友達は、SNSにも現実にもいないかも。映画「アンフレンデッド」
公 開:2016年
監 督: レヴァン・ガブリアーゼ
上映時間:83分
ジャンル:ホラー/オカルト/サイエンス
昨今ではSNSを中心としたコミュニケーションスタイルが一般化して久しい世の中になっています。
現実の友人関係とSNSが一致している人もいれば、まったく、関係ないコミュニティに所属している人もいるでしょうが、いずれにしても、様々なSNSツールによって、人々は繋がることができるようになってきています。
遠くの土地にいってしまった友人と連絡をとる手段として優れている一方で、SNSは悪い面も当然あったりします。
デジタルタトゥーと呼ばれるものもありまして、あらゆる人が見ることができるインターネットの海の中に、自分の見られたくないデータが流出してしまったとき、現実もウェブの世界も、居場所がなくなってしまう人がでてきてしまう事実もまた、発生してしまうのです。
さて、映画「アンフレンデッド」では、2016年に公開された映画ですが、現代でも十分に起こりうる恐ろしい出来事を、ホラーという形で描いた作品です。
恥ずかしい動画の投稿
映画「アンフレンデッド」では、まず、一人の女学生の死が描かれます。
インターネットの世界では、再生数が大きな影響を与えます。
そして、あらゆるものが娯楽になってしまう世の中においては、自分の死すらも、他の動画と同列に扱われてしまう現実も描かれます。
拳銃で自らを撃つ姿をインターネット上に公開した、ローラ・バーン。
彼女は、自分の恥ずかしい動画がインターネットに投稿されたことを苦にして、動画を撮影されながら自ら命を絶ってしまいます。
インターネットが発達したことによる悲劇ではあるのですが、本作品は、インターネットをつかったホラーとなっておりまして、便利に使われているコミュニケーションツールの、恐ろしい側面を描いています。
様々なSNSツール。
自らの死を動画投稿サイト(LiveLeak)に投稿。
その後、その女性の友人たちは、何気なく生活をしています。
そして、仲良くグループであるメンバーは、skypeで集まって話をしたりしています。
映画「アンフレンデッド」では、2016年の作品ではありますが、当時よくつかわれていたSNSツールがふんだんに使われているのも特徴といえるでしょう。
facebookや、instagramといったもの、メールや、ショートメッセージのやり取り等、様々なものが使われています。
実際の効果音がつかわれているため、作中で登場人物がつかっているものを見ると、思わず自分じゃないかと驚いてしまう人もいるかと思います。
主に使われているのはskypeですが、呼び出し音には何度も驚かされます。
ちなみに、本作品はSNSをつかったホラー映画ですが、SNSを活用して、行方不明の娘を探す映画「search/サーチ」もおすすめです。
娘のことがよくわからなかった父親が、失踪した娘を探すために、SNSをつかって娘のことを調べ、何に悩んだり、どういう人間関係を築いていたかを知っていく物語となっています。
また、役所広司主演の映画「渇き。」では、行方不明になった小松奈々演じる娘を探す父親が、やがて、娘の化け物のような真実を知っていくというのですが、これをもっとマイルドにして、SNSを通じて知っていくという点において、「search/サーチ」は面白いところです。
「アンフレンデッド」は、パソコンの画面だけで物語が進行していくストイックさと、当時の若者が、色々なツールをつかって、複雑にやり取りをしている姿が面白いです。
SNS人狼ゲーム
5~6人がある程度の仲のいいメンバーだったのでしょうが、彼らは、Skypeで集まって話をしています。
主にブレア・リリーという女性のパソコンから物語を見ることになるのですが、Skypeをしながら、別のメッセージを送ってみたりと、同時に様々なやり取りが行われているので、混乱しそうになるところです。
みんなで話をしているけれど、一方で誰かを疑っていたり、調べてみたりと、水面下のやり取りも含めて、目が離せないつくりになっています。
