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マルコムX更なる飛躍❗️ー国際的な黒人開放運動家へー

メッカ巡礼から帰国後、マルコムはそれまで世間が自分について抱いていたイメージを作りかえようとします。

マルコムは黒人による反乱の可能性をほのめかしたりしていました。
そういったことは、暴力を賛美しているように見えてしまい、黒人と白人の両方を遠ざけ、公民権運動との協力関係を損なってきました。

「アフリカ系アメリカ人の目的は人種分離ではない、人種統合でもない。
どちらもアフリカ系アメリカ人の真の目的つまり人間としての尊重を得るための手段に過ぎない。」


マルコムが抱えていたジレンマは、敵も味方もほぼ全員が彼のことを黒人による社会革命の指導者とみており、いまだに反白人の扇動家だと見なしていたことでした。

1964年6月、マルコムはアフロ・アメリカン統一機構(OAAU)を設立します。
前年にできたアフリカ統一機構(OAU)に合わせたものでした。

「宗教に関係なくすべてのニグロが参加できる組織でブラック・ナショナリストの政治団体。
すべての人種の人々からの支援を受け入れる用意がある。
この新団体の第一の目標は、アメリカのニグロの訴えを国連に付託することである。」
と発表します。

マルコムは、国連の関与によって、米国内の公民権運動の戦略転換が起きることを思い描いていました。
連邦議会での法律制定による改革をめざすのではなく、国際社会の介入を期待して黒人の窮状を国際機関に訴えようしていたのです。
つまり、国際問題にしようとしたのです。


OAAUの基本となる目的と目標に関する声明で、OAAUは人権と尊厳を求めて闘うアフリカ系のアメリカ人を一つにすることに力を注ぎ、米国で「正義と平和を実現する政治、経済、社会的体制の構築」に専念すると誓いました。
声明は、独立宣言や米国憲法を含む歴史上の文書をわれわれが正しいと信じる諸原則であり、これらの文書は実践されれば、人類の希望と善意の真髄を表すものであるとして称賛しました。

 

目指すべき道は、独立したばかりのアフリカ諸国とブラックアメリカとのあいだでパン・アフリカ主義的な連合を作ること、MMIとサウジアラビア、エジプト、そしてムスリム世界全体との関係を強化することです。

包括的なパン・アフリカ思想にすっかり浸ったことで、マルコムの黒人の世界市民としての役割がくっきり浮き彫りになりました。

マルコムの演説です。

「米国政府が数世紀にわたってアフリカ系アメリカ人の生命や財産を守らなかったのだから黒人が自分たちの自由を守るために過激な手段を使うのは不合理なことではない。

黒人が自分の自由を獲得したり、そんな権利の侵害を止めたりするために必要などんな手段でもつかおうとするときにはたった一人でそうすることにはならないだろう。
誰とでも。
肌の色は関係ない。この惨めな状況を変えたいと思っている人となら。」


「黒人としての意識の自己再生と人種差別の撤廃とは関係がある。
解放は単に政治的な問題であるだけでなく文化的な問題でもある。
黒人はその闘争を『公民権』を求めるものから『人権』を求めるものに変える必要がある。
人種差別を全人類にとっての問題として再定義するのである。
OAAUはわたしたちの問題を国連に持って行くのに賛成だが、同時に黒人の投票や有権者教育も支援する。」


「人は肌の色ではなく意識的な振る舞い、行動で判断されなければ。
人が平等を基準として人間らしく生きることのできる社会がいい。」


「宗教、人種、肌の色といった障害を不正に対して何もしない口実に使うことはもうできない。わたしはただ神が来るのを待っていたくはない。
宗教というものは信じているが、わたしが信じているのはこうしたことを少しでもなくし、もう一方の天国を待つ間に、この地球上に天国を作り出すための政治、経済、社会的行動を含む宗教なのだ。」


「人種を根拠にレッテルを貼れば、非白人については犯罪人であるという否定的なイメージができあがる。
その結果、権力構造が警察国家を設立するのが可能になる。」


「西側にいるわたしたちはアフリカを嫌い、アフリカ人を嫌うように仕向けられてきた。
巧みにわたしたちにアフリカを嫌わせることでわたしたちの肌の色が鎖になった監獄になった。
黒人文化の真価が認められれば黒人は解放され、自分たちのために闘うようになる。」



ネイション・オブ・イスラムから離れて、次第にマルコムの思想は広がり、人種問題だけ考えていたのがより広く階級や政治や経済についても考えるようになっていきます。

組織から距離を置き、世界を巡ったことにより、視野がどんどん広がっていくマルコム。

アメリカで置かれている黒人の現実を、国内問題としてではなく国際問題にしようとしました。それは後に社会がグローバルになっていくことの先取りではないでしょうか!

世界中の黒人の連帯を望むマルコム。
しかし彼はその夢を道半ばで閉ざされてしまうのです……


執筆者、ゆこりん、ハイサイ・オ・ジサン

参考文献
「マルコムX―人権への闘い」 荒このみ著  岩波新書

「マルコムX―伝説を超えた生涯」マニング・マラブル著

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