007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(原題:No Time to Die)
総合:★★★★★
┝構成 :★★★★★
┝演出 :★★★★★
┝映像 :★★★★☆
┝音楽 :★★★★★
└独創性:★★★★☆
ー基本情報ー
監督: キャリー・ジョージ・フクナガ
出演者: ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥなど
製作年: 2021年
★おすすめポイント★
①ダニエル・“ボンド”の集大成
②情にあふれるボンドの最終章
③007シリーズ史上泣ける作品
▼あらすじ
ボンドは00エージェントを退き、ジャマイカで静かに暮らしていた。しかし、CIAの旧友フィリックスが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。誘拐された科学者の救出という任務は、想像を遥かに超えた危険なものとなり、やがて、凶悪な最新技術を備えた謎の黒幕を追うことになる。
(公式サイトのINFOより)
▼構成
引退したジェームズ・ボンドだったが旧友のフェリックスと再会した事で、スペクター以上の敵の存在を知り、真相を追いかけると同時に、訣別したマドレーヌに再会し、緊張感とロマンスがあふれるストーリーになっている。結末は007シリーズ史上、衝撃的だった。
▼演出
最初のマドレーヌの幼少期で出てきた能面の男の登場は衝撃的だった。なぜ能面なのかと考えてしまい、意味を調べると興味深い。能面は文字通り、日本の伝統芸能、「能」で使われる仮面の事であり、主役(シテとも言う)がその能面をつけて登場する。主役は多くの場合、神様、鬼などの異世界の者であり、能面をつけることでそれらになりきり、現世と異世界をつなぐ役割を果たしている。本作で能面をつけたのはラミ・マレックが演じるサフィン。彼は幼少期に家族をマドレーヌの父親、ミスター・ホワイトに殺されていた。恨みを深く持ってしまったサフィンは能面をつけることで殺した人とその家族を地獄に引きずりこむ意味合いかと考えてしまう。
日本の部分といえば、サフィンのアジトは日本風だ。盆栽、畳、そしてサフィンが着ていた服など日本の部分が強い。キャリー・ジョージ・フクナガ監督は日系なため、彼のこだわりなのか。どの道、初期のボンド作品のオマージュにもなっているだろう。初期のボンド作品はカリスマ性抜群の悪役と立派なアジトはセットみたいなものだったから。
007作品に欠かせないのはボンドカーの演出。最後のダニエル・クレイグ作品で車から銃乱射するシーンは、昔のボンド作品を知っている人からすれば嬉しい演出だ。スタントもアクションの見応えも抜群。最後はシリーズ史上初かもしれないワンカット銃撃戦もお見事と言いたい。
▼キャラ
本作のダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドは新たな一面を見せてくれた。過去には仕事を辞めたいと思える人に出会い、愛を深く知ったボンドだが、今回は新たな愛情を知る事になった。マドレーヌと再会する事で思いがけない人物の登場。この人物に出会ったことでボンドは新たな目標が出来たのかもしれない。今まで以上にボンドに対する思い入れが深くなった。
▼その他
2006年から始まったシリーズにピリオドが打たれる時が来てしまった。批判の嵐を受けた時は、ダニエル・クレイグにとって苦い思い出だ。そもそも今までのジェームズ・ボンドは黒髪が多く、しかも180cm以上ばかり。初の金髪かつ180㎝未満だったため、今までのジェームズ・ボンドのイメージから遠くかけ離れていた。しかし公開されたら今までの批判の嵐が嘘かのように高い評価を得た。さらに3作目の「007 スカイフォール(原題:Skyfall)」はボンドシリーズの中で唯一、全世界興行収入が10億ドルを超えた作品だ。そんな輝かしい功績を残したが、次のジェームズ・ボンドは誰になるのか予想つかない。金髪ボンドが登場したのだからアフリカ系とか日系とか色々なジェームズ・ボンドがありえそう。もしくはラシャーナ・リンチが演じる新たに007の称号を得たノーミが、ジェームズ・ボンドがいなくなった後のストーリーの主人公になるのか。
▼この作品が好きな人へのおすすめ作品
ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの序章
→007/カジノ・ロワイヤル(原題:Casino Royale)(2006)
007×日本の作品を楽しみたければ、
→007は二度死ぬ(原題:You Only Live Twice)(1967)
本作と同様にラストが衝撃だった過去の007作品と言えば、
→女王陛下の007(原題:On Her Majesty’s Secret Service)(1969)