ホラー映画なので、登場人物たちが置かれている状況は、霊的なものの仕業なのですが、ホラー映画という前提を考えないでみてみますと、サイバーテロによって仲間割れが発生しているようにも見ることができますし、人狼ゲームのようなやり取りにも見えてきます。
観客である我々は、心霊現象でSNSのボタンが押せなくなったりしているし、勝手に、写真が投稿されたりしているのに、仲間同士で疑心暗鬼になっているなぁ、と思ったりしながら見ることになるところは面白いです。
ですが、幽霊の嫌がらせなんだろうと思っていると、ジャスという女性が、アメフト部の全員とデートとしていたとか、関係をもっていたのは二人だけだ、と暴露大会が始まりだすと、たんに、悪霊の仕業という恐ろしさよりも、人間の醜さがまろびでてくるようになってきます。
Never Have I Ever
ここからは、ネタバレを入れて書いていきますので、もしまだご覧になっていない人がいる場合は、作品をみてから戻ってくるか、あるいは、ネタバレしてもいいと思って見ていただけると、助かります。
さて。
本作品は、仲良しグループたちがSNSで崩壊していく姿を描いています。
単純に霊によって祟り殺されるわけではありません。
ギークな雰囲気の小太り男であるケンだけはかわいそうですが、それ以外の人物は、正直、いい人たちではありません。
ただ、人間には守りたい尊厳といいますか、外面というのはあるもので、Skypeに現れた謎のアカウントbillie227は、そんな彼らの自尊心を一枚ずつはがしていきます。
特徴的なのが、『Never Have I Ever』ゲームです。
これは、海外ではよくあるらしいのですが、一度もxxをやったことがない、と宣言していくゲームです。
お酒を飲んだことがない。
人を叩いたことがない。
盗みをしたことがない。
といった宣言を行い、したことがある場合は、指を折り曲げたり、何等かの罰ゲームを受けたりする遊びです。
自分しか知らない秘密に対して、やった/やらない、で反応を示すというゲームです。
極端に言えば、自分の秘密を暴露することで、グループ内の結束を高めたりする遊びだと思ってください。ただし、本作品では、命をかけたデスゲームとなっています。
「ブレアが摂食障害だと、噂を流した」
いきなり、なんてことを、と思うのですが、
「私よ」と告白。
そして、指を一つおります。
こうして、仲良しグループは、聞きたくもない事実を共有していくことになり、最後には、恐ろしい事実が確認されることになるのです。
全員、ダメ人間
本作品は、出てくる登場人物がもれなく(ケンは別として)、人間的にダメな奴らです。
一見仲良くにみせつつ、簡単に悪乗りしてしまったり、ふざけて人を傷つけたりします。
パソコンの調子が悪くなっておかしくなっているようにも見えたりしますが、本質的に、彼ら全員が、大なり小なりひどいことをしています。勿論、殺されていいことにはなりませんが、共感できる人物が一人もいないことも面白さの一つといえるでしょう。
最後まで映画を見終えると、あんな形で動画を世間にさらされて、しまいには、友人と思っていた人たちのその後をみていると、まぁ、亡くなったローラ・バーンというキャラクターが、悪霊になりたくなる気持ちもわからなくはないかもしれません。
本作品は、いわゆる、モキュメンタリー的なつくりになっておりまして、有名作品だと「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思い出す人も多いかと思います。
そして、昨今ではテレビや映画館ではなく、パソコンのディスプレイで映画を見る人も多いと思いますので、画面上で全てが進んでいく作品との相性もいい時代になってきたように思います。
作中ででてくるSNSツールは、パソコンの画面含めて、非常になつかしさを感じます。
進化が早いパソコン関係のツールが作中にでてくると、後から見返した場合の、古さが際立つという点はあるにしても、今も変わらない恐ろしさをもっているのが「アンフレンデッド」となっています。
以上、 友達は、SNSにも現実にもいないかも。映画「アンフレンデッド」でした!
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