ユージン・スミスの現像
はじめに
ユージン・スミス(以下ユージン)の現像方法について、ユージンが水俣の撮影を行っていたときに彼のアシスタントを務めていた石川武志は、渡部さとるのYouTubeチャンネル2B Channelで以下のことを語っている。
(via 2B Channel Vol.3/4 衝撃ユージン・スミスの執念)
シャドウのディテールを得るためにトライXを感度320(1/3オーバー)で撮影していた
D-76を原液2 : 水1の割合で希釈した現像液で10分くらい現像していた
ユージンのネガは柔らかかった
これについて、1/3露出オーバーで撮影したネガをよくあるD-76の1:1希釈と比べて濃い希釈比の2:1かつ多少現像時間を長く処理することによって柔らかいネガになるのか疑問だったので確かめることにした。
用意したもの
カメラ:Leica M3, PENTAX MX
レンズ:それぞれ50mmの単焦点
フイルム:Kodak TRI-X Pan(1970年代), 400TX(現行)
現像薬品:SILVERCHROME D76
その他:NDフィルター、ツインプレート、ダブルレリーズ、三脚、ライト、ライトボックスなど
今回、奇跡的にユージンが水俣の撮影を行っていたときに使用していたフィルムと同じもの(1970年代のTRI-X Pan)が手に入ったので現行のTRI-X(400TX)と比較しようと思う。
実験手順
旧新TRI-Xを感度320に設定してセンシトメトリー用のテストフィルムを作成
D-76を原液2 : 水1で希釈した現像液で10分現像
ちなみにTRI-X PanはM3に、400TXはMXに装填した。
実験開始
フィルム濃度を数値で把握するためにセンシトメトリー用のテストフィルムを作る。
旧新TRI-Xを可能な限り同じ条件で比較できるよう下の写真のようなセッティングで撮影を行った。
現像
現像浴:10:00 D-76(原液2:水1) 20℃
停止浴:1:00
第一定着浴:5:00
第二定着浴:5:00
予備水洗:1:00
水洗促進浴:1:00
水洗:20:00
現像するとTRI-X Panは、保管環境不明な50年前のフィルムなのでさすがに感度・コントラストの低下が著しかった。 残念ながらこの時点で比較検証は、叶わなくなってしまったが、現行の400TXのセンシトメトリーデータを紹介して終わろうと思う。
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