IT is my friend・・・? 30

 30、日常へ

 踊り場のドアから階段を上がっていくことにした。3フロア分上がるとドアにぶつかった。意外と浅い。ポリスが取っ手を引いたが開かない。

「忘れたな?」

「あ、つい。すみません」

「いいんだよ。もう終わった」

ドアを開けるとトイレに出た。ヤンの店から入ることにしていたら苦労しただろうと思う。

地上はもうすっかり暗くなっている。ポリスが「ポリス、ポリス」と叫びながら表のドアを蹴破った。周囲で待機していた警官たちはきっとウズウズしてたことだろう。地下に応援に行くよう要請した。


 ポリスとクラッシュカフェに入った。

「なにやら大騒ぎですね」店員が外を指さしながら言った。

「もう終わったから。ポリスは何にする?」

「クロードさんと同じもので」

「じゃコーヒー2つ」

「え?コーヒーなんですか?」

「そうだよ。おれはいつもそうだ。次から気をつけろよ」

コーヒーをテーブルに置いた。

「ポリス、ちょっとリング貸してくれ」

「フォン、桐谷さん」

「私です。クロードです」

「おお、クロード。お手柄だったな」

「はい。まあまあです。ありがとうございます。この作戦の指揮は誰が採ってるんですか?」

「おまえさんじゃないのか?みなにおまえの命令に従えって指示しといたが」

「じゃ最高責任者は桐谷さんですね」

「そういうことになるか。でも私は現場の人間じゃないしな」

「あのじいさん。あそこから連れ出すと命がないんです。あそこで取り調べして、あそこに収監するってできないですか?」

「ああ、検討してみる」

「検討じゃ困るんですよ」

「検討ってのはそうするってことだよ」

「そうなんですね。そう言ってくださればいいのに」

「おまえもここに来たらわかるよ」

「おれ、行くことになってるんですか?」

「そうじゃないのか?おまえが来なくてどうする」

「まだ仕事ありますからね」

「ああ、終わってからでいいよ。待ってるからな」

「はい。ありがとうございます」

「クロードさん。決まりですね」

「どうなんだろうな。おれにキッチリした規律のあるところが務まるかどうか」

「最近はかなりルーズですよ。っていったら怒られますが、かなり自由度高いです」

「あ、そうだ。由莉奈に連絡すんの忘れてた」

「フォン、由莉奈」

「由莉奈、おれだよ」

「遅いんじゃない?」

「あ、ごめん。たった今解決したとこなんだ」

「もうみんなボックス乗ってるよ」

「危ないなぁ、みんな」

「ウソばっか」

「会えないか?叔父さんから伝言があるんだ」

「いいよ。どこ?」

「社の前道を北へ少し行ったとこのリックスカフェでどう?」

「あ、わかる。1時間はかかるよ」

「わかってる。うちのボックスエリアに停めたらいい。じゃ」


 GIMビルまで帰ってきて今度はリックスカフェに入った。

「10m先の蝿って言われた時はドキっとしましたよ。私は銃、撃ったことないんですから」

「そうだろうと思ったよ。あんな時はハッタリかますんだ。あいつ明らかに動揺しただろ?」

「それにしても」

「おれはほとんどハッタリで生きてんだ」

「はは、凄いハッタリですけどよく出てきますね、10m先の蝿って。でもクロードさん。ハッタリでこんだけのことはできませんよ」

「いや、すべてはハッタリの延長線上さ。ははは」

「私はクロードさんの下で働きたいです」

「何言ってんだよ。おまえの方が先輩だろ?それにおれにはITは仕切れないよ。そうだ。おまえが来る前な、外部から1人来るってことがわかって、警戒してたんだぞ」

「そうですか。私も心細かったですよ」

「だろうな。こっちじゃほとんど敵だと思って迎えたからな。一番最初にあんたのこと見抜いたのは吉田さんだな」

「あ、吉田さん。やっぱり関係あるんですかね」

「どうだかわからないけど、詮索はしないでおこうと思ってる。じいさんはじいさん。吉田さんは吉田さんだ。たとえ関係があってもそれは変わらないから」

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