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実録シングルマザーの婚活
マッチングアプリ。
大学時代に私も恋人を作る目的で利用したことがある。そう、あれはペアーズだった。Tinderよりはち×ちん脳がおらず、恋人を探すにはまだ僅かに期待を持てるアプリというイメージだった。成果はどうだったかと言うと「いつの写真使ったんだ…?」というほどの別人オッサンが待ち合わせ場所に現れ、私はそっとアプリをアンインストールしたのだった。ちなみに別人オッサンとも一応おいしいご飯は一緒に食べた。飯に罪はない。
そんな特に苦くも甘くもない思い出を抱え、34歳シングルマザーとなった私がマッチングアプリを使う理由は恋人探しではない。
結婚がしたい
という強い気持ちがあるかどうかは正直微妙である。
思い返せば大学時代もその先も、絶対に恋人を見つけるぞ!という強い意志で利用していたわけではないように思う。私はいつだってマッチングアプリを使う時は自分探しの旅に出ているのだ。人が自分探しの旅に出る時は大抵インドに行くはずだが(偏見)、私は指一本で自分探しの旅に出られるのだ。なんと安い女だろう。
ただ私がインドに行ったところで、さして自分に変化はないように思える。帰りの飛行機で既に「日本ってやっぱサイコーだな」と言っている姿が優に想像出来る。
結婚がどうしてもしたいわけではない
恋人が絶対ほしいわけでもない
ただ、「どうしたい」のかが自分でもわからなくなっている。私という人間は、自分の進みたい方向が明確に定まらないとそれを探す為に何か行動をしなくては気が済まない女なのだ。「どうする〜?」「どうしたらいいんだろうね〜」で一向に進まない話し合いを世界一無駄な時間と呼ぶ。
どうしたいか自分自身で見つける答えは、「色んな人と出会う」「色んな人と話す」に限ると自分自身の研究を進めてきた自分のスペシャリストである私はそのように結論付けている。
ただ、私のようなスーパーコミュ力人見知りゼロ女は本来であればマッチングアプリではなく実際婚活の場に出向いた方が効率的なのだが、当然そんな時間はない。今私の休日はほぼ息子の為にある。
そんなわけで今回もマッチングアプリで自分探しの旅に出たわけである。長い前振りになってしまったが、ここから怒涛の展開があるわけではないのでそういうドキドキを求めている方はこのnoteを閉じ、その指で恋愛リアリティーショーでも観に行くことをお勧めする。
私がマッチングアプリをインストールする前にまず何をしたかというと、心を清めるということだった。まあ意味がわからないだろう。
先述した通り、私は自分のスペシャリストなので、もうこの先の展開がある程度予測出来ている。しかしそうならないように、自分自身に誓いを立てたのだ。
「このアプリを開いてまずすることは、私のプロフィールを完成させることです。間違っても次回友達と会った時にネタになるような面白い人を発見しようとしません。自分のプロフィールもオモシロ要素は必要ありません。笑いを取ろうとしないでください。
マッチングした人のプロフィールに脳内でケチをつけるのもやめます。メッセージのやり取りをしてからも、ある程度のつまらなさは我慢しましょう。多少文章の構成のし方や言葉選びに『私ならそうはせんなあ〜』と思ってもやり取りをやめてしまう程ではないならグッと堪えてください。そもそもそんなつまらないことは考えるな身の程を弁えろお前も人のこと選り好み出来る立場じゃないだろ」
………と。
そうして私はいざゆかんとばかりにマッチングアプリの扉を戦国武将のように開いたのである。
誓いを立てた以上、初手の私の行動は非常に無駄がなくスムーズだったように思う。速やかにプロフィールを完成させる。こういう場面で迷いなく指が進むので、学生時代からくだらないブログをやっていて良かったと思う。まさかこんなところで能力が開花するとは想定外だったが。なるべくオモシロ自虐要素は取払い、目的が明確である程度の人間はふるいにかけられるプロフィールが完成した。
さて、ここからはとりあえず少し待ってみることにしよう。今ここですぐに自分から相手を探し出す必要はない。私というフィールドに足を踏み入れようとしてしまったかわいそうな男…ではなく心の広い男性を待つのだ。マッチングアプリ初心者ではないので大体の流れと自分の相場もおおよそ把握している。
ではこの手持ち無沙汰な時間をどう過ごすか。ここでの動きももちろん把握している。
マッチングアプリには大抵グループというものが存在する。呼び方はそのアプリによりけりかもしれないが、自分の趣味嗜好に合わせて参加するものだ。平成を生きた同年代に説明するのであればmixiでいうところのコミュニティ、オタクに説明するのであれば同人サイトの同盟のようなものだ。この説明でピンと来る人はどれくらいいるだろう。自分が平成を生きた女なのでこの例えが限界なのである。ご理解いただきたい。
