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WACATE 2024 冬 に参加して

こんにちは。QAエンジニアの宮地です。
この度、1泊2日で行われるQAエンジニア向けのワークショップイベント「WACATE 2024 冬」に初めて参加してきました。
現場で活かせるテスト設計の新しいアプローチや、他の参加者とのディスカッションから得られる気づきが満載でした。今回はその感想や学びについてご紹介します。


WACATEとは 

「内に秘めた可能性を持つテストエンジニアたちを加速させるためのワークショップ」をコンセプトに開催されるQAエンジニアのためのワークショップです。 今回開催されたWACATE2024冬に関しては「テストに関するテーマを広く扱うこと」をコンセプトにしていました。 

WACATE 2024 冬 に参加した目的

今回の参加の目的としては、
・自分のQAエンジニアとしての知見を広げること
・他の会社のQAエンジニアとのつながりを作ること
でした。

ワークショップのセッション内容

今回のワークショップは以下のセッションを行いました。

◾️ポジションペーパーセッション

WACATEに参加申し込みをする際に提出したポジションペーパーをもとに自己紹介をするセッションでした。
私は内容をしっかり書き込んだのですが、文字が小さく量が多かったため、他の参加者と比べて少し目立ってしまいました(汗)。
次回はもう少しバランスを考えて書いてみたいと思います!
クロージングでは、ベストポジションペーパー賞というものがあり、選ばれた方には景品が贈られていました。
また、本の抽選も行われ、自分はなんと当選し、「ソフトウェアテスト技法練習帳 知識を経験に変える40問」をいただきました!熟読していきたいと思います!

自分の書いたポジションペーパーです。
いただいた書籍です。

◾️BPPセッション:実利の世界で、表現者である

BPPセッションでは、前回のWACATE 2024 夏でポジションペーパー賞を受賞された方が副賞として発表を行う機会を得られるというユニークな形式でした。今回のテーマは 「実利の世界で、表現者である」 という内容で、発表者は杞憂さんというQAエンジニアの方でした。
杞憂さんは、元々演劇活動をされていた経験をお持ちで、その視点を活かしながら、業務における 「コミュニケーションの重要性」 を説いていました。演劇で培った表現力を、どのように活かすかについて具体例を交えたお話は非常に興味深く、社会においてスキルだけでなく、人間力も磨く必要性を再認識させられるセッションでした。
また、このセッションの詳細については杞憂さんご本人が note にまとめて振り返りを公開されていますので、ぜひご覧ください。

◾️再入門!同値分割法・境界値分析

このセッションでは、テスト設計の基本である 同値分割法境界値分析 をテーマに、基礎を再確認しながら実践的な知識を深めることができました。

主な内容

  • 同値分割法とは何か? 同じ結果が期待できる入力値の範囲をグループ(同値クラス)として分割し、それぞれのクラスから代表値を選んでテストケースを効率化する手法です。

    • 例:入力値が1〜100の場合、「1〜50」と「51〜100」をそれぞれ1つの同値クラスとして扱う。

  • 境界値分析とは何か? 同値分割法をさらに進め、境界にある値をテスト対象として抽出する手法です。エッジケースを見つけやすくするため、バグ発見率が高い手法として知られています。

    • 例:範囲が1〜100の場合、「0」「1」「100」「101」のような境界付近の値をテストする。

学びのポイント

  • 「なぜこの値が同値とみなされるのか?」を考える重要性 同値クラスの定義を曖昧にしないために、なぜその範囲が適切なのかを議論するプロセスが大切だと感じました。

  • 境界値分析を適用すべきケース 特に入力範囲が明確である場合や、値が制約を受けるロジックにおいて、境界値分析が非常に効果的であると学びました。

このセッションを通じて、同値分割法や境界値分析を「当たり前」として使っているだけでは不十分であり、それぞれの適用場面や効果を再確認することの重要性を改めて実感しました。今後、テストケース作成時にさらに意識して取り組みたいと思います。
こちらの詳細についてはブロッコリーさんが以下のスライドを公開してくださっていますので、さらに詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

◾️レビュー活動をやってみよう

このセッションでは、テストにおけるレビュー活動の重要性を学びました。レビューは、単にコードやドキュメントを確認するだけでなく、プロジェクト全体の品質を底上げするために欠かせないプロセスであると感じました。

主な内容

  • レビューの目的

    • 初期段階での問題発見によるコスト削減

    • チーム全体のスキル向上と品質意識の醸成

  • 実践的なポイント

    • リスクが高い箇所に注目したレビュー

    • テクニカルレビューのためのシナリオ作成

特に「重大な問題に意識を向けること」の重要性が印象に残りました。また、チーム内での知識共有を促進するためにレビューを積極的に活用するべきだと感じました。
今後はテスト項目やコードレビューの場で、学んだ実践方法を試してみたいと思います。

◾️ユーザビリティを作りこめ!

