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今こそみるべしパンク映画【パティ・スミス ドリーム・オブ・ライフ】
本作はパンクのドキュメンタリーでもなければ、「ニューヨーク・ドール」のように復活ライブまでを追った映画でもない。
等身大のパティ・スミスに密着した作品。
はじめは、アート作品のように錯覚してしまうかもしれないが、やはり時折挿入されるらライブ映像では只者ではない様がはっきり映し出される。
その普段は抑えられているかもしれないパンクの本能が剥き出しになるとその本性は変わってはいないことがみてとれる。
本作は、紛うことなく彼女のパンクスピリットに触れることのできる、これはパンク映画だ。
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スティーブン・セブリング監督のデビュー作は、1988年のパティの同名アルバムにちなんで名付けられたドキュメンタリーである。
パティは「パンクロックのゴッドマザー」として称されているが、ミュージシャンであるだけでなく、多方面にわたって活躍するアーティストであり、反逆者、現代哲学者でもある創造的探究心の持ち主。
叙情的で意識の流れを描いたアプローチで、パティの唯一無二にして、その精神世界が万華鏡のように輝いているさまを捉えようと試み、約10年かけて制作された。
その長い構想期間のおかげで、親密さと気楽さが生まれ、パティの内面と外面の世界まで浸透すること成功した。
しかも、冒頭から死の匂いが漂い、彼女の死生観が終始濃厚に示されている、過言現在死後の世界がシームレスにつながり、その境界線はぼんやりとしてくる。
極論となるが、パンクは生そのものの主張であるが、その対極の死への姿勢もまたパンクだ。
パティのデビューアルバム「Horses(1975)」は、元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルがプロデュースし、象徴的なシングル「Gloria」と「Land of a Thousand Dances」が収録されている。
アルバムのオープニング曲「Gloria: In Excelsis Deo」は、情熱的なパンクロックのアンセム。「イエスは誰かの罪のために死んだが、私の罪ではない」という印象的な歌詞で始まり、エネルギッシュなリズムが響き渡り、パンクの反抗的な精神として刺激的な雰囲気を作り出す。
「Break it Up」は、ドアーズの故ジム・モリソンについての曲。テレヴィジョンのトム・ヴァーレインがこの曲ではギターも担当し、その苦悩に満ちたギターがドラマチックなイメージを強調している。
「Land 」は、壮大なトラックで、主人公のジョニーがレイプされ、コカイン中毒になるという、サイケデリックな世界への約10分間の冒険である。
「Elegie」は最後の曲に相応しく、パティの友人であるジミ・ヘンドリックスを偲んだ曲で、ピアノとギターの悲しげな響きが幽霊の嘆きのように表現されている。
「Horses(1975)」は、パンクの名盤の 1 つとみなされているが、単なるパンクのそれではない。家族、死、セックス、ドラッグなどのテーマを融合させており、ジャケットから冷たい視線を向けるボーカリストがみつめる先は謎に包まれている。
そう、それは本作「パティ・スミス ドリーム・オブ・ライフ」と同様であるかのように。
noteではパンク映画を紹介。
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