まあつまりはそのアプリ上のサークルとでも呼ぶべきか。「居酒屋が好き」や「タバコは吸いません!」、恋愛に関わるものだと「最後の恋にしたい」という壮大なものから「無理のない恋愛をしたい」といった、「そりゃ誰だってそうだろう」というものまで本当に様々である。
このグループに属しておけば相手との共通点も見つけやすく、プロフィールには書き切れない項目も簡単に追加できる。
なのでいいねを待つ間、私はこのグループを漁ることにしている。よりプロフィールを充実させるのだ。
様々なグループを覗いていると、気になるグループを見つける。いや、見つけてしまう。
「年の差なんて気にしない!」
………
……ダメだぞ
私は固く誓ったはず。
マッチングアプリはヤバ人間発見機ではない
私は自分の目的を忘れてはならない
そう思っているのに、もう1人の私が甘く囁く
「ほら?見たいんだろう?そのグループに入ってる高齢男性が。絶対に年下の女性とマッチングすることしか考えておらず、『そりゃお前は気にしないよな、お前は』というクソジジイが見たいんだろう…?」
私は堪える。
イヤイヤ、今回そういう目的じゃないんで。
私は真剣に将来を考えられる相手を見つける為にやってるので。
「ほら見ちまえよ。ちょっと開くだけなら大丈夫だって。どうせまだ暇だろ?見たいだろ?マッチングアプリに蔓延る哀しきモンスターを……」
イヤ………
………イヤ……
私は負けた。
この誘惑には抗えるわけもなく。
ウジャウジャ出てくる50代60代にゾッとしていたが、中には70超えの本当のお爺さんまで出てくる始末。
70代で年の差は気にしない、というのはつまり自分より年上の死にかけのバアさんでもいいということだろうか。まさか孫レベルの女が自分に惹かれるとでも思っているのか。
この年の差を気にしない系のグループにはアイコンとして加藤茶さんとその奥様の加藤綾菜さんが使われているものもあった。
本当にやめるべきだと思う
それは加藤茶だからだ。
彼の人となりや、芸能界という一般人からは想像も出来ない席に長年腰を据えている功績があってこそのものなのだ。(ちなみにお金はそんなに残っていなかったらしい)
間違っても普通の爺さんに変な希望を与えるな
何もこれは意地悪な気持ちだけで言っているわけではない。本当に結婚がしたいのなら、その意識だけでそこへの道のりが随分遠ざかると思うからだ。大抵の女は自分より一回り二回り年上の男性は選ばない。それこそドンファンの元嫁のような女性がいいというのであればそれはそれで成立するとは思うが。
私がこのアプリの運営だとしたらまずそんなビッグドリームな希望を与えてしまうようなアイコンは採用しない。そもそも爺さんが登録する前に「身の丈に合った相手を探しましょう」「まさかとは思いますが、高望みしていませんか?」という注意書きを絶対に入れる。高収入高望みオバさんも然り。それを読み飛ばした奴は登録出来ない仕組みにまですると思う。嫌な運営だと思われようと、私はマッチングアプリの平和を守りたい。
注意書きどころか、ビデオ通話でも繋いで口出ししそうな気がしてくる。「ちょ、ちょ、ちょ 待ちなって 冷静になりや」と運営から電話がかかってくるマッチングアプリはどうだろう。お節介ババア婚活アプリ。
そう考えると自分は結婚相談所を開いた方がいいのではないか。副業として結婚相談所をするのもアリな気がする。(荷が重い副業)
人の相談に乗るのも好きだし、多分合コンでも「あっ、なんか2人、お似合いじゃなーい!?」という感じに仲を取り持てると思う。全人類のお見合いババアになろう。これはイケる。私は確信した。なんならもう本職をやめてこれ1本でもいけるのではないか。
私は自分がシングルマザーであるという自覚を度々なくすことがある。
あれほど身の程を弁えろと誓ったにも関わらず。
人の年齢の差などに文句をつけている場合ではないしそんな立場でもない。しかも未婚のシングルマザーなので結婚をしたことすらない。そんな奴に誰が相談などするのだろう。なんなら失敗例である。血迷い、勢いに任せて本職をやめないで本当に良かった。
私は大人しく自分探しの旅を続けることにした。自分は結婚がしたいのか、良い人がいればしたいのか、結婚という形にこだわらなくても良いのか、そもそも今の自分がどんな人に惹かれるのか。幸い、自分の心を追求していく作業は嫌いではないので何の苦もなく続けられそうではある。
ここから、結婚してもしなくてもなんとなく幸せには生きられそうな私の人生をどうか一緒に見届けていただきたい。私は世のシングルマザーの光になる。お見合いババアになっている場合ではない。
そして、マッチングアプリでも自分を見つけられなかった際には今度こそインドにでも旅立とうかと思う。