蕎麦を食べて帰る
僕はあまり食にこだわりがなく、正直腹にたまれば何でもいい。だから、好きな食べ物が2・3個あれば大丈夫と思っている。因みに好きな食べ物は、カレーライスと蕎麦とパン。これがあれば、僕の人生において食べ物で悩むことはないだろう(逆にこれらがなくなると大分困る)。
大学生の頃から映画が好きで、休日にはよく映画館に足を運んでいた。当時は川崎駅近くの映画館によく行っていたのだが、その川崎駅の改札内の蕎麦屋が行きつけだった。
「いろり庵きらく」というところが僕の行きつけのお店。誰でも気軽に入れるお店で、お店の外に設置されている券売機で食券を購入するタイプの駅そばチェーン店だ。かき揚げそばが有名で、HPを一番最初に開いて出てくるのもかき揚げそばなくらいだ。学生時代、ここには本当によく通っていて、休みの日には、「映画帰りに蕎麦」がルーティーンとなっていた。僕が毎回頼むのは、お店のウリであるかき揚げそば。なんならこれしか食べたことがない。
本当は蕎麦もうどんもあって、当然好きな方も選べる。食券にも「○○そば・うどん」と書いてあるのだが、食券を出すとほぼ必ず、店員さんに「蕎麦でよろしいですか!」と言われる(「蕎麦でよろしいですか?」ではなく「蕎麦でよろしいですか!」なのがポイントである)。それお店として大丈夫な聞き方なの?と思ったりするが、まあ蕎麦がウリなんだし、実際、お店にいる周りの人を見ても、9割9分の人が蕎麦を食べているから仕方ない。別にうどんがダメなわけでもなんでもないのに、みんな蕎麦を食べている。
実はちょっと、「うどんにしてみようかな…」と思ったこともある。だけど、食券を渡す時には店員に、「蕎麦でよろしいですか!」と言われるし、店内もほぼすべての人が蕎麦を食べているため、結局蕎麦にしてしまう。
「よし、今日こそはうどんにするぞ!」と思っても、店員さんの熱と、店内の蕎麦絶対主義の空気(ただの偏見)にひよってしまい、「…あ、蕎麦でお願いします」となるのが決まったオチである。
あの空気はものすごく不思議だ。あの空気の中で堂々と「うどんで!」と注文できる人に僕は憧れる。僕なんかがうどんを注文しようものなら、店内の人全員から「あ!?うどんだと!?」という目を向けられるのではないかと思ってしまう(絶対そんなことはないのだが)。
人と同じなんて嫌だ!と天邪鬼がるくせに、同じ空間で自分一人だけが違うのは怖くて周りに合わせてしまう。周りの人は全くの他人である僕が何を頼もうと知ったこっちゃないのだから、自分の好きなものを堂々と頼めばいい。その日の気分がうどんなら、堂々とうどんを頼めばいい。なのに、周りの目が気になってしまい、器の小ささを遺憾なく発揮。ひよっていつものやつを注文する。この難儀で矛盾まみれな、気持ち悪い性格はいつになったら直るのだろうか。
先日、休みがとれたのでゆったりと散歩に出かけた。東京に引っ越してきてから、例の蕎麦屋に行っていなかった。社会人になってそろそろ丸1年が経つので、例の蕎麦屋捜索の散歩に出かけた。すると、上野駅にあるのを見つけ、意外と近くにあるじゃん!と驚いたものだ。学生時代ぶりに、いろり庵きらくに行けた。
僕は蕎麦を注文した。満足だった。
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