今こそみるべしパンク映画【ザ・スリッツ ヒア・トゥ・ビー・ハード】
世界初の女性メンバーだけによるパンクバンド、ザ・スリッツのドキュメンタリー。監督はウィリアム・バッジリー。
ピストルズ、クラッシュなど、この時期における英パンクバンドの大物たちは、このジャンルの圧倒的な男らしさを反映しているため、当時、女性が受け止められることは一般的ではなかった。
しかし、スリッツがすべてを変えた。スリッツは、女性らしさに対する一般の認識を変え、パンクの本当の意味を再定義したとされている。
スリッツのデビューアルバムはジャケットが非常に有名であり、強烈なインパクトを残すトップレスで泥まみれの3人組が濃い紫色の額縁に収まり、反抗的な精神が魅力的に写っている。
ザ・スリッツ ヒア・トゥ・ビー・ハード(2017年)
1976年、フラワーズ・オブ・ロマンスで活動していたドラマーのパルモリヴ、ギターのヴィヴ・アルバータインに、ベースのテッサ・ポリット、そしてヴォーカルのアリ・アップが加入してスリッツの初期メンバーがそろい、結成された。
1977 年、このラインナップは、クラッシュのホワイト ライオット ツアーにサポートとして参加。ツアーでは、バズコックス、ザ・ジャム、ザ・プリフェクトス、サブウェイ・セクトらが前座を務めた。
この時期のスリッツのライブは、ドン・レッツの「ザ・パンク・ロック・ムービー」 に収録されている。当時、レッツはスリッツのマネージメントをしていたが、このツアーの最中に彼はマネージメントには向いていないと気付き、映像作品を制作するようになる。
スリッツは、パンク界で広く交際関係があった事で知られ、パルモリヴは、ジョー・ストラマーとつき合っていて、ギターのヴィヴ・アルバータインはミック・ジョーンズとデート、シド・ヴィシャスとも付き合っていた。また、アリ・アップの母親はジョニー・ロットンと再婚した。
そのクラッシュの影響もあり、パンクからレゲエ、ダブにアプローチしたサウンドとなり、名作となったデビューアルバム「Cut(1979)」をリリース。
独特でキャッチー、熱狂的で爆発的な曲が並ぶ。「So Tough」はメロディが耳に残り、2分に満たない強烈なアップテンポナンバー「Shoplifting」、レゲエ色の特に強い「Newtown」、疾走感が気持ちよく、楽しい気分になる「Love Und Romance」等が続く。シングルヒットした「Typical Girls」ではアルバータインのギターが中毒性のある音をがなりたてる。ボーナストラックもベースのグルーヴ感が爽快な「I Heard It Through The Grapevine」なども収録されている。
スリッツは最初から型破りなバンドだった。アリ・アップは、ありのままの自分でいることを恐れず、ライブ中、ステージを自由に動き回り、必要とあればステージで放尿することさえした。バンドメンバーもそれを全力で支えることに尽くした。
スリッツが音楽と性別の壁を打ち破ったにも関わらず、何十年も過小評価されてきたが、映画により正当な評価を受けることになった。
フェミニストの姿勢を保ち、スリッツは音楽と外見を通して社会的慣習と戦った。
noteではパンク映画を紹介。
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