ほおずきさん三題噺 第八回
お題【サーカス、リクエスト、ハロウィン】
「ツヨシおまえ、まだ喧嘩してるっていうんだったらわかるよ。でも、いきなり別れたってなんだよ」
---全盛期のブリティッシュロックを特集してお送りしています。昨日のThe Rolling Stonesに続き今日、2日目はThe Beatles!今日もたくさん聴いてくれ---
「ああ、フラれたんだからしかたないだろ」
「今日、ミホとサーカス行ったんだろ?何があったんだよ」
---最初の曲は・・・The Beatles! Yesterday !
♫yesterday, all my troubles seemed so far away, now it looks as though there're here to stay・・・(昨日、オレにはトラブルなんてなかった。だけど今はここにある)♫
「オレが悪いんだ。ほっといてくれ」
「なんだよ、話してみろよ」
「そんなに他人の不幸が知りたいのか?なら話してやるよ」
今日は朝早くから二人でサーカスに行った。チケットショップで一枚は買えたんどけど、もう一枚買わなきゃならないから10時開演だけど8時頃には会場に着いたんだ。
チケット売り場にはもうかなり行列ができてた。でも今日はハロウィンだからみんな凄いカッコしてたよ。それ見てるだけで飽きなかった。
オレとミホの前にはなんだか場にそぐわない感じの老夫婦。一昔前っぽい堅い服装なんだ。それも扮装だって言われれば思えなくもないくらいの・・・
きっと今日は老夫婦にとっての一大イベントだったんだろうよ。奥さんはなんかそわそわしてて、やたら話しかけんだけど旦那はまっすぐ前を見て、微動だにしなかった。
振り向くともう後ろには長蛇の列。1時間ほど待ってやっと前の老夫婦の番になった。
奥さんは売り場の脇にどいてた。旦那と窓口のやり取りを聞いてると、どうもお金が足りないらしい。一枚しか買えないんだ。
「おまえならどうする?」
「そんなのほっときゃいいじゃん。関係ねえんだから」
「だろうな。だけどあん時のオレは違った」
旦那に声をかけた。
「あ、落ちましたよ」
オレは勤勉そうなその旦那にオレのチケットを渡した。そいつは申し訳なさそうに受け取ったよ。
「ありがとうございます。ホントに助かります。ありがとうございます」
そうやって頭を下げた。
「ああ、なんでもないですよ。落とし物を拾っただけだから」
こうやってオレたちのサーカスは終わった。
オレがもう少しリッチだったら、あそこでさらに二枚のチケットを買えたんだろうけど、オレにはそこまでの持ち合わせはなかった。
帰り道、ミホは一言も口を利いてくれない。それで駅に着いたときやっと口を開いた。
「じゃあね。永久にバイバイ」
「どうだ?オレが悪いだろ?」
「ああ、おまえが悪いね。だけど別れたりしない。あたしならね」
「そうかい。じゃオレと付き合ってもいいって思うのか?」
「ああ思うよ。あたしならもっと惚れちまうと思う」
「じゃオレと・・・
---次はサーカスのミホさんのリクエスト。ツヨシのバカへ。
The Beatles!Get Back!
♫・・・Get Back! Get Back! Get Back to where you once belonged(元のところに戻っておいでよ)♫
「あ、オレとミホ、今、付き合い始めた」