熱烈ジャンプは捗らない。映画「哀れなるものたち」
公 開:2024年
監 督: ヨルゴス・ランティモス
上映時間:141分
ジャンル:コメディ/ドラマ/サイセンス
見た目は子供、中身は大人は、名探偵コナンですが、見た目は大人で、中身が子供の場合は、なかなか大変です。
自ら川へと身を投げて命を絶った妊婦。
偶然遺体を見つけたゴットウィンなる医師が、お腹の中でまだ生きていた子供の脳みそを、母親の頭に移植して生き延びさせるというとんでもないことを行います。
古典的な名作である「フランケンシュタイン」を彷彿とさせる人造人間である主人公のベラは、まわりを翻弄していきます。
エマ・ストーンの怪演は凄まじく、女優としてそこまでしていいのか、というところまで見せていますので、「ラ・ラ・ランド」のイメージで見てしまうと、驚いてしまうかもしれません。
もともと、ゴールデングローブ賞で主演女優賞にノミネートもした映画「小悪魔はなぜモテる」においても、性的な面を押し出していた内容でしたが、ここまで凄まじいものになると、どこまで突き抜けるのか恐ろしい女優です。
なにせ、本作品は、R18+作品となっていまして、よいこのみんなには制限がかかっている作品でもあるのです。
頭の中は子供というか、幼児といった状態のベラは、家の中でおしっこはするわ、嫌いな食べ物は吐き出すわで大変なことになります。
そこに振り回される男たち。
本作品は、「ロブスター」や、「女王陛下のお気に入り」でお馴染みのヨルゴス・ランティモスとなっているだけあって、支配されるものとするものの逆転やその関係が描かれます。
特に、子供は少しずつ倫理観を身に着けて、身体も成熟していくわけですが、いきなり、頭は幼児で身体だけが大人となりますと、悪いことを考える大人に簡単に騙されてしまうものです。
R18作品ということもあって、性に目覚めてしまったエマ・ストーン演じるベラは、倫理観とは無縁で熱烈ジャンプに励みます。
ある程度の年齢になるとできてくる分別がないのです。
それでも、そんな彼女に恋をしてしまう男たちの、情けないこと。
見た目は大人の女性であり、性に奔放な彼女は、知識が増えていくにしたがって、哲学や社会に興味をもつようになり、やがて、一緒にいた男を見限ったりするのです。
「哀れなるものたち」は、どこまでも主人公の成長物語となっており、同時に、振り回される男たちへの強烈な皮肉にもなっています。
何も知らないときもまた自由であった彼女は、不自由になりながらも、やがて、また自由になっていくのです。
ちなみに、本作品は、現実の地名などがでてきますが、カラフルな色彩設計が素晴らしい別世界となっています。
ウェス・アンダーソンのような色彩設計に、印象的な衣装の数々。
物語だけではなく、美術やセットにも力が入っていますので、奇妙な世界に張り込んだような感覚を味わうことができます。