◯新作篇003 『冬時間のパリ』


(監督:オリヴィエ・アサイヤス/2018年/フランス)

@アップリンク吉祥寺

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一言でまとめるなら、「フォトショップみたいな映画」です。

人は皆それぞれの中に色んなレイヤーを持っていて、
レイヤーによっては人に見せたり、逆に非表示だったり、
あるいは透明度50%だったり。

それは結構というか、そりゃそうだろうというところなのですが、

劇中、「私小説家」レオナールの言動に顕著に表れるように、
みな自分の構成要素になかなかドメスティックに没入していきがちで、
他人のレイヤーには割と鈍感なんですよ、
自分自身を物語ってばかりいるから、他者や物事の多面性を忘れがちなんですよ、

…といったような暗喩がおもしろいです。

そしてある瞬間、
今の今まで非表示だったレイヤーがとつぜん表示されて、
ようやく目の前の相手の心情にハッとする。

ああそうか、自分以外の人間にも感情はあるのだと、
当たり前なのに忘れがちな事を噛みしめる。

その気付きを経て、
それまでバラバラだったファイルの別々のレイヤーが結合する。
その事を映画では、「レンズ豆くらいの大きさの…」と象徴して表現しています。

人間の負の面を鋭く切り取りながら、決して諦観に陥らず、
むしろ「世界は思ったよりもずっと優しいよ」と語ってくれます。

アップリンク吉祥寺にて、2月27日(木)まで。
https://joji.uplink.co.jp/movie/2020/4848

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