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俺には夢がある 動機は不純だが


昔から子供が好きだったわけではない。
というかどちらかと言うと苦手な方だった。嫌いだったわけではないのだが、どう接していいのかわからなかったししっぽのついている生き物の方がよっぽどかわいいと思っていた。

高校生の頃、私の友人は「早く子どもがほしい」と言っていた。ママになる姿が容易に想像できる子だったので、「なんかいいなあ」と思っていた。私はと言うと、特にそれに同調してはいなかったが「もし自分が子どもを産むとしたら」と、お得意の妄想を広げることにした。

ここでまず最初に考えたのが性別だ。
女で、尚且つリボンやフリルが好きな人間としては「女の子がほしいでしょう」と言われがちなのだが、そんなことはない。男の子のお洋服の可愛さも十分あると思う。私はリボンやフリルが好きだが、恐竜だって好きだ。
女の子はいくつになっても話相手になってくれそうなのでそこは捨てがたいが、私はどうしても見たかった。

息子が「ママ」と「母さん」の狭間で揺れる姿を。

いつから変わるのだろう。私は男の兄弟もいないので、全くピンときていない。いきなり変わってしまうのか、言い淀みながら徐々に変わっていくのか、どちらにせよこれはものすごく可愛いのではないかと私の妄想は滾った。普段はママと呼ぶくせに、お友達の前ではちょっぴり背伸びをして「お母さん」と呼ぶ息子………  ………

ここまで妄想をしたところで、私は言うのだった。「子どもいなくてもいいけど、産むなら男の子がいいなー」

これで数年後に本当に男の子を産むのが、私のキモいところである。



それに、女の子と男の子だったらどちらかと言うと男の子と遊ぶ方が気が楽だ。女の子の遊びはそこそこの演技力とコミュニケーション力が試されるような気がする。女という生き物はいくつであっても女なのだ。それを身を持って知ってしまっている。子供服販売員をしていた頃、目の前で店長が女の子と上手にアイスクリーム屋さんごっこをしているのを見て「やべえこんな高度な技術が求められるのかよ…」と思ったのだ。ただ単に「アイスどうぞ」→「ぱくぱく あ〜おいしいなあ」では許されないのだ。女の子にアイスを差し出されたら「これはなんのアイスですか?」と聞き、「他におすすめはありますか?」などと他の情報も引き出し、実際に食っていないアイスの食レポを詳細に述べたり、アイス屋さんのことを褒めたりしなくてはならない。
これに対して男の子はなんとなく「バビュン!!!」とか「ダダダダッッッ!!」「ぴゅーーーーん!!」など大きな声を出しておけばそれなりにOKな気がしている。男児をナメすぎだろうか。
男の子は「お母さんと一緒に遊ぶ」と言っても女の子のように会話の引き出しが多いわけではない。「高度なコミュニケーションは取れないが、僕が遊ぶのでそれを見ていてくれ」という感じの方が強いのだという。しかし自分の興味のあることにお母さんが興味を示してくれることが嬉しいらしいので、質問をされるとすごく喜んで一気に話し出すらしい。これも助産師HISAKOさんのYouTubeで得た情報だ。

しかし私もこれを体感したことがある。それも子供服販売員時代だが、お母さんが他の販売員さんとお洋服を選んでいたので私はテキトーにそのお子さんの男の子に絡んでみることにした。その子はゲームに熱中していたのだが、「何のゲーム?」「これは敵?」など質問を投げかけると得意げに話してくれるのだった。妖怪ウォッチを持っていた別の男の子にも同様に質問すると、やはり嬉しそうに話をしてくれた。もうこの時点で私の気持ちは完全に男の子に軍配があがっていた。もちろん女の子には女の子の可愛さがある。それでも私は夢を捨てきれなかった。


実際、エコーで「タマが見えるよ」と言われた時は内心ガッツポーズだった。夢は言葉にすると叶うと言うが、それは本当なのかもしれない。これからも願望はどんどん言葉にしていこうと思う。とりあえず養育費も出さないこの世のクソオス達は死滅しろ。(突然辛辣)

実際子どもを産んで、子どもへの苦手意識は遥か彼方に消し飛んだ。自分の子どもというものが、想像をかなりのいきおいで飛び越える可愛さだったのだ。ぶっちゃけこんなに可愛いなら気合の入ったアイスクリーム屋さんごっこも出来る気がする。正直今もノリノリで生後3ヶ月の息子に喋りかけている。


しかし本当に息子が「ママ」と「母さん」の狭間で揺れてくれるのか… 答えは数年後だ。

もしママでもなく母さんでもなく、「クソババア」などと言い出したら「そんな妄想はしていない!!!!」と激怒してやろうと思う。

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