で成り立っている限界集落のような村、供花村です。

村社会となりますと、何かにつけて飲み会があったり、村主催のイベントには事実上強制参加だったりと、都会の生活に慣れている人間からすると、ストレスを感じる行事が盛りだくさんです。

特に、プライバシーというものもあってないようなものとなっていますし、村の外から来た人間に対する排他的・差別的な感覚は見事です。

柳楽優弥演じる主人公は、そのあたりの洗礼をばっちり受けることになります。

山で遺体が見つかって、熊の仕業だと騒ぐ周りをよそに、主人公である阿川は、「これ、熊じゃねぇな」とつぶやきます。

非常に論理的に説明しているにも関わらず、村人は、

「ヨソもののアンタに村の人間のことバカにされるのは我慢ならね

と、突然怒り出すのです。

見ている我々も混乱しますが、相手は猟銃を構えており、一秒後には死んでいても不思議ではない状況。

村社会において、絶望的なまでに発想や思想が違う相手と、どうやって仲良くしていけばいいのか、という状況が、物語の前半にのしかかります。

理解がある妻なのかない妻なのか

主人公が供花村にやってきたのは、事情があります。

吉岡里穂演じる美人な奥さんと、小さい娘。

家族にはとある問題が横たわっており、田舎での生活でそれを改善しようという意図もあって、嫌になったからすぐに村を出ていく、ということもできないところが厳しいです。

田舎の人たちとの微妙な緊張関係を保ちつつ、自分の前に駐在として赴任していた人物が、村で行われている食人文化について調べるにつれて、命を落としたのではないか、という疑念が深まるにつれて、村人との亀裂も深くなっていきます。

ドラマ「ガンニバル」は、脚本が非常に優れています。

村を牛耳っている後藤家。

ひと悶着ありながらも、距離を置くことにした主人公。

後藤家以外の村人といい感じの関係を築けてきたと思ったら、今度は、村人は村人で、色々要求してくるようになったります。

都会の人間がもつ、村社会の濃厚な人間関係が、そのまま主人公たちのストレスや問題になっていくのが面白いところです。

結果として、主人公は、村の秘密を暴かざるえない状態となっていき、物語が強制的に動き出していきます。

暴力表現

本作品をみていて思うのは、小さな集落で楽しく平和に生きることの難しさです。

嫌になったら引っ越ししたらいい、なんて安易な行動がとれない世界。嫌になったら転職というわけにもいかない田舎暮らしの中で、人間関係というのは最優先です。

それが、うまくいけば快適に過ごせますが、馴染めなければ、大変な苦痛を伴います。

つまり、村で生活する以上、村人とトラブルを起こすことは致命傷になるということです。

しかし、主人公は、ちょっと口が悪いです。

村の有力者がこうしたほうがいいよ、と親切心(正確には違うのですが)でアドバイスしたのに対し、柳楽優弥演じる阿川は「うるせぇ」と小声で言ってしまうのです。

賢明な皆さんは、こういうことをいうとろくなことにならないとわかっているでしょうが、ついつい、主人公は子供のように反応してしまうのです。

すると、怒る起こる。

次の日からは、村人全員から「ケンカはいかん」といわれて、まともに生活できなくなります

暴力的な後藤家という存在。
直接的ではないにしても、精神的に圧力をかけてくる村人。

失語症の娘や、いらいらしている嫁。

事件を解決することが村での生活を危うくすることに繋がるにも関わらず、捜査をしてしまう主人公。

感情的なジェットコースターを、村社会を舞台にしたドラマで味合うことができます。

爽快感

逆に言うと、村で仲良くする気がなければ、どうなってもいい、という考えもできます。

散々嫌な目にあいながら、世間体の為に大人しく引き下がっていた主人公は、もともとは、かなりの暴力警官という設定です。

主人公の暴力性が家族の関係をおかしくした、ということもあり、色々な枷がありながらも、主人公が、村人たちに対して言い放つセリフの爽快感は、村社会や閉鎖的な人間関係にうんざりしている人たちからすると、すっきりする側面もあります。

閑話休題

小さな村で行われている奇妙な因習にまきこまれる主人公。

最近では、「サマータイムレンダ」が面白いのでオススメです。

もともと島の住人だった主人公が、家族の葬儀でもどってみると、奇妙なことがおきていて、というループものの作品となっています。

何度となく同じ日が繰り返されるうちに、島で起きている奇怪ない事件に気づき、それを解決するために動いていく。

ガンニバルを気に入った人は、方向性がライトになった「サマータイムレンダ」も楽しめると思われます。

「ガンニバル」は、漫画原作ということもあって、現代においては突飛な設定に思えてしまうかもしれませんが、「誰も知らない」で有名な柳楽優弥の圧倒的な演技力。

基本的に、役者の演技が抜群であり、Disney資本であるためか、非常に予算が豪華であるため、見ごたえのある作品となっていますので、村社会でドキドキしたい人は是非みてみてもらいたいと思います。


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