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セイバーメトリクスで紐解く2019中日ドランゴンズの適正打順とは?【キーマンは〇〇選手】

はじめに

本記事では、昨年度惜しくも5位に終わった中日ドラゴンズについて、セイバーメトリクスの観点から適正な打順を見直します。
(セリーグ他球団にも少し触れます)

主張①2019年の中日ドラゴンズの打順は間違っている

2019年の中日ドラゴンズの打順ははっきり言って非効率的でした。理由はチーム打率(セ1位)に対してチーム得点数(セ5位)が少ないからです。

2019年のセリーグのチーム打撃成績をご覧ください。

NPB公式サイトより引用(http://npb.jp/bis/2019/stats/tmp_c.html)

良い点

・打率が高い(セ1位)
・三塁打が多い(セ1位)

悪い点

・得点が少ない(セ5位)
・本塁打が少ない(セ6位)

簡単にまとめると、、、

・三塁打が多く本塁打が少ない
 →名古屋ドームが広さが原因であるため仕方がない
 →2021年テラス設置予定で解消される

・チーム打率が高いわりに得点が少ない
 →打線が繋がっていない
 →適正な打順を組んでいない可能性がある

たまたまじゃないの?って思う方がいるかもしれませんが、セイバーメトリクスの観点から分析することで、はっきりと間違っていることがわかります。

まず適正な打順の組み方について考えてみましょう。

【補足】が付いている見出しはセイバーメトリクスを少し掘り下げて説明しています。もう知っている方は読み飛ばしてください。

【補足】セイバーメトリクスとは

セイバーメトリクスとは選手の価値を統計学の観点から客観的に評価する手法です。

セイバーメトリクスとは、野球ライターで野球史研究家・野球統計の専門家でもあるビル・ジェームズによって1970年代に提唱されたもので、
(中略)
野球には、様々な価値基準・指標が存在するが、セイバーメトリクスではこれらの重要性を数値から客観的に分析した。それによって野球における采配に統計学的根拠を与えようとした。
(wikipediaからの引用)

皆さんはどんな選手に価値があると思いますか?

・イチロー選手のようにヒットを沢山つ選手
・松井秀喜選手のようにホームランを沢山打つ選手
・菊池涼介選手のように守備が上手い選手
・大谷翔平選手のように投手でも野手でも活躍する選手

セイバーメトリクスにおける選手の価値は次のように定義されています。

【補足】価値の高い選手とは

セイバーメトリクスにおける価値の高い選手とは、チームの勝利に貢献する選手です。

ん、どういうこと?と思われると思います。

まずは試合に勝つとはどういう状態であるか考えてみましょう。

9回終了時点で以下の状態になっていることを試合に勝つと言います。
(当たり前のことですが重要です)

勝利:得点>失点 (敗北:得点<失点)

試合の勝利に近づく方法は以下の2通りです

①得点を増やす
②失点を減らす

つまり下記の選手はチームにとって価値のある選手だと言えます。

・得点を増やす打者(走者)は価値のある打者
・失点を減らす投手(野手)は価値のある打者



【補足】ピタゴラス勝率

チームの得点数と失点数だけで勝率を予測できる指標

得点と失点はペナントレースの順位においてもとても重要だということを示している指標ですね。

ピタゴラス勝率=得点の二乗÷(得点の二乗+失点の二乗)


【補足】打撃指標の紹介

打撃指標とは、得点を増やす可能性が高い打者を定量的に評価する指標です。

打撃指標については、詳しく載っているサイトが他にもあるので、ここではサラッと紹介していきます。

打撃指標の有用性は得点との相関性において議論されます。

例、打率と得点の相関性(相関係数0.68)

OPS(相関係数:0.947※)

OPS=長打率+出塁率

OPSとはOn-base plus sluggingの略
長打率と出塁率を足したらたまたま得点との相関性が高かったという指標

■補足説明
OPSは打席結果に点数を付け、合計点を打席数で除したものである
出 塁:1点
単 打:1点
二塁打:2点
三塁打:3点
本塁打:4点
凡 打:0点

OPS早見表
0.6程度:打力の低い打者
0.7程度:一般的な打者
0.8程度:一流
0.9程度:超一流
1.0以上:球界No.1レベル

wOBA(相関係数:0.951※)

wOBA (NPB) 
= {0.69×(四球-敬遠)+0.73×死球+0.92×失策出塁 +0.87×単打+1.29  ×二塁打+1.74×三塁打+    2.07×本塁打}÷(打数 + 四球 – 敬遠 + 犠飛 + 死球)

wOBAとはWeighted On-Base Averageの略

OPSの上位互換であり以下の欠点を補正している
・「出塁」が過小評価されている
・「長打」が過大評価されている

③wRAA

wRAA=(wOBA−リーグ平均wOBA)÷1.2×打席

wRAAはweighted Runs Above Averageの略

同じ打席数をリーグの平均的な打者が打つ場合に比べてどれだけ多く得点を生み出したかという指標(後ほど出てきます)

■補足説明
wRAA早見表

0:平均的な打者
+20程度:チームの主軸打
+40程度:リーグ屈指の打者
-20程度:控えレベルの劣る打者

※相関係数は1976年以降のNPBの統計データ(http://www.baseball-lab.jp/column/entry/97/
)