このセッションでは、システムの使いやすさについて深く掘り下げました。特にUI/UXやデザインの観点から、ユーザー視点でレビューを行う手法が取り上げられました。

主な内容

  • ユーザビリティとは?

    • システムや製品を使う際の「直感的な操作感」と「目的達成のしやすさ」を高めること。

  • レビューのポイント

    • ユーザーが迷いやすい部分を洗い出す

    • アクセシビリティへの配慮(視覚・操作の多様性を考慮した設計)

    • フォントサイズ、色使い、レイアウトの見直し

このセッションを通じて、現在社内でも話題になっているアクセシビリティとの関連性を強く感じました。デザインやUIにおける小さな改善が、ユーザー体験に大きな影響を与えることを再認識できました。
また、発表者の山口さんが使用されたスライドは以下からご確認いただけますので、さらに詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

◾️夜の分科会

1日目のセッションが終わった後、夜の分科会という自由な交流の時間が設定されていました。この時間は、1日目のセッションで疑問に思ったことを質問したり、各自が持ち寄ったテーマについて意見交換をしたりする場として設けられました。
他の会社のQAエンジニアや開発者の方々とコミュニケーションを取ることで、普段の業務では得られない新しい視点やアイデアを吸収することができました。また、リラックスした雰囲気の中で気軽に話ができたことで、より深い対話ができたのも良い経験でした。
「夜の分科会」という形式は、交流と学びを両立できる貴重な時間だと感じました。このような自由な対話の場が、ワークショップ全体の満足度をさらに高めていると思います。

◾️品質管理の歴史学

このセッションでは、品質管理の歴史を振り返りながら、現在の「欠陥を防ぐ」という考え方がどのように発展してきたかを学ぶことができました。発表者は実行委員会のブロッコリーさんで、専門的な知見をわかりやすく伝えていただきました。

主な内容

  • 品質管理の起源
    品質管理がどのように誕生し、産業界で発展してきたのかについて解説されました。特に製造業における品質管理の進化が、ソフトウェア開発にどのように影響を与えたのかを学ぶことができました。

  • 現代のQAへの影響
    歴史的な背景を通じて、現在の品質管理の基本原則である「欠陥を早期に発見し、未然に防ぐ」アプローチがどのように確立されたのかが示されました。この考え方は、テストプロセスだけでなく、仕様設計やレビューの重要性を再認識させるものでした。

品質管理の歴史に触れることで、日々のQA活動がどれほど重要であり、また時代を超えて進化してきたものかを深く理解できました。また、過去の取り組みを学ぶことで、自分たちが今後どのように品質管理を実践していくべきかのヒントも得られました。
発表内容の詳細は、ブロッコリーさんが公開されている以下のスライドをご覧ください。

◾️初めてのリスクベースドテスト

このセッションでは、限られた時間の中で効率よくテストを行うための手法であるリスクベースドテストについて学びました。
テストすべきことはたくさんある中で、すべてを網羅するのが難しい場合、どのテストを優先すべきかを決めることがQAの重要な課題です。このセッションでは、その課題を解決するためのアプローチとしてリスクポーカーが紹介されました。

主な内容

  • リスクベースドテストとは?
    プロジェクトにおけるリスクを分析し、そのリスクに応じてテストケースに優先順位をつける手法です。これにより、限られたリソースで効率的にテストを進めることができます。

  • リスクポーカーの手法
    チームでリスクの重要度を評価するためのユニークなアプローチです。具体的な進め方は以下の通りです:

    1. チームメンバー全員が1~4の数字が書かれたトランプを持つ。

    2. テスト項目の優先順位について議論し、それぞれが重要度を表す数字を出す。

    3. 出された数字が異なる場合、その理由を話し合う。

    4. 再度トランプを出し、全員の意見が一致するまで繰り返す。

  • このプロセスを通じて、チーム全体でリスクに対する共通認識を持ち、合理的な優先順位を決定できます。

実際に手を動かしてリスクポーカーを試すことで、チームでの意見共有がどれだけ効果的かを実感しました。また、テストの優先順位を明確にすることで、時間やリソースを有効活用する手法の実践的な価値を理解できました。今後のプロジェクトでぜひ活用していきたいと思います。
発表者の岡野さんは以下のスライドを公開してくださっていますので、さらに詳しい内容に興味のある方はぜひご覧ください。

◾️直交表に触れてみよう

このセッションでは、組み合わせテストを効率的に行うためのテスト技法「直交表」の作成について学びました。直交表を使用することで、膨大な組み合わせを網羅するのではなく、重要な部分を効率的にカバーするテストケースを作成することができ、項目作成にとても役立つと思いました。

主な内容

  • 直交表とは?
    直交表は、すべての要素の組み合わせを網羅するのではなく、限られたテストケースで可能な限り多くの要素をカバーするための数学的な手法です。特にパラメータの多いシステムやアプリケーションのテストにおいて効果を発揮します。

