精神という謎。映画「3人のキリスト」
公 開:2017年
監 督:ジョン・アヴネット
上映時間:109分
ジャンル:ドラマ
見どころ:原罪を背負う姿
ローマ教皇が二人いてもいいかもしれませんが、イエス・キリストが3人いるのは、色々不味いでしょう。
「3人のキリスト」は、妄想型統合失調症によって、自分をキリストだと思い込んでいる患者3人を、一同に集めたらどうなるだろう、という露悪的ともいえる治療から発展していく物語です。
役職であれば複数人いても不思議はないですが、キリストが複数人というのは、見過ごすわけにはいきません。
矛盾という言葉がありますが、どれかが本物なら、偽物があぶりだされるだろうという、面白すぎる発想が、実際に心理実験として行われていた、ということ自体が驚きです。
当時の精神病治療というのは、「カッコーの巣の上で」に代表されるように、暴れる患者にはロボトミー手術で強制的におとなしい人物に改造をしてしまうのが、悪いことと思われていなかった時代だったりします。
リチャード・ギア演じる主人公が勤めることになった病院でも、電気ショックを与える治療が平然と行われていまして、現代の我々からすれば、たんなる虐待にしか見えず、主人公もまた、その治療を見て心を痛めています。
「3人のキリスト」は、設定だけ聞くと、出オチのような作品に思えるかもしれません。
しかし、この作品は、自分とは何かという問いかけや、自分が自分のまま生きられなかった人を描きつつ、彼らのもっている信念も描かれる作品となっています。
彼らのうち誰かが本物なのか?、と思ったりしますが、そういうのを楽しむ作品ではなく、彼らの変化であったり、どうやって問題に向き合っていくのか、彼らの純粋さを含めて、見どころのある作品となっています。
患者を通して、自身もまた、自分のココロを覗き込まれている、そんな気がしてきます。
本作品のもととなったのは、「イプシランティの3人のキリスト」という心理実験となっており、そこで指摘されていた非人道的ともいえる行いについてもちゃんと言及されているところも正直に描いています。
実験がうまくいきそうになったら、急に参加しようとしてくる上司とか、組織あるあるも含めて、最後まで飽きさせない面白い作品となっています。
口喧嘩をしてみたり、掴みかかったりしていた3人の自称キリストおじさんたちが、仲良くなっていくのもほのぼのしてていい感じです。
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