社会人10年で5回も転職した話#2 ~歩く”東京カレンダー”編②
この仕事に就いて、私はフレンチ・イタリアンのレストランに見事にハマっていくのですが、当時20代前半の時期に、「本当に美味しいもの」を食べられた経験や、それに付随する知識は、その後の人生にでもかなり役に立ちました。
年齢層が少し上の方と話が盛り上がったり、フランス料理やイタリア料理に詳しくなってレストランでの注文に詳しくなったり、マッチングアプリで大活躍したり(苦笑)
美味しいものを、若いうちから知ることはある意味「教養」の一つなんですよね。
テーブルマナーや、仕草、年齢層に合わせた話、それら全てを少し上品に見せてくれて、自分にも自身がつき、相手にも失礼のない態度が取れるということがこの会社に就職してよかったことです。
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フレンチ・イタリアンの食材の専門卸商社に勤めていると、こんなメリットがあります。
・イタリア・フレンチを扱うお店の食材がわかる
イタリアンとかフレンチは高級でも大衆向けでも、メニューを見ていると、時々「これなんの野菜??」とか、「チーズの違いわからんな・・・」というときありますよね。
でもここに勤めてると大体がわかるから、これは日本の野菜で言うとこれに近い、とかこのチーズは青黴系、ウォッシュ系、とかお肉は何のどの部分とか。
もちろん、食材の違いも注文してきたシェフが「何を作りたいか」でもお勧めを話したりすることも稀にあるので覚えているので、とにかく注文する時に楽しくなってくる。
そのエピソードとして覚えているのが、とあるホテル内のフレンチのランチに行った時、チーズが何種類か出されて、お好きなものをとウェイターさんに言われたことがある。
その時は仲の良い同僚3人で言っていたので、このチーズは何系、あれはこんな味、と話しながら選んでいたらウェイターさんに「よくご存知ですね!!」と驚かれたこともあります。
それは退職してからも変わらず、前回のブログでお話しした仲の良い同僚と、旅行に行った時もフレンチも名店を訪ねて、食材の話をしていたら、シェフから話しかけれらたこともあるくらい。
これはちょっとした「教養」が身についた瞬間。
・お昼休憩に営業同士が作るまかない料理がプロ
この仕事は、その専門性ゆえに、営業の社員はほぼ元シェフ、ギャルソン、フレンチ・イタリアンの食材に関連する仕事に就いていた人がほとんどでした。
日によってはランチを買いに行けるタイミングもない、ということもあり、そのような特に忙しい日の倉庫作業の合間のランチをキッチン(しかもさほど大きくないキッチン)で作るということを当番制でしていました。
ミートソースパスタや、炒め物、洋風の煮物、時にはお肉そのものを焼いたり、スープを作ったり。
とにかくそのどれもが美味しいわけです。
形が悪かったりする野菜や、肉の切れ端などを上手に使って、いつもなら破棄するようなものを使用してご飯にしていたのです。この当時はSDGsは出始めで、そこまで浸透していなかったけれど、すでに無駄のない取り組みをしていたのはなかなかのものです。
ちなみに私が一番美味しかったのは、パンプキンスープと、お肉をめちゃめちゃいい塩と胡椒で焼いただけのステーキです(この時は、輸入元からサンプルとして送られて来たものをみんなで試食)
・食材が買える!
