左手が二つある隣人「ファニーゲーム」
公 開:2001年
監 督:ミヒャエル・ハネケ
上映時間:109分
ジャンル:スリラー/ドラマ
見どころ:リモコンの使い方
左手を二つ持つという英単語があります。
「Ambisinistrous」というのが左手を二つ持つという意味の単語ですが、日本人であれば、使いどころがまったくわからない謎な単語です。
ですが、海外ではどういうときに使われている表現なのかがわかる映画があります。
オーストリア映画なので英語ではないのですが、左手が二つあるというのは、こういうときに使うのか、というのがわかるのが「ファニーゲーム」となっています。
ドイツ映画「ファニーゲーム」では、お隣さんの知り合いだと思っていた人が「卵を貸してください」とやってきて、卵を落とすところから始まります。
日本人的には、お醤油貸してください、というのが昭和ドラマ的かもしれませんが、卵というチョイスが絶妙だということが、物語を見ていくにつれてわかります。
卵を次々と落としては、「なんで卵をくれないんですか」と要求してくる男二人。
なんかかみ合ってないな、と思いながら、その態度の悪さでイラっとして言い返すと、立場が弱いと思っていた男たちは平気でやり返してきます。
そして言うんです。
「怪我をさせてしまったのは悪かったが、あなたのせいでしたよ」
話が通じない相手というのはいるものでして、善意で接しているお金もちからすれば、どうしたらいいのかわからなくなってしまうのも仕方がありません。
のらりくらりと話を大きくして、いつの間にか監禁されている家族。
まるで「ジョジョの奇妙な冒険」でお馴染みの荒木飛呂彦先生の描くキャラクターとして出てきそうな男二人組が、ちょっとした言葉のやり取りを一気に広げていくところは、「岸辺露伴は動かない」とかで出てきそうでもあり、参考にすらしているんじゃないかと思ってきます。
ハリウッド映画を見慣れていると、最後に犯人は捕まったり、主人公は勇気と知恵で窮地から脱出すると思ってしまうかもしれませんが、本作品は、そんな幻想を悉く打ち砕きます。
人生において、そんな出会いがないことを祈りつつ見たくなる映画「ファニーゲーム」。
平凡な人の好さそうなお兄さんが、「卵貸してくれませんか」と来ても、決して扉を開けてはいけません。