『over made STORE』 2018 Summer
みなさんこんにちは。
MOVスタッフ同様テレワークをしていらっしゃいますか?非常に大変なご状況の方もいると思います。助け合うことで乗り切ることができることはいつでもご相談ください。
さて、前回のレポートに続いて2018年に開催した、ヒカリエ8階の企画展「Wandering Craft - ワンダリングクラフト」のレポートをしたいと思います。2018年のテーマは「オーダーメイド」。前年の「エコ」というテーマを、“ものを大事に使い続ける「オーダーメイド」的な購買”と解釈して企画しましたので、「オーダーメイド」がテーマとなるとどんな解釈で企画を作ろうかなと結構皆で悩みました。
最終的に、「オーダーメイド」だからといって、新しい素材を生産する必要があるのか?ということ。そこで、モノづくりの源流である、素材の生産現場において、どうしても出てしまう余剰を大きく取り上げ、これまでにない新しい購入体験を作り出すことを考えました。
そうしてたどり着いたのがover made STOREです。非常に上質な素材であるにも関わらず、産業構造の理由から"oversupply"=余剰となってしまう様々な素材(布、紙、瓶)を量り売りで販売し、その素材を使ったモノづくりを作家さんにお願いしたり、素材を使ってワークショップに参加したり。購入者参加型の新しい「オーダーメイド」を提案するコンセプトストアです。
様々な素材が並ぶ。什器にも生地を巻いておく芯の部分を使っている。
本当の意味で目の前にいる人のオーダーメイドなものづくりを提案する場を作ることを考えた時、コンセプトにぴったりの作家さんを探すのにかなり苦労しました。そんな時、前年からお世話になっているALL YOURSチームにご相談したところ、普段お客さんの丈つめやカスタムを担当している、縫い物係の河部さんがその役目をやってくれることになりました。
オーダーから10分程度でタオルを渡すために頑張るALL YOURS河部さん。
どうやって作るかということと同時に、何を使って作るか、つまり素材の調達についても、どうこだわりを示すかを考えました。例えばアパレル業界の事例では、生地メーカーが作った生地がメーカーに渡り、型紙(パターン)を置いて、必要なパーツを切り出し、それを縫製します。上手なパタンナーであれば、ギリギリまで少ない生地で同じ量のパーツを切り出します。生産ロットが多ければ多いほど、節約できる生地が増えます。結果的に1反(約50m)もの長さが余ってしまうことがあります。節約できたからと言って、余った生地を生地メーカーに返すことはできません。また、発注をしたブランドにも1反の生地が余ったと報告したら、その分の安くしてくれと言われかねませんので、報告することもできません。国内で取り扱われる生地はブランドの特注のものが多く、他のブランドや一般の生地屋さんに販売するわけにもいきません。
ではこの生地はどこへ行くのでしょうか?メーカーが持つ残反倉庫へ行くわけです。展示前の時期に倉庫にお邪魔したのですが、写真はNGだったため、残念ながら記録はありませんが、名だたるブランドの名前が入った生地の束がぎっしりと積み上げられていました。悲しい気持ちともったいないという気持ちが入り混じったような気分になりましたが、重大な問題の氷山の一角をリアルに目にすることができたことは今回の企画の非常に重要な意味を持つことになりました。
今回そういった製品を製造するメーカーとしてあまり世間に見せたくないような部分を見せることに協力してくれた企業に感謝の念が絶えません。一つは広島県福山市を中心に残反を仕入れ、ものづくりをしている3-YGの片岡さん。非常に多様な布をオーダー用に1m,2m3mで切り分けて破格の値段で販売をしてくださいました。また、今治でタオルメーカーをしている渡邉パイルさんが今は廃盤となってしまっている生地を好きな長さでタオルが作れるオーダータオルの企画で参加をしてくださいました。もちろん切って縫うのはALL YOURSの河部さん。ライブで受けて10分くらいで縫い上げてお渡しする感じはレストランで料理を待つような感覚でした。
布という素材だけでなく、実は眠っている素材ってたくさんあるんだろうなと考え、3つの素材を量り売りすることに。布・紙・瓶です。紙は製紙メーカーが抱える廃盤となった紙を。素人の自分からしたら本当に捨てるんですか?というようなものばかりですが、メーカーからすると需要がなくなったものを作り続けることはないため、廃盤となった瞬間に在庫として抱えているものは倉庫で眠り続けることになるそうです。紙はリサイクル率の高い非常に優秀な素材なので、リサイクルにはできるのだけど、そのまま使える場を持てるのであれば是非ということで、平和紙業さんとMOV会員だった神戸派計画が1枚単位で紙を購入できる形で出店してくださいました。瓶も同じくリサイクル率の高い非常に優秀な素材です。素材の面白さもさることながら、非常に新しく斬新な瓶自体のグラム単位の量り売りで大川硝子工業さんが出店をしてくださいました。
布を使ったオーダーメイドとは別に、紙や瓶は購入してそれを使って参加できるワークショップを設定してたくさんの方に楽しんでもらえました。こういった“余っている”、“捨てるはずだった”という、通常であればネガティブに捉えがちなモノにスポットライトを当て、素晴らしい素材として使う場を作ることで、必要とする人に届く。資源の循環を見せることができた、企画した自分としても非常に満足度の高い企画でした。
余談ですが、オーダーを受けまくった河部さんは後でヒーヒー言っていました。ww 年内には全てのオーダーを捌ききったそう。自分が頼んだパンツは翌年の春受け取りましたとさ。
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