IT is my friend・・・? 14
14、再失踪と再会
宗治さんの家に着いた。2キューブの古い家だ。
「叔父さんはずっと独身?」
「そうよ、身内はうちだけ。ギャンブラーだからね。他人とは住まないってずっと言ってた」
「ああ、新しいハコ買ったんだ」
「そうよ。いるみたいね」
由莉奈は入口に、おれはボックスを見に行った。最新のLexusだ。
「叔父さん、開けて。いるの?」
由莉奈がやってきた。
「返事がないのよ」
「じゃ由莉奈ん家じゃないのか?」
「うん。うちにキーもあるし」
由莉奈の家に行ったが叔父さんはいない。キーを持って再び宗治さんの家にとって返す・・・
ところが鍵が合わない。どうやら書き換えたらしい。
「叔父さんってキーを書き換えたりするタイプか?」
「違うと思う。PC触るのも好きじゃないし」
「だろうな。ボックスはある。信じられないキーの書き換え。返事のない家。どうすべきか」
「警察を呼ぶしかないんじゃない?」
「だよな」
キューブは工作機械でも持ってこない限り壊れない。警察を呼んで解錠してもらい警察立会いのもと家に入る。中には見事に何もない。なにやら揮発油系の臭いがする。洗面所も風呂もキレイ過ぎるほどだ。ここまでの徹底ぶりをみると、レプノイドが掃除したと思わざるを得ない。
再び家に鍵をしてもらった。
「どういうこと?逃げたの?拉致されたの?」
「後者だろうね。由莉奈ん家のリビングにアルバムもなかった」
「あの写真にそんな価値があるの?」
「ある人にはあるってことだよな。どうもおれたちは勘違いしてたようだ」
「どう?」
「叔父さんは家に帰されたんじゃない。元いた所から追い払われたんだ」
「そうか、いて欲しくなかったってことね」
「それがこの写真の場所だ」
「うん。すべて辻褄が合う。さすがね、クロード」
「惚れた?」
「なによ、彼女いるくせに。そんなこと言わなきゃモテるのに」
「そうだな。肝に銘じとく。そうだ叔父さんの家に入ったとき、何か変な臭いがしたんだけど気づいた?」
「うん。気づいたけど、何の臭いかわからない」
「そうか。元々あった臭いじゃないんだな」
「そうね。叔父さんが帰ってきたとき入ったけど、なんていうか饐えた臭いがしてた。長い間空けてたんだから当然よね」
今日はいちおう出勤日だ。由莉奈のところを後にして再び社に顔を出すことにした。
コクーンのライトはもうポツポツとしか確認できない。
「いよいよだな」
そう言ったところに背中を叩かれた。振り返ると以前の上司の桐谷さんだ。
「あ、お久しぶりです」
「お終いだな」
「そうですね」
「今はどちらにいらっしゃるんでしたっけ?」
「警察省だ。今度こちらに人を寄越すことになったんで挨拶に来たんだ」
「課長ですね。今、ちょうど会議じゃないかと。後始末の人員ですか」
「そうらしいね。うちからITに詳しいのを1人寄越す」
「私、後始末組の1人なんですよ」
「そうなのか、なかなかいいとこやってるんだな」
「はい。お陰さまで係長になりました。それも終わりですけど」
「クロード、おまえさんさえ良ければここの仕事が終わったらうちで引き取ってもいいぞ」
「はい。その気になったらお願いします」
「私はその会議に出席する予定なんだが・・・」
「会議室は最上階ですよ」
「ああ、その気になったら連絡くれ。じゃあな」
「はい。ありがとうございます」
最後の一人がわかった。警察官とは思いもしなかった。IT犯罪捜査のプロだ。いったいこれからどういうことになるんだろう。
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