◯ 旧作篇『赤ちょうちん』
監督:藤田敏八 / 1974年
出演:高岡健二, 秋吉久美子, 河原崎長一郎
本篇:https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08FLCRFPK/ref=atv_dp_share_cu_r
予告篇
「いい映画」とは必ずしも「いい話」とは限らない。
この映画のテーマを強いて見出すとしたら、「正気と狂気の違いとは」という問いかけでしょう。
思い返せばそういうフシはあったけれども、意思の疎通に問題はなかった。
しかしそれは“たまたま噛み合っていただけ”であって、実は他人同士の認識なんてものはおぼろげで、危うくて、脆い。
故にある瞬間、なんてことはない、針の先ほどの事がきっかけで音を立てて崩れてしまう。
そんな、人間 —— humanというより字義通り「人と人との間柄」の意味で —— がいかに実体がないか。それを表現するイコンがおそらく、主人公たちが繰り返す引越しなのだろうなと。
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といいつつ、深読みばかりしても映画は楽しめませんので。
70年代中盤の東京の空気感。
「ポリティカル・コレクトレス」なんて概念には程遠い乱暴なセリフの数々(いきなり「な、堕ろすよな?俺の子かも分からないし。お前アイツとヤったんじゃないか?」は最低すぎる)。
そして漂う人々の姿は、都市もとい人間社会もまた掴み所のない一種の「現象」なのだと教えてくれます。
『スローなブギにしてくれ』をもう一度観たくなってきました…
今年は藤田敏八監督作品を探ることにします。