IT is my friend・・・? 27
27、綾香の救出
管理室に入った。
「なんだおまえ、それ何の臭いだ?油まみれじゃないのか?」
「ああ、そのうち慣れますよ」
「まぁ無事に帰ってこれてよかったよ。立ち回りやったのか?」
「いえ、ちょっと走っただけです」
「そうだ、おまえがいない間に“R”に何度もアクセスしているやつがわかった。それが「ヤンの店」からなんだ」
「そんなことじゃないかと思いました。一緒に地球を救おうって誘われましたよ」
「乗らなかったのか?」
「残念ながら。そのせいで抜け出すのに苦労しました」
「だろうな。これで決まりだ。クロード、おまえさんが正しかった。“R”を操っていたのは人間だ。狂人といってもいい。たぶんそいつが開発者だろう」
「“R”導入についてはどこかでうまく取り入ったんでしょうか」ポリスが言った。
「違うだろう。役人としてレプノイドを送り込んだんだ。ホントにそっくりなレプノイドが作れるみたいなんだ。綾香のレプノイドにもしゃべらなきゃ騙されてた」
「これから排除が大変だ」
「なんてことないよ。全員強制の血液検査か予防接種をすりゃすぐに見分けられる」
「クロードさん、なんて頭いいんだ」
「おれ、桐谷さんに警察に誘われてる」
「桐谷局長とお知り合いなんですか?」
「ああ、元上司だよ」
「恐れ入りました。凄い会社だったんですね」
「だけど、まだ奴を追い詰めるのは待ってくれ。彼女を救い出してからだ。奴はあそこから動けない」
「もう、動きました」
「すまん。ちょっとストップかけてくれ」
「はい。フォン警察」
「あ、ダメだ。今遮断してるんだ」
「じゃ上に行こう。あとは頼みます」
ポリスと二人で地上に駆け上がった。
ポリスが息を切らして言った。
「フォン、警察」
私も追いかけて言う。
「フォン、桐谷さん」
「なんだ、今は付き合ってる暇はない。すまんが・・・」
「もうじき解決します。その前にすることが。警察の巡視艇を5隻と各10人ほどの警官を貸してください。それからここに来てる坊やと」
「ああ。解決は確かか?」
「はい。お約束します」
「よし、南港SW176に行かせる」
「ありがとうございます」
「クロードさん。待ったをかけました」
「ああ、ありがとう。あそこはやみ雲に行ってもダメだ。下手すると全滅するぞ。よし、これからボックスで南港に行く。あんたも」
「私もですか?」
「急げ」
走ってボックスに乗り込んだ。ウィルスの効果がいつまで続くか、吉田さんに賭けよう。
南港までは35分で着いた。ズラリと並んだ巡視艇は壮観だ。
「さ、乗り込もう。説明は中で」
「お願いします」
「クロードさん?捕り物ですか?」
「中で話す。カジノエヴァンスに向かってくれ。最高速で」
港を出ると西に向かって走り出した。巡視艇は速い。
「乗り込むのは15名。それと私たち2人だ。1人の誘拐された女性を奪還する。今、起きてる大惨事に関連のある女性だ」
「はい。わかりました」
「後は警告灯を回して船を取り囲んでくれてたらいい」
「もうすぐ捉えます」
「よし、乗船準備だ」
警察のライフジャケットを着用してデッキに出た。手の届くところに綾香はいる。必ずこの船にいる。
警告灯を回し、警告音を発して停船させた。
「乗り込むぞ」
ここにはエスカレータも階段もない海の上、ロープをエヴァンスに引っ掛けて登っていく。足の下で滔滔とたゆたう黒い水は命を飲み込む死の水だ。慎重に上ってデッキに上がり操舵室に向かう。
「開けろ。警察だ」
「はいよ。何も違法なことはしてませんよ」
「ああ、わかってる。人1人捜索する。見つかったらすぐに出て行く。すまないな」
「はい。それならいいんですよ。どうぞ存分に捜索してください」
カジノルームに入る。
「みなさん。お楽しみのところ失礼します。しばらく手をお止めください」
悲鳴があがる。
「警察です。女性を捜索しています。しばらく動かないでください」
だいたい50人ほどだろうか、カジノの間を見て回る。くるくると回っていたルーレットのボールが「00」に入って歓声が上がった。
「誰だ?当てたの」
女性が手を挙げた。
「おめでとう。よかったな」
女性とハイタッチをする。周りから拍手が起きた。
ブラックジャックのテーブル。
「あ、宗治さん」
「やぁあんたか。何なんだ今日は」
「例の事件ですよ。女性を捜しています。身長は160cm弱くらいでスタイルのいい色白で・・・」
「ああ、いたよ。ショータイムでダンスを踊ってた」
「楽屋は?」
「よし、案内してやる」
宗治さんに付いてバックヤードに入った。楽屋のドアを開けると首にナイフを突きつけられた綾香がいた。
ポリスが男に銃口を向けた。
「もう終わりにしよう。ナイフを捨てろ。この男、10m先の蝿でも仕留める男だ」
男は明らかに動揺している。
「おまえレプノイドか?それなら遠慮なく頭をブチ抜く」
「いや、おオレは人間だ。わかった」
男はナイフを投げて手を挙げた。
「確保」
「綾香」
「クロード!やっぱり来てくれたね。待ってたんだよ」
首に飛びついてきた。
「なんだかダンスしたりして楽しんでたみたいじゃないか」
「それはそうだけど」
「あ、紹介するよ。この方が行方不明になってた宗治さんだ」
「あ、例のね。一度だけお会いしてます」
「そうだったっけ?」
「まぁそんなもんよ」
「あ、そうだ、あの『ヤンの店』の写真、どうしたんですか?」
「あ、あれね。床屋で待ってる間に雑誌で見つけたんだ。懐かしくて保存しといた」
「そうですか。宗治さん、一緒に船を降りますか?」
「いや、オレはここに残るよ。根っからのギャンブラーだから」
「はい。わかりました。由莉奈に伝言は?」
「そうだ。由莉奈に50万渡してほしい」
「どうやって?」
「あんたリング持ってないのか?」
「ないんです」
「仕方ないな」
「じゃ一旦ポリスに」
「え?私ですか?50万cdも入金があったらヤバいですよ」
「大丈夫。懲罰委員会でおれが証言してやっから」
「まいったなぁ。まあいいですよ」
送金は完了した。
「ちゃんと学校卒業しろって伝えてください」
「わかった。よし下船するぞ」
綾香と犯人1人を追加で巡視艇に降ろした。
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