  • 直交表を使用するメリット

    • テストケースの数を大幅に削減しながらも、十分なテストカバレッジを確保できる。

    • テスト設計の際に優先すべき組み合わせを明確にする。

    • 手動テストやリソースが限られたプロジェクトでの効率化に役立つ。

  • セッションでの実践例
    セッションでは、直交表を用いて実際にテストケースを作成するプロセスが紹介されました。初めて触れる技法でしたが、講師の丁寧な解説のおかげで、基本的な考え方を理解することができました。

これまで直交表について知らなかったため、新しい発見の多いセッションでした。特に、複数の入力条件を組み合わせてテストする必要がある場合、この手法は非常に役立つと感じました。今後のプロジェクトで直交表を活用する場面を見つけ、効率的なテスト設計を目指したいと思います。
発表者の並木さんはWACATEに30回以上参加されており、2017年にも同じテーマで発表されているとのことです。今回の内容についてさらに知りたい方は、以下のスライドをご覧ください。

◾️WACATEの体験を持ち帰ろう!

このセッションでは、これまでのセッション内容を振り返り、自分が学んだことを「誰に伝えたいか」「どのように活用するか」を考える時間が設けられました。WACATEのモットーでもある「アウトプットするまでがWACATE」を意識し、自分自身の学びをどのように整理し、伝えていくかを深く考えさせられる時間でした。

主な内容

  • 振り返りと共有の重要性
    学んだことをアウトプットすることで、内容がさらに深く定着し、新たな視点が生まれることを実感しました。また、自分の学びを共有することで、チームやコミュニティ全体の成長にもつながります。

  • 誰に伝えたいかを考える
    この体験を社内のQAエンジニアや開発チームと共有し、今後のプロジェクトに役立てたいと強く感じました。特に、テスト技法やリスクベースドテストなど、実務で即活用できる内容はチーム全体で共有する価値が高いと感じました。

「アウトプットするまでがWACATE」という言葉に背中を押され、このブログを書くことで自分自身の学びを整理し、次の一歩を踏み出す準備ができたと感じています。また、社内外でこの体験を伝えることで、WACATEの学びがさらに広がり、より多くの人にとって価値のあるものになることを願っています。

◾️テスト設計技法をちょっとだけ俯瞰してみよう

このセッションでは、外部講演者として日立製作所の鈴木一裕さんをお迎えし、テスト設計技法について幅広く学ぶことができました。鈴木さんの豊富な経験とわかりやすい解説により、テスト設計における全体像を俯瞰し、具体的な手法や考え方を深く理解する機会となりました。

主な内容

  • テスト設計の重要性
    テスト設計がプロジェクト全体の品質を左右する重要なステップであることを再認識しました。特に、テストケースを作成する前に「何をテストするべきか」をしっかりと設計することの重要性が強調されていました。

  • 多様なテスト設計技法の俯瞰
    同値分割法や境界値分析といった基本的な手法から、さまざまな技法について説明がありました。それぞれの技法がどのような場面で効果的に活用できるのかが具体的に解説されており、実務に直結する内容でした。

このセッションでは、これまで点として学んできたテスト設計技法を線でつなぐような感覚を得ることができました。また、技法を俯瞰的に捉えることで、プロジェクトの状況に応じた柔軟なテスト設計が可能になると感じました。
発表内容の詳細については、鈴木一裕さんが公開されている以下のスライドをご覧ください。実務に役立つ多くのヒントが詰まっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

気づきや学び

セッションの中で特に印象に残ったのは、「リスクポーカー」を活用したテストの重要度を決める手法についてです。
リスクポーカーとは、プロジェクトのリスクをチーム全体で評価し、優先度を明確にするための手法です。この活動を通じて、限られたリソースで最も効果的なテスト設計が可能になると感じました。
現在のチームではまだ取り入れられていませんが、QAグループや開発チームで試行してみたいと思います。
また、テスト技法について新しい視点を得られたことも大きな収穫です。これまで自己流で進めていた部分を再確認でき、技法を体系的に活用することの重要性を改めて感じました。

今後のアクション

今回学んだことを活かし、以下のアクションを進めたいと考えています。

  • テスト項目作成時に適切なテスト技法を積極的に取り入れる

  • アジャイル開発の短いサイクルでもテスト技法を効果的に活用するプロセスを模索

  • 学んだ知識や手法を社内で共有し、QAチーム全体のスキル向上に繋げる

まとめ

初めての参加で緊張しましたが、学びが非常に多く、参加して本当に良かったと感じています。このようなワークショップは知識だけでなく、エンジニア同士のつながりを深められる貴重な場です。
開催してくださった実行委員会の皆さまには心から感謝しています。次回のWACATEにもぜひ参加したいと思います!
もし興味がある方がいれば、ぜひ一緒に参加しましょう!


〜終わりに〜
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