主張②打撃指標の高い順に打者を並べるのが最も効率が良い打順である

ここからが本題です。結論、効率的な打順の組み方とは「価値のある打者に多く打席を回す」ことです。※少しだけ留意点がありますので後述します。

理由は野球は得点を取り合うスポーツであり、得点を多く創出する可能性が高い選手に多く打席を与えるべきだからです。

極論言えば100点取られても101点とれば勝てます。
そして、どんな勝ち方でも1勝の価値は変わりません

こんなことを言う方がいるかもいれません「打順には役割がある。1番は俊足高打率タイプ、2番はバントが上手い小技タイプを配置してクリーンナップに回すべき」
1番打者とクリーンナップの考え方には概ね同意ですが、2番打者の考え方は賛同しかねますので事項で説明します。

一番高木が塁に出て
二番谷木が送りバント
三番井上タイムリー
四番マーチンホームラン
いいぞ がんばれ ドラゴンズ燃えよ ドラゴンズ! 
(1974年に発売された初代燃えよドラゴンズ!より引用)

結論、打順は何も考えずに打撃指標が高い順に打者を並べてください。

【補足資料】年間の打席数は1番と9番で100打席以上の差が生まれます

主張③2番には強打者を配置すべき

2番には強打者を配置すべきです。

理由は2つあります。
①2番にバントを前提とした選手を配置するのはチームの得点効率が落ちる
②そもそもバントが有用な戦術ではない

実際のデータを確認しながら1つずつ確認していきます。

①2番にバントを前提とした選手を配置するのはチームの得点効率が落ちる
これは2019年のセリーグ6球団のチーム成績より明らかなので実際のデータを基に説明します。

実はセリーグの得点上位3チームはすべて2番に強打者を配置しています。

2番に強打者を置いたチーム
・巨人(得点686 1位):2番 坂本(wRAA+44.5 チーム内1位)
・東京(得点656 2位):2番 青木(wRAA+17.7 チーム内3位)
・横浜(得点596 3位):2番 宮崎(wRAA+3.5   チーム内3位)    :

2番に強打者を置かなかったチーム
・広島(得点591 4位):2番 菊池(wRAA+0.8 チーム内5位)
・中日(得点563 5位):2番 京田(wRAA -0.8 チーム内8位※最下位)
・阪神(得点538 6位):2番 糸原(wRAA -0.8 チーム内4位※同率)

以上より、2番バッターにはバントを前提とした小技タイプを配置することは得点を稼ぐという観点から非効率であるといえます。球場の影響も多少あると思いますが、、、

(根拠)打順について
 打順は試合毎に変わるため、スタメン出場した選手を打順別に集計し、最も多く出場した選手を抽出して整理しました。下図の黄色ハッチングの選手を統計打順として抽出しています。
※守備位置がおかしい(内野手が5人いる等)ことはありますが、今回の議論においては問題ないかと思います。

(根拠)2019年セ各球団の打順

得点上位3チーム

得点下位3チーム


②そもそもバントが有用な戦術ではない

送りバントはどんな場面でも有用な戦術であるとはいえません。非常に取扱注意な戦術であると言えます。

理由は送りバントは1回の攻撃で3つしか消費できないアウトの内1つを献上する戦法であり、100%成功したとしてもほとんどのケースにおいて得点確立及び得点期待値は低下するからです。

■得点確立についてのデータ

■得点期待値についてのデータ

え、じゃあバントやる意味ないの?って思うかもしれませんが、ピッチャーが打席に立つケースやゲーム終盤の1点が欲しい限られた状況下では効果があります。

ただし年間の打席数がチームで二番目に多い打者がゲーム序盤で取る戦術ではないと言えます。

【箸休め】野球漫画でみるセイバーメトリクスに基づく適正な打順の組み方

ここまでにお話した効率的な打順の組み方についてまとめたイメージ図を貼っておきます。簡単に言うと第1群(チーム上位3名)の打者は1、2、4番、第2群(チーム4、5番手)の打者は3、5番に配置することが望ましいです。

野球漫画みる良い打順と悪い打順について評価していきましょう。

良い例:名訓高校(ドカベン)

第1群の打者(岩鬼、殿馬、山田)が1、2、4番、第2群の打者(里中、微笑)が3、5番に座る非常に効率的な打順と言える。やっぱり40年前に連載していた漫画ですがやっぱり山田(水島先生)は凄い。


なお土井垣主将時代にはチーム最強打者の山田が5番を打っています。やっぱり土井垣は無ry


悪い例:ダブルチャンス打線(ミスターフルスイング)

第1群の打者(牛尾、蛇神、虎鉄)が4、8、9番、第2群の打者(獅子川、猪里)が1、3番に座る非効率な打順。地味に5番にピッチャーがいるので、チーム最強打者の牛尾先輩は勝負されないこと間違いなし。十二支高校が地区予選敗退した最大の原因な気がします。

モブ「監督!なんですかあのオーダーは!めちゃくちゃじゃないっすか!」←大正解


主張④2019年中日ドラゴンズの適正な打順とはこれだ!

2019年の中日ドラゴンズの打順は第1群の打者(ビシエド、大島、シュウヘイ)が3、4、5番、第2群の打者(平田、阿部)が1、6番に座っておりこれらの配置は概ね問題ないかと思います。ただし2番にチーム最弱打者の京田が配置されており打線が分断されることが懸念され非効率であると言えます。

セイバーの観点から適正な打順を組む以下となります。
1番、第1群から高橋選手を選出
2番、併殺回避(走力)能力より第1郡から大島選手を選出
3番、長打力より第2群から平田選手を選出
4番、長打力より第1群からビシエド選手を選出
5番、第2群から阿部選手を選出
6番以降は打撃指標順に並べました。

まとめに入ります

まとめ

京田選手頑張れ!お前はそんなもんじゃない!中日浮上のカギはあなたにかかっています!!応援しています!!

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