今こそみるべしパンク映画【白い暴動】
本作「白い暴動」は、ザ・クラッシュの曲と同タイトルだが、クラッシュの映画ではない(出演はしているが)。ルビカ・シャー監督による、1970年代後半のイギリスで実際に起きたロック・アゲインスト・レイシズム(以下:RAR)を描いたドキュメンタリー作品である。
当時のイギリスでは、ネオナチ政党であるイギリス国民戦線(ブリテッシュ・ナショナル・フロント(以下:BNF))による、イギリス国内のすべての移民に対して国外追放を訴える動きが台頭した。
この出来事は、40年以上前にイギリスで起きた事件を題材にしているが、描かれていることは、最近でも世界中で起こっていることと不気味なほど似ている。
この映画の持つ抵抗のメッセージは、パンク政治が依然として重要であることを示し、分裂勢力に対抗するために団結すれば何が達成できるかを的確に示してくれるている。いまこそみるべし。
白い暴動(2019年)
驚くべきことに、あるロック界のスーパースターのライブでは、観客の中の白人以外の全員に、会場だけでなく国から立ち去るように要求した。
この事件と連動するようにして、同様のミュージシャンたちによる一連の声明は、BNFを支持するものであった。
移民を排除しようとする白人至上主義者たちは、RAAからナチス扱いされていた。
この差別に反対するためにレッド・サンダース、ロジャー・ハドルらが立ち上がり、BNFに対抗する組織RARを発足・結成した。RARは、決意と怒りに満ちた音楽愛好家のグループも集まり、極右の台頭に対抗するネットワークを構築した。
当時、携帯電話もソーシャル メディアもなかったため、ボランティアを募り、チラシを配布、町中にポスターを貼り、クラッシュの白い暴動の歌詞を印刷した。
音楽と政治に関する情報誌を作り共有していた。クラッシュなどのインタビュー、BNFの最新の動向などが掲載されてた。その記事が、大手音楽メディアに取り上げられてから、本格的に事態は動き出した。
その記事と RAR について聞いた人々は、支援を示すピンバッジと引き換えに、寄付金や会費を組織の本部に送り始めた。
BNFに加担する政治家などから発せられるメッセージに不満を持つ、路上生活者、パブの人々、学校の子供たちまで参加した。彼らは、正義のための闘争を支援するために呼びかけたクラッシュに応えた。
これらRARの運動は、ロンドンでのパンクムーブメントが始まった頃と重なっており、パンクだけでなく、ポストパンク、レゲエ、スカなどのミュージシャンが集まった。
スティール・パルス、ギャング・オブ・フォー、シャム69などがさまざまな時期にコンサートを行ったが、最大のものは1978年だった。
RARはロンドンのトラファルガー広場から市内を横断し、BNF支持の中心地ビクトリア公園まで、行進とコンサートには約10万人が集まった。
本作は、当時のバンドのコンサート、その他アーカイブ映像、RAR の主要人物の現在の映像をミックスして没入感を与え、これが本物の DIY 運動だったことを明らかにした。
noteではパンク映画を紹介。
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