倉庫業も同時にやっていたので、個人で支払れば在庫がある限り定価で買えたことも魅力的。
私はその制度を使って、ムール貝を買ったことがあるのですが、量がレストランサイズだから1PCでいいって言ったのに、倍の量にして同じ値段でいいよ!と言われてことがあります(在庫過多だった)
もちろん、いくらムール貝が好きとはいえその量は鬼なので丁重にお断りしました。(笑)
あとは、クリスマスシーズンだと、カカオが多めに入ったのこうなチョコレートケーキを事前に言えば、一緒に注文してくれたり、生ハムやサラミなども購入OKでした。
値引きは流石にないですが、卸価格なのでそもそも安いし、成城石井のような高級スーパーですら手に入りにくそうな食材を買えたのはポイントが高いです。
・シェフがおまけをしてくれる。
これは営業さんとの仲良し度にもよりますが、営業が担当顧客(レストラン)にこういう理由で社員が行くよ、と一言声をかけてくれる時があります。
すると、デザートのサービスや、実際に食べたいもののリクエスト(これは私が退職する時にやってもらった)、お会計の値引き・・・など特典的なものが付いてくる時がありました。
ただしこれは営業とその顧客、さらには事務が仲良くないと、この連携は成り立たないので、もちろん頼む人は選びましたし、そんな特例を出しすぎても怒られそうなので、本当に大事な時・・・退職や歓迎会、営業さんに連れて行ってもらうときのみとしてました。
ただ、食材が詳しいが故にお店でバレたりする時もあってその時もちょこっとだけサービスしてもらったことあります。
・レストランに詳しくなる。
多数のフレンチ・イタリアンレストランを顧客として持つこともあるため必然と名前を覚えます。
この会社が出す食材はとてもいいものであることは、入社当時から共通認識として社員の中では自慢でしたから、「ウチで出しているものを使っているのだから美味い」という自信がありました。
それに、フランス語・イタリア語ともに、馴染みのない言葉であったり、名前も似たようなものであったり、覚えづらかったので、そういう意味でも知識として他の方へ紹介することができたこともメリットです。
あんなに必死に覚えたお店ですから、辞めてからずいぶん経過した今でもしっかり覚えているくらいで、現在でも何か聞かれたら「ここがいいよ」と答えられるくらいにはなっています。
と、ここまではメリットでしたがもちろんデメリットもあります。
・花金、なんて言葉はない。
土曜日の出社があれば少しはマシですが、基本的に金曜日は日付変わる直前まで残業です。
それはシンプルに土日の休みにこちらが入るので、逆に稼ぎどきであるレストランは金曜日までに食材を注文してなくてはならないから、必然的に注文が多くなります。
そうすれば作業も長くなるし、ものによっては終わらなかったり、宅配業社を待たせたり・・・とバタバタしているうちに時間が過ぎて行きます。
途中で休憩を挟めるほど、人員に余裕はないので金曜日の時は軽食を必ずランチの時に買って備えたほどです。
それは営業も同じで、社員全員へとへとになって毎週、注文をこなしていました。
この会社にいたときに金曜日を早く終えられてことはないので、いつも金ローはみれず、なんならZEROも終わりかけてるくらいの時もありました。
まあ、残業代として計算されるのでいいんですが。
・金曜日は朝も早い。
これは上記に理由が直結していて、朝早く注文を裁かないと、結果的に午後にも響くわけです。
基本は午前が都内や都心(横浜など)までで、午後は、地方発送という考えでした。
もちろん午前から忙しいわけですから、それを捌くために事務が交代で早出、その後を続く形で、普段の始業時間より1時間前倒しでスケジュールを組んでいました。(早出当番は、普段の始業時間の1.5時間前くらい出社です)
木曜日はさっさと寝ますし、おちおちドラマもリアルタイムで見れないし、毎週遅いので嫌になる時もありましたが、人間って慣れるんですよね・・・
途中からランナーズハイ見たくなって、テンションが迷子でした。
・早退、欠席、有給申請が至難の業
これはシンプルに当時の担当部長が厳しいこともあったのですが、とにかくこの3つが取りにくい。
理由も言わなければならないので、もうのっぴきならな事情(通院、家庭の都合、冠婚葬祭)ではないとOKが出ませんし、そもそも話を聞いてくれるタイミングも考えないと失敗するんです。
欠席するときの電話は基本部長ではないといけないから、いないといつまでも連絡できないし、お昼休み後のまったり時間を逃すと、有給申請できないしとにかくそれがしんどい。
部長の機嫌が良くない時は逆効果だし、その時は事務でも部長と仲良くやってる人にお願いして様子を伺ってもらったり、一緒に来てもらったりして、なんとか切り抜けてました。
あと、シンプルに休みづらいです。なんせ少数人数精鋭だから。
事業としての会社はとてもいいものだったと今でも思います。
扱う食材は一流、レストランのシェフに認められ、愛され、今もなお生き残っています。
でもここで知るのです。
中小企業ならではの弱さや、怖さを。
日本にある企業の90%以上は中小企業だ、なんていう話もよく聞きますが、私はこの会社を皮切りに大企業で働くことはありませんでした。
新卒の会社は、それこそ給料はよくなかったものの、大企業(というか、営利目的ではない会社という位置付けで法人格を当たれられたもの)だったので、労働環境の不備はそこまで目立ちませんでした。
でも労働環境が上手に整備されていなかったり、されていてもうまく活用できていなかったりするのは中小企業の弱点という気もします。
ただ、勘違いしないで欲しいのは中小企業の中でもしっかり環境が整っていたり、人材育成に力を入れたりしている会社ももちろんありますから、ここは入ってみないとわからない部分もあるという意味で捉えてください。
自由度が高い分、労働環境への適応や、ギャップを乗り越えるのがが難しいのが中小企業という感じでしょうか。
大企業にいる方にとって、中小企業とは良くも悪くも「チャレンジ精神」が求められるのかもしれません。
と、ここまではこの会社ならではのエピソードを紹介しました。
次回はいよいよ退職する話に入るのですが、今回の退職理由はちょっと違います。
それではまた、次回。