第2作目「ミセス・ノイズィ」
【たかはC】
鑑賞作品
「ミセス・ノイズィ」(2020)
監督:天野千尋
まずは、オススメ度から。
★★★★★★★★★★
これはオススメしたい映画だった。しかし、オススメの仕方が難しい。予備知識ゼロで観に行くのが一番ベストだと思う。
気になった方はこちらの予告だけを観て、期待すらしないで映画館に足を運んでほしい。
この作品を観てみようと思った方は、ここから先を読まないほうがいいと思う。
内容はというと、15年ほど前にワイドショーなどで話題になっていた「騒音おばさん」をモチーフに作られたオリジナル作品。
フィクションなので実話ではない。
スランプ中のとある小説家が引っ越しをする。この小説家というのが、主婦であり、母親なのだ。家事と子育てをする中、小説を書き上げなくてはいけない。睡眠時間を削って連日執筆をしているのだが、家事と子育てとの両立がなかなか難しい。締め切りと戦いながら執筆をしていると、まだ早朝だというのにバンバンと騒音が聞こえてくる。となりのおばさんが布団をバンバン叩いているのだ。引っ越した先の隣人が騒音おばさんだった・・・という感じで始まる。
この作品、構成が面白い。
前半はこの小説家の主観で始まる。世の中には善と悪というものがあるが、それは主観であって、裏返せばどちらが善で、どちらが悪なのかを決めるのは難しい。前半は小説家が善のような形で始まる。しかし中盤以降は・・・
要は主観が騒音おばさん側に変わるのだが、この変わる前の段階が繊細につくられているのが面白かった。
小説家の善で始まっているのだが、少し違和感があるのだ。その違和感というのはいい意味で、完全な善には見せていないのだ。いや、善に見せているのだが、悪いところもあるという感じ。でも、その悪いところと言ってもわかりやすい悪ではなく、人間誰にでもある弱さだったり、自分は正しいという思い込みだったりするのだ。
だから裏返ったときに観ている自分にも心当たりがあり、考えさせる部分が出て来るのだ。
そしてまた中盤以降の騒音おばさんも完全な善で描かれていない。
同じ様に心当たりのある悪もあり共感できるのだ。
主観が入れ替わるだけで、こんなにも人に与える感情が変わるのかというところがこの映画の面白さ。
何かを作るとき、もしかしたら誰かを傷つけているかもしれない。メディアのあり方、そんな事も考えさせられる映画だった。
また女性監督で、女性から見える夫という部分も悪く描いてないのに少し皮肉が入っているような気がして面白かった。
「ミセス・ノイズィ」というタイトルもよかった。この「ミセス」というのが意味深く感じられた。
上映館が増えたり、上映期間が延びたりしているらしい。
これは観た方がいいよとオススメできる映画だった。
次回予告
「ワン・デイ 23年のラブストーリー」(2011)
監督:ロネ・シェルフィグ