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知らない人と見た、打ち上げ花火

打ち上げ花火って誰と見ますか?

友達だったり家族だったり、大切な人だったり、様々でしょう。

これは、大体二年前のちょっとした話です。


この日は人生でまだ数回目の派遣バイトの日でした。
この日は、ある音楽フェス会場にいました。

業務のこなし方もよくわかってない私は、やることがなくなってしまうとフラフラとどこかに歩きだしていました。

何度も派遣バイトに出勤している人はそこでつながりを持った友達と談笑していた記憶があります。

そんな仲の人間がいるわけなく時間を過ぎるのを待っていると、
知らぬ間に最後のアーティストの終了していたようです。

「この業務から解放されて帰れる」
そう思いながら関係者通路を歩いていました。
そこには監視の警備員のおっちゃんが一人。

その時
「バン」
という破裂音とともに私たちの背後に大きな花が現れました。

花火です。

この時期はまだ夏に入り切る前でしたから夏以外に見る打ち上げ花火に少し感動しました。そう思った矢先

「カシャ」

花火の後に聞こえた明らかに人口的な音。
その音の正体を突き止めようと振り向くと、先ほど警備員のおっちゃんが花火に向かってスマートフォンを掲げていました。

一般常識では業務中にスマートフォンを使用することはタブーとされていることが多いでしょう。
特にここはフェス会場です。
カメラの使用にはなお一層厳しいでしょう。

だからこそ、私と彼は花火に照らされた顔を合わせてお互い照れ笑いを浮かべたのかもしれません。

その一秒後、彼は自らの口に人差し指を立てて「シー」のポーズを浮かべました。この写真は家族にでも見せるのでしょうか。
それともふとした時に見返すための記録なのでしょうか。
私にはわかりません。もう、彼の顔も覚えていません。


もう、この派遣会社の契約も切れてしまったのですが、この思い出は根強く残っているのです。

彼は今も警備のお仕事をしているのでしょうか。元気なのでしょうか。
元気でいてほしいものですね。
私とのこのエピソードもたまに思い出してくれていたらうれしいものですね。


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