華麗なる詐欺は段取りが10割「スティング」
公 開:1974年
監 督: ジョージ・ロイヒル
上映時間:129分
ジャンル:クライム/犯罪コメディ
人を騙してはいけない。
それは、誰しもが知っていることですが、ジョージ・ロイヒル監督による「スティング」は、そんな詐欺映画の金字塔ともいえる作品となっています。
「スティング」は1973年の若干古い作品ではありますが、往年の名優であるポール・ニューマンが出演していることもポイントです。
ポール・ニューマンといえば「暴力脱獄」や「ハスラー」で有名ですし、「明日に向かって撃て」も外せない作品だったりします。
まさに銀幕のスターだったわけですが、「スティング」では、出演作の失敗が相次ぎ、勢いが落ちている時期だったこともあって、引退した詐欺師を演じているところに別の意味合いもみてとれる面白さがあります。
引退してなぜか、メリーゴーランドの修理をやっているところは、謎だったりしますが、落ちぶれた感がよい感じだったりします。
また、「スティング」は、色々な詐欺のオンパレードとなっています。
相手を油断させてサイフをとるようなものもあれば、籠脱け詐欺と呼ばれる他人の会社をうまくつかって相手を信用させてみたり、カードにいかさまをしてみたりと、様々です。
詐欺というのは、人の思い込みですとか、油断、善意をうまくつかって行われることが多いものです。
本作品の主人公は当然、詐欺師の男です。
これまた名優であるロバート・レッドフォードであり、今みても豪華な俳優陣となっています。
詐欺はいいことではないですが、本作品の詐欺はどこか憎めないところがある一方で、その一線を超えた悪いものに対して、人殺しではない方法で仕返しをしよう、という内容となっています。
とはいえ、人をだます為には、信用してもらう必要があります。
「スティング」は、詐欺をするためにまずどうやって人に信用されるのか、という入念な準備を行っており、その段取りも含めて面白いところです。
そして、詐欺の内容が大がかりになればなるほど、関わってくる人数が増えていきます。
ジブリ映画で例えますと、「紅の豚」で、ポルコ・ロッソの飛行機を新造する際の工房のようなにぎやかさ、といえばいいでしょうか。
詐欺師たちの面接シーンなんかもほのぼのとして面白いのです。
彼らには彼らなりの働き方があるのだなぁ、と思える生活感が伝わってきます。
どこまでが相手をだます為の演技なのか、仲間すら裏切ろうとしてしまうのか、そのハラハラ感は最後までわかりませんし、相手がだまされて信用してしまうところなどは、映画とはいえ、うまいものだなと関心してしまうところです。
飲んだように見せるために、顔に酒をかける、といった涙ぐましい努力なんかもあります。
マフィアのボスをその気にさせるシーンなんかは、絶妙です。
また、対象の人物がくるまでは、詐欺に加担する人たちは普通に話をしているのに、あっという間にお店のお客になったりするシーンもまた、プロフェッショナルな詐欺師を見せてくれるところとなっております。
ジョージ・ロイヒル監督は数多く作品をだしていますが、やはり、代表作として見逃せない作品が「ガープの世界」「スローターハウス5」。そして、「スティング」となっていますので、気に入った方で見ていない方は、是非合わせてみてみてもらいたいと思います。
ロバート・レッドフォードとポール・ニューマンのコンビが好きであれば、アメリカン・ニューシネマの代表作品の一つであり、同じくジョージ・ロイヒル監督の「明日に向かって撃て」も、やはり見逃せないところです。